枯葉剤被害者のために引き続き支援を進め、正義を求める

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戦争は終わり、国土は平和になったが、戦争の傷と失われたものは今日まで引きずっている。アメリカがベトナムでの戦争で使用した枯葉剤の被害者のように、その後遺症が第3世代、第4世代のベトナム人まで影響を与えていることほど傷ましいことはおそらくない。

より深く理解するため、記者は「ベトナム枯葉剤被害者の会」会長のグエン・ヴァン・リン上将に枯葉剤被害者を支援し正義を求める戦いについてインタビューした。

 

 

枯葉剤被害者

枯葉剤被害者

 

 

――アメリカがベトナムでの戦争で枯葉剤を使用し始めてから55年が経ちますが(1961-2016年)、この惨禍の重い後遺症は今日まで残っているのでしょうか。

 

グエン・ヴァン・リン上将 アメリカがベトナムにおいて進めた化学戦争は、最大、最長期間規模の化学戦争で、最も深刻な後遺症を引き起こしました。

 

1961年から1971年まで、米軍は8000万リットル近くの化学毒物をベトナム南部に噴射・散布しました。そのうちの61%がオレンジ剤で、366キロのダイオキシンを含み、環境・生態系に甚大な損害を与えました。約480万人が枯葉剤を浴び、300万人近くが枯葉剤の被害者となりました。

 

今までに数万人が、父となり母となり権利を奪われました。生まれた数百万人の子どもは、五体満足ではありませんでした。ベトナム人ばかりでなく、ベトナムでの戦争に参戦したアメリカ兵やその同盟軍兵士も、この化学戦争の被害者です。

 

最も傷ましいのは、枯葉剤による異常症状が子・孫・曾孫の世代まで伝わることです。ベトナムでは、枯葉剤による異常症状は第4世代にまで達しています。ベトナムでの戦争中に枯葉剤を浴びた人の子・孫・曾孫である被害者数は数百万人にのぼるでしょう。

 

ベトナム医療省は、枯葉剤を浴びたことによる200余りの先天的病気、奇形、障害のリストを公表する準備をしています。それらの病状としては、体の全体あるいは一部の麻痺、脳ヘルニア、脊髄欠損、肺血管運動収縮などがあります。

 

 

――枯葉剤は重い後遺症を残しました。また枯葉剤被害者のために正義を求める戦いは12年余り続きました。「ベトナム枯葉剤被害者の会」は引き続きどのように正義を求める裁判を遂行していきますか。

 

グエン・ヴァン・リン上将 枯葉剤被害者のために正義を求めることは、長期で困難な「戦い」だと認めなければなりません。枯葉剤被害者は、道理を求めるため、とても団結し最後まで闘争しました。

 

アメリカ政府はアメリカの退役軍人である枯葉剤被害者には賠償しました。しかしベトナムの枯葉剤被害者に言及した時、彼らはオレンジ剤には害毒はないとし、裁判を受理しませんでした。このことは、アメリカの人々と世界の進歩的人民の良心に反しています。アメリカの化学会社は責任を回避して、ダイオキシンの購入者で使用者であるアメリカ政府の所為にしています。

 

長期で困難な「戦い」ではありますが、私達は正義を求める闘争を継続します。しかしながら闘争の形式は異なっていきます。私達はアメリカの化学会社を訴えるために証拠を集め続けていきますが、ダイオキシンの後遺症を克服するために、アメリカ政府やアメリカ人民に人道的援助を働きかけることもできます。アメリカ議会やアメリカ政府はベトナムにおけるダイオキシンを洗浄し、身体障害者(その中には枯葉剤被害者を含む)を支援することに同意しています。

 

 

――枯葉剤被害者の異常症状や病状と共に、今、人々が最も関心をもっている問題の一つは汚染地区の環境浄化です。この仕事はどのように実現されるのでしょうか。

 

グエン・ヴァン・リン上将 戦争が終結して40年が経ち、国土は平和になり、ベトナム全土の環境における枯葉剤は基本的に処理されました。森、山、田園の環境汚染の全部が残ってはいません。

 

現在、幾つかの調査・研究によると、ダイオキシンを含んでいるホットスポットが28あるだけです。そのうち、ダナン空港、フーカット空港(ビンディン省)、ビエンホア空港(ドンナイ省)の3か所のホットスポットは、ベトナムとアメリカの政府がこの十年、克服する調査をしています。

 

2009年から今まで、アメリカ政府は除染のためベトナムと協働しています。現在、第1段階が終了しました。2017年、2018年には第2段階が終了します。まもなくダナン空港、ビエンホア空港も洗浄され、ダイオキシンが一掃されるでしょう。

 

 

――それでは枯葉剤被害者の支援政策は現在どのように実現されているのでしょうか。

 

グエン・ヴァン・リン上将 わが党と国家は常に枯葉剤被害者に関心をもっており、以前から、革命功労者に対する毎月の手当制度に基づき、枯葉剤に汚染した抗戦直接参加者に対する多くの優遇政策を採ってきました。他方、被害者は社会面でも多くの優遇手当政策を享受しています。たとえば医療保険、困窮手当、生産土地の貸し出し、貧困撲滅資金の貸し出しなどです。

 

戦闘過程の中で被災した第1世代の枯葉剤被害者ばかりでなく、彼らの子どもも政府から毎月の手当を受けています。政府はこれらの人々に支援するため、約10兆ドンを投資しています。

 

近い将来、枯葉剤被害者の数は増えるでしょう。もし第3世代への政策が補充されれば、きっと経費はもっと大きくなるでしょう。そのため国家の支援政策の制定と並行して、枯葉剤被害者の病気治療や養育・介護において政府は国際組織からの社会化による支援を呼びかける必要があると考えています。

 

 

――どうもありがとうございました。

 

VietnamPlus紙(2016年09月02日付 )/ 翻訳:メディア翻訳ベトナム語班

 

■本記事は「日本語で読む世界のメディア」からの転載です。

 

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