参院選、経済政策の観点から見た争点とは?——アベノミクスを中心に検討する

6月22日公示、7月10日投開票の第24回参議院議員選挙。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから最初の投票となります。シノドスでは「18歳からの選挙入門」と題して、今回初めて投票権を持つ高校生を対象に、経済、社会保障、教育、国際、労働など、さまざまな分野の専門家にポイントを解説していただく連載を始めます。本稿を参考に、改めて各党の公約・政策を検討いただければ幸いです。今回は経済政策の観点から、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏にご寄稿をいただきました。(シノドス編集部)

 

 

安倍首相は6月1日に記者会見を行い、2017年10月から予定していた10%の消費税増税を2019年10月まで延期することを表明しました。首相は会見の中であわせて「アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか、これが来る参議院選挙の最大の争点であります。」と述べています。以下では、首相が述べる「最大の争点」であるアベノミクスを中心に、与野党の政権公約資料を参考にしながら論点を整理してみることにしましょう。

 

 

経済政策の三つの手段とアベノミクスの是非

 

アベノミクスは金融政策、財政政策、成長戦略という三つの政策からなっていますが、昨年9月に安倍首相はアベノミクス第2ステージとして、新たな三つの政策――希望を生み出す強い経済(名目GDP600兆円の達成)、夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8の実現)、安心につながる社会保障(介護離職者ゼロの実現)を打ち出しました。

 

経済政策、ないしアベノミクスを考える際には、こうした様々な政策を場合分けしてみると見通しが良くなります。

 

経済政策は、大きく、「経済安定化政策」、「成長政策」、「所得再分配政策」の三つに分けることができます。

 

経済は好景気と不景気という形で循環しながら推移していますが、バブル景気といった形で景気が過熱し、かつ長期化すると、その反動として生じる不況は深刻化・長期化する可能性が高まります。「経済安定化政策」とは、財政政策や金融政策を用いることで景気の波を安定化させ、程々の好景気を維持し続けることを目的としています。

 

そして「成長政策」というのは、経済安定化政策とは異なり、活発な経済活動の障害となり得る各種規制の撤廃や効率化を進めることで、一定の資源でより多くの財やサービスを生み出すことができる状態、つまり生産性を高めることを目指す政策です。

 

さらに「所得再分配政策」とは、税や社会保障といった手段を通じて社会の公平度を高め、全ての国民が最低限の生活を送れるような基盤を提供しようとする政策です。

 

こう整理してみると、「アベノミクス」として掲げられていた、金融政策、財政政策、成長戦略というのは、景気を安定化させる「経済安定化政策」と生産性を高める「成長政策」に分類することができます。

 

では、「アベノミクス第二ステージ」はどう考えれば良いのでしょうか。希望を生み出す強い経済(名目GDP600兆円の達成)という新たな目標は、従来、「アベノミクス」として掲げられていた金融政策、財政政策、成長戦略の三つを用いて、現在500兆円程度である名目GDPを2020年ごろには600兆円まで高めることを意味します。

 

そして、夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8の実現)、安心につながる社会保障(介護離職者ゼロの実現)といったアベノミクス第二ステージの残りの二つの目標は、政府が子育て支援や社会保障の充実といった所得再分配政策を採用したとみることができます。つまり、アベノミクスからアベノミクス第二ステージへと移ることで、政府の経済政策は経済安定化政策と成長政策といった成長重視の姿勢に加えて、所得再分配の充実を図ろうとしているということになります。

 

図表1は自民党「政策パンフレット2016」(https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/pamphlet/20160608_pamphlet.pdf)から自民党の主な経済政策を抜粋したものです。

 

 

kataoka01  

 

 

図表1からは、金融政策、財政政策、成長戦略の三つを通じて成長を実現するとともに、成長による成果(所得増)を子育てや介護に分配し、それらの恩恵を受ける人々の所得を増やし、それを更なる成長につなげていく仕組みを構築するとされています。つまり成長→分配→成長……の循環を実現していこうというわけです。

 

一方、民進党はこうした自民党の政策とは違う路線を志向しています。図表2は民進党「民進党の重点政策:国民との約束」(https://www.minshin.or.jp/article/109344)から主な経済政策をまとめたものです。

 

 

kataoka02

 

 

民進党の資料をみていくと、『公正な再分配を実践し、日本の潜在能力を引き出すために、「人への投資」「働き方革命」「成長戦略」を実行していくこと、これが民進党の経済政策です。』という指摘があります。アベノミクスを進めることで成長を達成して、その果実を分配という形で還元して、分配から成長への好循環を作っていくというのが自民党の主張である一方で、アベノミクスは失敗であるから、まず分配を進めて、日本の潜在能力を引き出すために政策を行うというのが民進党の主張です。

 

それぞれの政策路線を判断するポイントはどこでしょうか。自民党の場合は、アベノミクスをこのまま進めることで成長を達成することが可能なのかということでしょう。これはアベノミクスが失敗であるという民進党の主張の是非にかかわります。そして単に分配を進めるという民進党の主張は、分配のための資金源が調達できなければ、誰かの所得を取り上げて他の誰かに分配するという「椅子取りゲーム」につながってしまいます。どちらの主張がより妥当性を有するのか、という点が経済政策の観点からみた争点の一つと言えるでしょう。【次ページにつづく】

 

 

【ご支援お願いいたします!】新しい政治を生み出すために、シノドス国際社会動向研究所をつくりたい!

 

lounge

 

α-synodos03-2

1 2

vol.214 特集:資源

・岡田勇「持続可能な資源開発への課題――カハマルカの事例から」

・三浦綾希子「ニューカマーの親子を支える地域の教育資源」

・宮本結佳「現代アートと地域の出会い――新たな資源創出の過程」

・齋藤直子(絵)×岸政彦(文)「Yeah! めっちゃ平日」第2回:人生をしみじみする時