「ストップいじめ!ナビ」―― いじめから抜け出すための具体策 

子どものためのいじめ対策サイト「ストップいじめ!ナビ」(http://stopijime.jp)が8日、開設した。弁護士やジャーナリストなど様々な分野の専門家が集まり、いじめ問題に取り組もうと「ストップいじめプロジェクトチーム」を発足。サイトを通して、子どもたちが自らいじめから抜け出す方法を見つけ出せるように様々な情報を提示する。さらに今後、学校、保護者、行政、メディア等がいじめ問題を解決するための方法論を共有していくプラットフォームとして、コンテンツの拡充を目指していく。(構成/宮崎直子)

 

 

いじめられている子どもの目線にたって

 

「ストップいじめプロジェクトチーム」代表の荻上チキです。この数ヶ月の間、全国の様々な地域におけるいじめ事例が立て続けにメディアで報じられ、社会問題として広く共有されてきました。しかし、いじめを解決するための具体的な対策を提示する報道が、個人的な反省も込めて、少なかったと思います。

 

今回の報道により、いじめの「認知件数」そのものは増加するでしょう。しかし、そうした数字にばかり目を奪われてはいけません。いじめが一定の割合で存在する以上、早期介入による解決事例を増やすことで、いじめ・嫌がらせの被害を最小化することが必要となります。

 

その介入方法も様々な選択肢があり、本人のニーズなどにあわせて、そのレパートリーを組み合わせていく必要があります。しかし、特定の悲惨ないじめ事例が話題になれば、他のすべてのいじめも、すべてが類似のものだと想定するかのような議論がまかり通ってしまいます。事件として報道されるようなケースとはまた異なり、現実的には「警察が逮捕しろ!」で済まされる事例ばかりではないため、一部の例を全体化した議論は、むしろ弊害を招く可能性もあります。

 

「ストップいじめプロジェクトチーム」は、一連の報道が始まった7月より、いじめ問題を解決するための方法を提示するためのプラットフォームを作るべく、準備を進めてきました。そして10月8日に、「ストップいじめ!ナビ」を立ち上げました。

 

このサイトは、いじめに関する様々なデータや事例集を掲載していくと同時に、関連相談機関へのアクセスを促すナビゲーションが搭載されています。チームはこうした活動を基点とし、行政機関や教育団体に呼びかけ、現場と連携しながら方法論の共有を行なっていきます。

 

日本におけるいじめ研究は、まだまだ発達途上です。いじめが社会問題として取り上げられはじめてから30~40年ほど経ちましたが、知見は未だに不足しています。ただ、一方で、おそらく世間の多くの人が思っているよりも、いじめについてわかっていることは、たくさんあります。

 

既に多くの先行研究が存在し、統計的な事実の把握や、いじめ行為の理論化など、少しずつではあるものの、光が当たる部分は増えてきています。また、現場でもすでに様々な方法論が取り入れられています。いじめ報道が繰り返されると、なんとなく「現場は何もやっていない」というイメージが一人歩きしがちですが、厳密にいえば、「やっているケースが知られる機会が少ない」というのが実態です。

 

現場の努力を広くシェアしていくのがメディアの役割です。ただし、マスメディアだけに頼るのではなく、ネット空間の改善も課題です。いじめ研究や蓄積や、相談機関の紹介、現場や行政の取り組みの紹介など、いじめ情報のハブとなるサイトは存在するのとしないのとでは、随分と風景も変わるものと思われます。

 

実際にいじめを受けている子どもがSOSを出そうと思っても、相談できる友人や大人が周りにいないケースがたくさんあります。そうした子どもたちの目線にたってこのプロジェクトは進めていきます。

 

チームメンバーは弁護士やジャーナリストなどが離合集散し、それぞれの知見を合わせ、何ができるかを吟味し続けています。「初期のチームメンバー」という形では、教育現場の人はまだ含まれていませんが、アドバイザリー的にコミットしてくださっている方はいますし、いくつかの自治体とも意見交換を進めてきました。これからも、広く連携を呼びかけていきます。

 

いじめ議論といえば、「いじめをなくそう、ゼロにしよう」といった議論がよくされます。しかし、そうした発想では、「いじめなんてなくならないよ」という逆の諦念をすぐひきつけたり、「これが足りない、あれが足りない」と、個別の小さな処方箋への評価を過小に見積もってしまう可能性があります。

 

現在は、既存のリソースさえフル活用されていない状況があります。わかっている限りの統計的事実、例えばどういう時期・どういう場所でいじめが発生しがちであるか、男女差はどのようなものかといったことさえ、知識としてまだまだ共有されていません。もちろん中には、ちょっと使えなさそうないじめ談義やメソッドも多いのですが、そうした議論を「仕分け」することも重要です。

 

短期的には、まずはリソースを再確認し、そのうえで「実現可能で・有効な施策」について共有していく必要があります。中期的には、様々な試みや調査を踏まえた上で、新しい処方箋を出していくことをやっていきます。そして長期的には、学校制度のあり方の検討やシステムの見直しなどを含め、具体的な政策提言に結びつけていく必要もあるでしょう。

 

「えいやー!」と、「大きな、夢の様な、それでいて実現しなさそうな提案」ばかり叫ぶのではない、一歩ずつ、様々な手段を進めていくことが大事です。

 

 

 

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