朝鮮学校「無償化」除外問題Q&A

Q5.なぜ朝鮮学校だけが「高校無償化」の適用を留保され続けているのか。

 

これまでの経緯を年表形式で振り返ってみましょう。肩書はいずれも当時のものです。

 

 

2010年

01月29日 高校無償化法案上程。

02月21日 中井洽拉致問題担当相が、朝鮮学校除外を要請していたことが判明(●)

02月24日 国連・人種差別撤廃委員会で、朝鮮学校除外に懸念を表明。

03月03日 衆院文科委員会の23人の国会議員らがそれぞれ東京朝鮮中高級学校を視察。

04月01日 「高校無償化」法施行。朝鮮学校等については専門家会議で客観的基準を作り判断することに。

08月31日 朝鮮学校無償化適用に関する専門家会議の報告書公表。文科省、朝鮮学校を無償化の対象にする方向を固める。

11月24日 北朝鮮の韓国砲撃を受け、菅直人首相が朝鮮学校への無償化適用保留を指示(▲)

 

 

2011年

02月04日 参議院の質問主意書に対して、菅直人首相が朝鮮学校への無償化適用保留には法的根拠がないと回答

08月29日 菅直人首相が文部科学大臣に「高校無償化」の朝鮮学校への適用審査を再開するよう指示

09月02日 野田内閣が発足。以後、現在に至るまで適用審査を「慎重に」続けている。

 

 

以上の出来事のうち、朝鮮学校への「高校無償化」適用を留保する動機となったのは、●(拉致問題への制裁)と▲(砲撃事件への制裁)の二つです。

 

「外国人学校の無償化指定については、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきものである」というのが国会での法案審議の過程で明らかにされた政府の統一見解なのですが、2つの出来事はいずれも北朝鮮に対するペナルティを朝鮮学校に負わせようとしたものと解釈するのが自然です。

 

このことについては、「江戸の敵を長崎で討つ式の筋違いだ」とか、「子どもたちを外交の犠牲にするのはおかしい」といった批判が寄せられています。

 

 

Q6.他の国でも外国人学校に助成金など与えていないと聞く。日本人の税金で外国人学校を支援する必要はないのではないか。

 

「他の国でも外国人学校に助成金など与えていない」という話はネットではずいぶん広範に流布していますが、正確ではありません。

 

所属する民族集団の言語、歴史、文化を教育することを「民族教育」と呼びますが、世界各国の制度は(1)マイノリティの民族教育を公立学校のカリキュラムの中で実施しているケース、(2)課外活動で行われる民族教育を助成しているケース、(3)外国人学校などをその国の学校制度における私立学校として公式に承認しているケース、(4)民族教育を公式の教育制度から排除しているケースに大別されます。

 

日本は朝鮮学校に関してこの(4)を採用しています。中国のように民族学校は(1)、外国人学校は(4)と扱いを分けている国もあります。しかし、世界には(1)~(3)の制度を並行的に運用している国も少なくありません。

 

(1)は北米や北欧、中国などで実施されていますが、この場合、民族教育に助成金を与えていないどころか、支配集団の言語や歴史と同じ扱いで民族教育が保障されていることになります。

 

(2)はマイノリティの児童・生徒数が少ないときに用いられる対応で、クラスの中に一定数の希望者がいれば教育委員会から公費で民族講師を派遣する制度や、民間の民族教育機関に政府から助成金を支給する制度などがあります。

 

(3)については、その国の他の私立学校が政府から助成金を受けていない場合、外国人学校だけが特別に助成金を受けるということはないかもしれません。しかし、その事実をもって「他の国でも外国人学校に助成金など与えていない」というのは悪質なミスリードです。なぜなら、他の私立学校が何らかの保護を受ける場合は、外国人学校も同じ恩恵を受けることになるからです。しかも、公式に学校と認定されている以上、外国人学校の卒業生が大学進学資格を制約されるといった差別を受けることもありません。

 

また、直接的に助成金を支出しない場合でも、外国人学校などが他の学校より劣った水準で運営されることのないよう指導、保護を講じている国もあります。例えば、税率を軽減したり、寄付金控除の対象としたり、現地政府が外国人学校に土地を無償に近い価格で貸与するといったことです。

 

日本人学校にまつわる事例を紹介します。司馬遼太郎が『街道をゆく オランダ紀行』(1991年)で紹介しているエピソードによると、アムステルダム日本人学校は「日本のふつうの小学校ほど」の広さがあるにもかかわらず、借地料は一年でわずか1ギルダー(約70円)を政府に納めているだけだそうです。

 

最近では、韓国のソウル日本人学校が2010年に江南区から麻浦区へ移転した際、元の校地をソウル市が買い上げ、日本人学校のために別の広い用地を売却した上で、売買差額の剰余金で新築校舎を建設するという出来事もありました。 http://www.jke.or.jp/column/column_inside.php?id=768

 

以上の説明で明らかなように、外国籍住民を含む民族的マイノリティの子どもの教育機会を保障するために何らかの公的支出を実施している国は少なくありませんし、差別することなくその国の「学校」として公式に承認している国もあるわけです。

 

そう考えると、「日本人の税金で外国人学校を支援する必要はない」という主張がいかに狭量なものか、お分かりになると思います。しかも、在日コリアンは三代、四代に渡って日本の住民として納税の義務を果たしていますので、「日本人の税金」という表現もミスリーディングです。

 

 

 

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