朝鮮学校「無償化」除外問題Q&A

Q7.朝鮮学校だけを「高校無償化」から除外するのは違法なのか。

 

この質問への回答の代わりに、それに該当する記述を各弁護士会の会長声明からいくつか引用します。

 

 

東京弁護士会(2010年3月11日)

「朝鮮学校に在籍する生徒には,日本国憲法第26条1項,同第14条,国際人権規約A規約(「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」)第13条,人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」)などにより,学習権が保障され,その保障に関しては平等原則に違反してはならないとされているのであり,朝鮮学校を高校無償化の対象から除外することは,朝鮮学校に在学する生徒の学習権を侵害し,平等原則に違反するおそれが大きい。現に,去る2月25日ジュネーブで開催された国連の人種差別撤廃委員会においても,高校無償化法案で朝鮮学校の除外が検討されていることについて,委員から人権保障の観点から懸念する意見が出されたことが報じられている。」

 

 

横浜弁護士会(2010年3月17日)

「合理的理由のない差別であって,憲法14条の平等原則等に反し,教育機会の平等と母国語による民族教育を受ける権利を保障した子どもの権利条約28条,30条等に反すると言わざるをえない。そればかりか,国連の人種差別撤廃委員会が「子どもの教育に人種差別を持ち込むものだ」と懸念を表明したように,人種差別撤廃条約が禁止する「人種的憎悪及び人種差別の正当化・助長」(4条)につながりかねないものであり,許されるものではない。」

 

 

新潟県弁護士会(2010年7月5日)

「政府の対応は,朝鮮高級学校に通う子どもについても,憲法14条1項によって,他の外国籍の子どもとの間で合理的理由なくして差別的取扱いを受けない権利が保障されていること,さらに,朝鮮高級学校に通う子どもにも,教育を受ける権利(憲法26条1項)が保障され,子どもの権利条約が民族教育の尊重を教育の目的として指向していること(子どもの権利条約29条1項(c)(d)),国際人権規約(社会権規約2条2項,13条,自由権規約26条),人種差別撤廃条約5条等の定めに照らし,疑問であると言わざるを得ない。」

 

 

また、以下のような報道もありました。法的正当性のないまま結論を先延ばしすることは、政府にとっても決して合理的な行動とはいえません。

 

 

「朝鮮学校の無償化先送り、訴訟対策を検討 文科省」『朝日新聞』2010年12月30日付

「保留にしたまま引っ張り続けると、行政手続きを遅滞なく行うことを定めた行政手続法に触れる可能性があり、省内には「裁判になれば負ける可能性もある」と早期の手続き再開を求める声がある。」

http://www.asahi.com/special/08001/TKY201012280223.html

 

 

Q8.閉鎖的な朝鮮学校の側にも問題がある。お互いに理解に向けて努力すべきでは。

 

日本の新聞各社は朝鮮学校の「無償化」除外を批判しながら、一方で朝鮮学校も閉鎖性を改善すべきだと社説に書いています。どうやら、朝鮮学校が閉鎖的であるというイメージはずいぶん強固なようです。

 

しかし、この主張は二つの意味で妥当ではありません。

 

第一に、Q7への回答で述べた通り、朝鮮学校だけが「高校無償化」を除外されるという措置は法的に許容されるものではありません。違法性の高い人権侵害について、被害者の側にも問題があるかのような主張は間違っています。

 

第二に、じつは、朝鮮学校は日本の中でもかなりオープンな特性をもった学校なのです。というのも、朝鮮学校はつねに誤解や偏見まじりの厳しい視線に晒されてきましたので、すこしでも状況を改善しようと、いつでも学校や授業を参観できると謳っている学校が多いのです。

 

日本の公立・私立学校では、生徒の保護者ですら決められた日でなければ参観できないところが多いと思います。とりわけ、2001年の池田小学校事件以来、児童・生徒の安全を守るためセキュリティは厳しくなっています。それに対して、朝鮮学校は「閉鎖的」だという誤解や偏見を解消するため、子どもたちの安全を犠牲にするほど過剰にオープンな姿勢を強いられてきたともいえます。

 

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シノドス国際社会動向研究所

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