地域の自然エネルギーを創り出す ―― case.1 小田原

3.11後、縁あってシノドスでは自然エネルギーの取り組みに関する基礎的なアプローチを連載記事として発表させていただきました(光文社『日本の難題をかたづけよう』所収「環境エネルギー社会への想像力と実践」)。当初は全6回の構想で書きはじめたものの、3.11後の日本のエネルギーに関わる動向は目まぐるしく変化し、わたし自身もそのプロセスの片隅に身をおくなかで、最終回として考えていた「自然エネルギー人材育成」については執筆することができないままになっていました。

 

その背景としては、そもそも日本で自然エネルギー政策や事業に取り組む人材を育成する場がほとんど存在していなかったことがあげられます。わたしの大学院修士時代(2005〜06年頃)を思い出してみると、本格的に自然エネルギー政策や事業について学ぼうとしても、専門的知識を体系的に学べる大学院はないので、関連する分野の大学院に在籍しながら、NPOでインターンとして活動するなかで実践的に学んできたのが実際のところです。

 

一方で、後述するように、3.11から2年近く経つなかで、国内のさまざまな地域で自然エネルギーに取り組む動きが活発化し、各地に取り組みの中心となる「場」が生まれてきました。そして、2012年はわたし自身も、そういった「場」を立ち上げ、地域の人々が中心となって取り組む自然エネルギー事業の実現を支援する活動を重点的におこなうようになりました。

 

そこでは地域のさまざまな人々が「この地域で自然エネルギーに取り組む意義とはなにか?」「次の世代に安心して引き継げる安全なエネルギーをこの地域でどうやって創っていくのか?」といった問いをたて、率直な議論を交わしながら体制づくりや具体的な事業の検討を進めています。

 

わたしは、地域で自然エネルギーに取り組むこうした場にこそ、異なる分野の人々が互いに学び、新たな知識を創り出す「人材育成」のプロセスがあると感じるようになりました。

 

そこで、「人材育成」のトピックを単独の記事としてではなく、さまざまな地域で自然エネルギーに取り組む人々の「学びのプロセス」として記述することが必要だろうということで、新たに不定期で現在進行中の地域の自然エネルギーへの取り組み事例を寄稿していきたいと思います。

 

 

3.11後の地域自然エネルギーイニシアティブ

 

福島原発事故は、立地地域のみならず、拡散した放射性物質のリスクも含め、国内のあらゆる地域に多大な影響を与えました。それは物理的な影響はもちろんのこと、各地で見られるようになったデモに象徴されるように、人々の意識や行動の面にも大きな影響を与えました。

 

意識や行動の変化の現れのひとつとして、エネルギー問題について考える講演会や勉強会が市民グループや行政、企業などによって全国各地で開催されるようになりました。わたしもそういった講演会や勉強会に呼ばれてお話しすることがよくあるのですが、テーマは原発問題から国のエネルギー政策、電力市場改革、家庭での取り組みなど多岐にわたり、「ミツバチの羽音と地球の回転」「第4の革命」「シェーナウの想い」といったエネルギーに関するドキュメンタリー映画の上映会と合わせておこなわれることもよくあります。

 

こういった講演会や勉強会は、当初はそれまで自らの問題として考えてこなかったエネルギーの問題を改めて自らの生活や地域の問題として考えるために、まずは問題がどのようなものなのか理解することを目的として設定されていました。これが、2012年に入るころから、講演会や勉強会での基礎的な理解を踏まえて、今度は問題の解決策のひとつである自然エネルギーに実際に地域で取り組もうとする人々が現れはじめました。

 

そして、国としてもこうした動きを推進すべく、環境省は、地域のステークホルダーが参加し、合意形成をはかりながら、地域の実情にあった具体的な自然エネルギー事業の計画を作成する事業として「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」を開始しました。この事業に対し、2011年度は全国から68件の提案があり、7件が採択、2012年度は52件の提案があり、8件が採択され、現在15のモデル地域が専門家の支援を受けながら取り組みを展開しています。

 

今回は、わたし自身も支援者として関わり、約1年半にわたる行政・民間の協働プロセスを経て地域のエネルギー事業会社を設立するに至った神奈川県小田原市の事例をみていきたいと思います。

 

 

 

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