「一般意志2.0」を現在にインストールすることは可能か?

「筆者はこれから夢を語ろうと思う」。『一般意志2.0』(講談社)の冒頭に置かれたその言葉の通り、あまりにも大きく、そして未完成の「夢」が収められたこの本は、まるで将来の読者にこそ一縷の期待を託し、いまは息をひそめてその到来を待望しているかのようにも映る。

 

しかしながら、著者の思惑を超えて、すでにこの本は発売当初から大きな反響を呼び、著者を含んだインタラクティブな環境での「夢」の成形が始まりつつある。同時に、著者が杞憂するように、そこで語られる構想のみならず、哲学者自身の「伝統的な思想人への回帰」を示す書物ではないかとの誤解を招きかねないほど、可能性と裏表をなす危険を秘めた本であるともいえる。シノドス編集長・荻上チキが、『一般意志2.0』の射程と可能性について、著者との対話から真意を探る。(構成/柳瀬徹)

 

 

物語回帰する空気のなかで

 

荻上 急な依頼でしたが、どうぞよろしくお願いします。

 

 よろしくお願いいたします。

 

荻上 最後にお会いしたのは1年前でしたね。それにしても、東日本大震災と原発事故の経験に――表現への反映の有無はともかくとして――多くの人が影響されたかと思うのですが、東さんにとっての3.11以降とはどんな日々でしたか?

 

 そうですね。ご存じのように、ぼくは放射線の低線量被曝については、専門家ではないから「わからない」という立場をとり続けています。そのうえでリスクを考えて行動する。この立場が理解されなかったのは辛かったですかね。

 

荻上 たとえば柄谷行人さんをはじめ、多くの書き手たちも運動化していきましたね。

 

 そうですね。

 

荻上 社会が、可能なる脱原発へと舵をとることは大賛成です。一方で、震災後、「物語」を叫ぶ声があちこちでひびきわたり、すぐに立場を決めなければいけないという空気が濃かった気がしますね。

 

そんな状況にあって東さんは、震災以前の雑誌連載を、あえて大きな加筆をせずに刊行するという決断をされたわけですが、とはいえ3.11を経て『一般意志2.0』の読まれ方のモードも変わっただろうと思います。そこで、読者からの反響を少しだけ先回りするかたちで、東さんの議論の誤解されそうなところ、誤配されそうなところの真意をお話ししていただければと思うんですが。

 

 チキさんぽいですね(笑)。ぼくにはあまり「誤解を先に潰す」なんて発想はないかな。だって何をやっても誤解するんだもの、人は。

 

荻上 まあ、そうなんですけど。

 

 もうあきらめていますよ(笑)。

 

 

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