人生を諦めないでほしい――生活保護の現場から【PR】

「私! 働くからね!」

 

――ご著書を拝読していると、重い病気などで働けない方なども支援していると感じました。なぜ、就労支援の範囲外にも積極的に関わっているのでしょうか。

 

たとえば、就労支援をしていた途中に、病気がどんどん重くなる方もいます。それでも、「私! 働くからね! みさ姉、絶対に離れないでね!」とおっしゃる方がいます。就労相談員の私が離れるということは「もう社会復帰は無理だ」と社会からハンコを押されるようなものだと思っている方もいます。

 

しんどくても「働きたい」と前向きに思っている方がいたら、たとえ支援の範囲外であっても、私はなるべく寄り添わせてほしいなと思うんです。

 

それと、この仕事をしていると、孤独死する事例をよく聞きます。生活保護を受けている方の孤独死って、誰も身内がいない、いても相手にされないことが多いんです。

 

ケースワーカーが「○○さんは、あなたのお父様ですよね。この度、お父様が亡くなられました。葬儀はこちらで行いますので、遺骨だけ引き取ってもらえませんか」と電話をすると、「ゴミ箱に捨てといてー」と言われてしまったケースを聞いたことがあります。

 

借金にまみれて、子どもや孫に迷惑をかけているとか、そのおかげで家族がその地域に住めなくなるとか。そういう環境になってから、生活保護になる方がいっぱいいらっしゃる。だから、亡くなった後に遺骨を取らなくなるケースも多いんですね。そんな家族関係が沢山あるんです。

 

ケースワーカーとの、そんなやり取りを見ていると、そういう死に方をするような方を無くしたいなと思うんです。このひとは、一生懸命生きたんや。たとえ親族が引き取らなくても、周りのひとが悲しんでくれる。私が関わった方には、そういうふうに生きて行ってほしいなって思うんです。

 

私の担当していた方で、危険な手術をする方がいました。もしかしたら全身麻痺になるかもしれない、最悪死ぬかもしれないと。病院の方に、「もしもの時に知らせるひとはいますか」と聞かれ、「いない」と答えたというんです。

 

だから、「市役所に林っていうのがいる、と先生に伝えといて、なにかあったらすぐ行くから」と答えました。彼は「ありがとう……ほんまにありがとう……」と涙ぐんだ声で言ってくれました。

 

一般的に考えて、私のやっていることは就労支援の枠を超えているのかもしれません。でも、私が担当して、深いところまで一度関わったなら、就労できるかできないかではなく、最後まで受け止める覚悟で接したいんです。

 

今年の4月に制度が変わりました。支援していた方を一度手放して、担当地区に振り分けられた相談員に引き継ぎ、支援を再開することになりました。これは今まで支援してきた方が自分以外の支援方法が異なる相談員に引き継がれるということです。私は、「いきなり手放すことになったら、混乱してしまう!」と反対しましたが、聞き入れられませんでした。

 

やはり、ひとの心を扱い、関係性を築いていく仕事ですので、「はい、明日からこのひとに変更です」と簡単に出来るものではないと感じています。関係性は引き継ぎの書類に残せるものではないですしね。

 

 

顔をあげて。そばにおるで。

 

――林さんが就労相談員になったきっかけを教えてください。

 

もともとは子供が好きで保育士の仕事をしていました。結婚し、出産するんですが、息子が2歳、娘が6ヶ月の時に離婚して、シングルマザーになります。

 

そこで、また保育士の仕事をしようとするのですが、7時から19時まで仕事なのに、子どもたちも、7時から19時までしか預かってもらえない。これでは、働けません。知人の紹介で学童保育のアルバイトをするのですが、その時の給料は12万で、親子3人で生活していけず、保育士時代の貯金をくずす毎日でした。さらに、学童の閉鎖も決まり、途方に暮れてしまいました。

 

そんな時、同僚から「市役所で就労相談員の募集がでていたよ」と教えてもらいました。はじめは「わたしアホやし、市役所なんか無理!」と思っていたのですが、応募してみると、2次募集で採用されます。

 

1次募集の時には、パソコンが出来なかったら落とされたので、「パソコンできます」と言って入って。実際は電源の入れ方も分かんなかったんですけどね。「お前、パソコン使えるんちゃうんか?」「今から使えるようになるんです」言うて(笑)。

 

息子に自閉症という障がいがあるので、平日に1日休みがある嘱託職員はすごく助かっています。病院に連れて行ったり、保育園に早く迎えにいってあげられました。でも、正規雇用ではなく、1年ごとの更新という非常に不安定な立場で、私自身も悲しいほどワーキングプアです。

 

それでも、子どもたちの姿や、前向きに生きようと頑張る方を見ていると、すごく勇気づけられ私も頑張ろうと思います。だから私の、関わった方には人生を諦めないでほしいと思っているんです。私がそばにいることで、下を向かずに顔をあげて、この生活保護という場所から卒業し、堂々と自分の人生を生きて行ってほしいと心から願っています。

 

 

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