定数格差とねじれ国会

昨年2010年7月の参議院選挙で民主党が敗北して以来、衆議院、参議院の多数政党が異なる、いわゆるねじれ現象がつづいています。ねじれは2009年8月の衆院選挙で政権交代が起こり、民主党が両院の多数を握った段階でいったんは解消されましたが、わずか1年もたたないうちにねじれが復活してしまいました。

 

ねじれ現象は、迅速な法案可決を阻害します。与党が参議院の過半数を失った場合、法案を成立させるために野党にも八方美人的政策をとらざるをえず、抜本的な政策変更を行うことが困難になります。そのため法案審議に時間がかかる膠着状態がつづくようになり、国政が停滞します。にもかかわらず、ねじれ現象が頻発するのはなぜでしょうか?ここでは、衆参の定数格差の違いが、ねじれの大きな原因になっている可能性を指摘します。

 

 

ねじれの意味

 

周知の通り日本国憲法では首班指名、予算の編成、条約の批准において衆議院の優越が認められています。しかし実際には、予算の執行や条約の履行には、関連法案の成立が不可欠です。憲法条文の名目的な解釈とは異なり、実質的には衆議院の優越は首班指名に限られているとみることができます。つまり内閣を生み出した衆議院の多数派と、参議院の多数派の意見が食い違ったときに、ねじれ現象が起こるのです。それではなぜ、政権を握る与党勢力が参議院で敗退し、ねじれが発生するのでしょうか?

 

ねじれが発生する原因は複数あります。まず第一に両院の選挙制度の違いです。衆参両院の選挙制度が異なるため、かりに衆参両院の選挙を同時に行ったとしても、異なる政党が両院の多数党となる可能性があります。ただし実際にこれまで行われた同日選挙では、いずれも自民党が両院で大勝していますが、可能性としては否定できません。

 

第二に、選挙時期の違いがあります。衆議院は解散があり、参議院は3年に1回の半数改選で選挙が行われます。とくに参議院の半数改選のため、前回選挙の影響が現在の議席配置に影響を及ぼすのです。かりに衆議院、参議院が同じ選挙制度を採用していたとしても、異なる時点での民意を問うているという意味で、ねじれは起こりうることになります。他にも候補者の違いなどの細かい原因は考えられますが、基本的にはねじれ国会は選挙制度と選挙時期の違いというふたつの効果が絡み合ったものだと考えられます。

 

自民党が長期間政権の座にあった1955年から2009年をみると、少なくとも1957年から1989年のあいだ、自民党は参議院の過半数を安定的に維持していました。自民党結党後しばらくは参議院で過半数を割っていましたが、当時は無所属議員が是々非々で法案への態度を決めていたため、必ずしも自民党が参議院対策で苦労する状況ではありませんでした。しかし1989年参院選を契機に、最初の本格的な衆参ねじれが起こり、以後、1998年参院選、2007年参院選、2010年参院選と四つの時期で本格的ねじれ現象が発生しています。

 

とくに90年代後半に入ってから、参院選挙の度にねじれ現象の発生が意識されるようになりました。この背景には、不況の長期化と税収の落ち込みによって自民党が集票組織を維持するのが難しくなったことが考えられますが、それだけではありません。衆議院で選挙制度改革を契機に大幅な定数格差是正がなされたのに対して、参議院で格差を放置したことによって、「定数格差のねじれ」が起こり、こうした制度的環境のもとで、頻繁にねじれ国会が出現するようになっているのです。

 

 

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