新春暴論:政治資金を透明化する簡単な方法

オープンデータの範囲外

 

2015年11月には官民データ活用推進基本法が成立した。「国・自治体・民間企業が保有するデータを効果的に活用することで、自立的で個性豊かな地域社会の形成、新事業の創出、国際競争力の強化などを目指す法律」だそうだ。

 

オープンガバメントは以前から経済産業省などが推進しており、国としてもこの分野を推進すべきと考えている、とアピールしたいのだろうが、西田亮介さんが指摘する通り、行政分野はともかく、政治分野については大幅に遅れているといわざるを得ない。諸外国の制度について詳しいわけではないが、少なくとも米国の場合は、連邦選挙委員会(Federal Election Commission)のサイトでまとまった情報がわかりやすく公開され、詳細にわたるデータなども取得できるようになっている。

 

 

・日本版オープンデータ(官民データ活用推進基本法)から抜け落ちる政治と政治資金の情報公開(西田亮介  | Yahoo!ニュース個人2016/12/25(日)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20161225-00065867/

 

・欧米主要国の政治資金制度

国立国会図書館 調査と情報 第454号(2004年8月)

http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0454.pdf

 

・Federal Election Commission

http://www.fec.gov/

 

 

もちろん、「いまどきPDF」問題も、それなりに事情はあるのだろう。政治資金収支報告書の中には今でも手書きのものが少なからずある。当該政治団体にパソコンが使えない人がいるのかもしれないし、政治活動に金を使ってしまってパソコンを買う余裕すらないのかもしれない。手書きで出されたものを全部データ化するのも大変だし、OCRで読み取りミスなどがあったら政治問題にもなりかねない。

 

それではと、民間企業や団体が乗り出すケースもある。

 

 

・国会議員の政治資金オープンデータサイト公開、Googleが助成

日経コンピュータ2016/06/03

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/060301624/

「有識者でつくる任意団体「政治と国民を近づける会」は2016年6月3日、国会議員の政治資金情報の検索・閲覧ができる情報サイト「ラポール・ジャパン」を開設したと発表した(図)。このうち政治団体別の収支集計についてはCSV形式のオープンデータとして公開した。」

 

 

以前にも、似た取り組みが行われたことがあるが、1回きりのもので、持続性がなかった。今回のケースも、2014年の現職国会議員の関係政治団体2133団体のうち、2015年11月に総務省が公開した政治資金収支報告書をデータ化したものだそうだが、「今後は報道機関などの支援で運営したい考えで、将来は議員向けに収支報告書の作成ソフトを提供して、現状では議員ごとに異なる費目の統一を促していく構想もある」とある。すでに後援パートナーの名も挙がっているから、期待できるのかもしれない。

 

 

・ラポール・ジャパン

http://rapportjapan.info/

・政治資金透明化プロジェクト

http://pft-project.jp/

 

 

とはいえ、安心はできない。というのも、「会計帳簿と連動して自動的に収支報告書を作成でき、かつ、オンライン申請により収支報告書を提出することができるソフトウェア」は、以前からすでに、政府が提供するものが存在しているからだ。

 

 

・政治資金関係申請・届出オンラインシステム

https://kyoudou.soumu.go.jp/kyoudou/Main?vc=GK020101

 

 

このシステムは、2007年の法改正に際して、政治団体の事務負担を軽減するため用意されたものだ。単に政治資金関係の申請や届出を行うだけではなく、会計帳簿と連動して自動的に収支報告書を作成でき、かつ、オンライン申請により収支報告書を提出することができる無料のソフトウェア(会計帳簿・収支報告書作成ソフト)がセットになっている。

 

2010年1月以降、国会議員関係政治団体の会計責任者は、収支報告書等の提出について、オンライン申請により行うよう努めるものと法に規定されている。直近の、領収書等の写し等の PDFによるオンライン提出を可能とする省令改正にもすでに対応済だ。

 

しかしこのシステム、どうもあまり利用されていないようだ。2009年時点で会計検査院が内閣総理大臣に対して行った報告では、この政治資金関係申請・届出オンラインシステムは「利用が低調となっていて整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していない電子申請等関係システム」として挙げられている。2008年度、全申請件数6,354件のうち、電子申請件数はたったの2件だったから、当然だろう。

 

直近の数字では、集計のしかたが異なる可能性があるので直接比較はできないが、2016年度の行政事業レビューシートに、2015年度のオンライン申請利用件数が368件、とある。2013年度は309件、2014年度は351件ということで、徐々に増えてはいるが、2008年当時と比べて政治団体の数が大きく変わったとも思えないから、全体からみれば、依然として、システムの利用率は低迷しているとみてよいのではないか。つまり、上記の民間団体等の取り組みも、大半の政治家や政治団体からスルーされて終わり、となる可能性はかなり高いものと思われる。

 

 

・会計検査院報告「電子申請等関係システムの利用状況について」平成21年9月18日付

http://report.jbaudit.go.jp/org/h20/ZUIJI1/2008-h20-3017-0.htm

 

・平成28年度行政事業レビューシート「政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム運営等経費」

http://www.soumu.go.jp/main_content/000437850.pdf

 

 

会計・報告事務を役所に丸投げしてしまえ

 

というわけでやっと暴論。こうした状況を嘆くのは簡単だが、嘆いていても状況は変わらないので、1つ提案してみる。上記のような、政治家や政治団体の収入や支出の問題の多くは、つきつめれば、政治団体の会計や収支報告の事務を政治団体の職員に行わせていることから発生する。問題のある収入や支出が事後に発覚するから、政策を審議すべき貴重な時間がくだらないスキャンダルの追及に取られてしまうのだ。

 

総務省のオンラインシステムにせよ、民間団体の提供するシステムにせよ、操作には少なくとも一般レベルのPCスキルが必要だが、そうした人材がいないという場合もあろう。もしそうならそれ自体政治家として問題だと思うが、できないものをやれと言われてもできるようにはならない。また仮にいたとしても、記帳や報告など実際の処理が不適切に行われる場合もありうる。これだけスキャンダルやグレーな案件が頻発している以上、政治家や政治団体を無条件に信用することはできない。

 

というわけで、それならば、会計・報告事務自体を外部、端的にいえば役所側に行わせるというのはどうか。専任の会計担当者がいる事務所や団体なら、担当者を派遣すればよい。行政職公務員を直接派遣することもありえようし、そうした業務を請け負う団体を作ることも考えられる。

 

いずれにせよ、癒着や不正を避けるためには定期的な担当者の人事異動が必須だろう。当然コストがかかるが、その分だけ議員歳費を減らせば新たな経費負担は生じない。会計担当者が他の業務を兼任しているという場合もあろうから、その場合は複数の事務所や団体をまとめて担当するようにすればよい。

 

こうしたアウトソーシングは、民間企業の会計税務事務であればすでに広く普及している。「経理 アウトソーシング」などのことばでネット検索すれば、数多くの事業者のウェブサイトがヒットするはずだ。価格も月千~数千円程度からと低廉で、必要に応じ、記帳や申告の代行から領収証・請求書関連事務、銀行口座管理まで、一括して代行してくれる。領収証を封筒に入れて送ればあとはお任せ、などというものもある。企業より処理件数が多いなどということはまず考えにくいから、大半のケースはこうした拠点集中型のアウトソーシングで足りるのではないか。

 

よく問題になる政治資金パーティーなども、会計担当者をその都度有料で派遣して現場で処理させればよい。いうまでもなく、「数百人規模の参加するパーティーの受付で、出席者の全員に宛先とともに金額をちょうだいすることになると、受付が混乱する。そして、パーティーの円滑な運営に大きな支障をきたす」(上掲記事)などという戯言は通用しない。そんなに現場での処理が面倒なら、受付の人数を増やすなり、事前に銀行振込させるなりすればよいだけの話だ。

 

こうすれば、政治資金に関するスキャンダルのかなりの部分は、そもそも発生しなくなる。会計や報告の誤りや虚偽は、政治家や秘書などが命じない限り、アウトソーシング先、もしくは行政側の責任となるからだ。政治資金でガソリン代やプリペイドカードなどを「必要以上に」買っていたとされる問題も、支出時点で把握できていれば、そこでチェックできる。税務署員ならずとも、経理事務を担当した経験のある公務員なら、見逃すことはないだろう。ITを活用するならそれこそAIの出番かもしれない。

 

定期的な異動で当該政治家などに依存する関係とならないようにすれば、担当者に圧力をかけることも難しくなろう。さらに、こうしたアウトソーシングによって、政治資金関連事務の電子化が一気に進められる。政治資金関係申請・届出オンラインシステムが使いにくいとかわからないとかいう言い訳はできなくなる。

 

もちろんこれでも、不透明な部分が完全になくなるわけではなかろうが、透明性は大幅に向上し、そのうえ党派性も排除できる。当然、その内容は可能な限り、データとして公開すべきだろう。寄付者の固有名詞などでどうしても一般公開に適さないものがあるなら、そうした部分のみ、閲覧権限者を限ればよい。そうした柔軟性も電子化の大きなメリットの1つのはずだ。

 

こうした情報公開は、政治家相互、あるいはメディアなどによる検証を容易にする。ネットには暇人(いい意味で)がたくさんいるから、仮に役所側が見逃しても、どこかで誰かが発見できる可能性が高まり、さらに政治資金の透明化を進めるだろう。公開を渋ること自体が、政治家にはやましいところがあると思われる理由、ひいては政治全体が信用されない理由となっていることを、政治家はもっと真剣に考える必要がある。

 

そのうえでだが、私たちも、政治家や政治団体の収入や支出の適切さについて、きちんと考える必要がある。政治に資金がかかるのはやむを得ないといった一般論ではなく、スイートルームは贅沢だといったやっかみでもない。政治資金が足りないのであれば、プリペイドカードをこっそり換金するのではなく、きちんと制度上の手当をするよう議論を提起すべきだ。

 

データの検証が広く、さまざまな立場から行われ、それに基づいた議論を経て、多くの国民がこれなら納得できるというルールを作り上げてほしい。政治資金をめぐるくだらないやりとりはできるだけなくして、政治家の時間は、もっと有意義に使ってもらいたい。

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.222 特集:沖縄

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