年金の半減か、消費税の増税か。その両方だ。  

税金を引き上げるといって、選挙に勝てるはずがない。去る7月11日の参院選で民主党を敗北に導いた原因は、やはり菅首相の消費税増税発言であったようだ。

 

 

消費税という躓きの石

 

「自民党が10%という案を出されている。参考にさせていただきたい」(6月17日)。「消費税を上げないで済むならそうしたいが、2,3年でギリシャのようになる。ギリシャが最初にしたのは、年金カットだ。そういう事態は避けたい」(6月24日)、等々。菅首相は今回の選挙で、消費税増税の論議を積極的に誘導した。

 

ところが選挙の結果はみごとに惨敗。朝日新聞社の取材によると、民主党の都道府県連幹部たちの過半数は、敗北の原因を「首相の消費税10%発言」であった、とみなしているという(『朝日新聞』7月20日)。

 

消費税をめぐる見解は、民主党内でも割れていた。小沢一郎前幹事長は、選挙期間中から、菅首相の発言を公然と批判した。民主党は昨年の衆院選で、消費税を上げないと約束したのだから、ピンチヒッターとして政権を委任された菅首相は、その約束を守るべきだというわけである。

 

この小沢の主張にも一理あるだろう。二大政党制にとって桎梏となるのは、マニフェストの貫徹だ。なによりも民主党がひとつの政党として、一貫していることが大切となる。

 

菅首相としては、野党の自民党が消費税の増税を唱えているのだから、民主党が増税論議を提起しても、選挙で負けないだろうと踏んだにちがいない。驚くべきは、自民党の選挙戦略だ。増税を掲げても、得票を伸ばせるというその発想は、周到なシナリオをもっていたように思われる。

 

選挙戦術に関するかぎり、自民党や、小沢一郎の知恵の方が、まさっていた。そもそも、選挙前の6月下旬の調査では、消費税を最大の争点と考えた人は、19%に過ぎなかった(『朝日新聞』6月28日)。この時点での菅内閣の支持率は48%であったから、かりにもし消費税を争点化しなければ、民主党は参院選に勝てたかもしれない。ところが民主党は、自民党の挑発を受けて、否応なく消費税を焦点化させられてしまった。

 

 

長期政権化か、それとも経済危機か

 

では消費税の増税はいかにして可能なのか。おそらく次のふたつの状況のいずれかが生まれたときであろう。

 

ひとつは、民主党が4年以上の安定政権を維持できそうな場合。政権が安定すれば、内閣は大きな改革に着手できよう。もうひとつのケースは、日本経済が深刻な危機に晒されて、円や株や国債などが大暴落する場合。経済危機が訪れれば、ギリシャ政府がそうしたように、日本政府は財政の健全化を迫られよう。消費税増税を促すこれらふたつのシナリオのうち、どちらが現実的かといえば、「日本経済の危機」ではないだろうか。

 

ただし世界の経済情勢からすると、日本経済はしばらく持ちこたえそうである。最近の異常な円高は、日本経済への信任を示している。海外では景気回復への先行き不安から、投資家たちによって日本の円や国債が買われている。どうも世界経済の先行きが不透明になると、投資家たちは安定した資産を求めて、日本の円と国債を買う傾向にあるようだ。有事のドルではなくて、有事の円という傾向が定着している。

 

 

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