東日本大震災と東京電力原発事故の影響により、4年に一度の統一地方選挙に関する報道がかなり少なくなっている。しかも、西日本も含めて選挙運動を自粛するような動きもあり、街中で選挙カーが候補者名を連呼して走る姿はあまりみられなくなっている。
このような注目されない選挙戦の帰結は、低い投票率と現職有利の選挙結果を呼ぶのではと考えられている。しかし筆者としては、未曽有の災害時だからこそ、地方の政治と行政の役割について考え、投票選択というかたちで関わりをもつことを勧めたいと思う。
47都道府県議会議員選挙の定数不均衡の一覧
そこで今回は、統一地方選挙への注目を高める意味も含め、10月の記事にひきつづき、都道府県議選の定数不均衡について取り上げたい。国会だけでなく都道府県議会でも著しい一票の格差があり、それが固定化されているという事実 は、もっと知られてもよいと考えている。しかし、都道府県議会の定数不均衡は、国政のそれとは違い断片的にしかデータが出てこないため、実際に定数不均衡 により損をしている都市部の有権者も、それを明確に認識していない場合がほとんどであろう。
そこで筆者は、2011年の3月中に公表された各都道府県の選挙区別有権者数、議員定数のデータを収集し、整理した。下記の表は、47の都道府県議会議員選挙の定数不均衡を要約して示したものである。
都道府県 |
議員 |
選挙 |
1人区 |
議員1人 |
議員1人 |
「一票の格差」 |
「一票の重さ」 |
LH指標 |
定数 |
104 |
48 |
18.3% |
岩見沢市(1) |
紋別市(1) |
3.62倍 |
0.28票 |
0.111 |
47位 |
|
48 |
16 |
14.6% |
三沢市(1) |
西津軽郡(1) |
1.76倍 |
0.57票 |
0.045 |
14位 |
|
48 |
16 |
8.3% |
大船渡(1) |
久慈(2) |
1.94倍 |
0.51票 |
0.047 |
16位 |
|
61 |
24 |
11.5% |
亘理(1) |
本吉(1) |
2.97倍 |
0.34票 |
0.069 |
33位 |
|
45 |
14 |
11.1% |
潟上市(1) |
北秋田市北秋田郡(2) |
1.68倍 |
0.59票 |
0.037 |
7位 |
|
43 |
19 |
20.9% |
東根市(1) |
新庄市(2) |
2.40倍 |
0.42票 |
0.054 |
25位 |
|
58 |
19 |
12.1% |
相馬市・相馬郡新地町(1) |
河沼郡(1) |
1.84倍 |
0.54票 |
0.037 |
6位 |
|
65 |
36 |
33.8% |
牛久市(1) |
東茨城郡南部(2) |
3.00倍 |
0.33票 |
0.077 |
41位 |
|
50 |
16 |
8.0% |
下野市(1) |
芳賀郡(2) |
1.66倍 |
0.60票 |
0.034 |
4位 |
|
50 |
18 |
14.0% |
沼田市(1) |
甘楽郡(1) |
1.93倍 |
0.52票 |
0.044 |
13位 |
|
94 |
59 |
41.5% |
南14(1) |
西13(1) |
2.63倍 |
0.38票 |
0.077 |
40位 |
|
95 |
45 |
18.9% |
印西市(1) |
銚子市(2) |
2.41倍 |
0.41票 |
0.089 |
44位 |
|
127 |
42 |
5.5% |
北多摩第三(2) |
島部(1) |
5.43倍 |
0.18票 |
0.071 |
36位 |
|
107 |
49 |
14.0% |
座間市(1) |
愛甲郡(1) |
2.90倍 |
0.34票 |
0.063 |
28位 |
|
53 |
27 |
20.8% |
新潟市東区(2) |
胎内市(1) |
2.14倍 |
0.47票 |
0.083 |
42位 |
|
40 |
13 |
5.0% |
滑川市(1) |
下新川郡(2) |
1.61倍 |
0.62票 |
0.052 |
21位 |
|
43 |
15 |
14.0% |
かほく市(1) |
珠洲市(1) |
1.87倍 |
0.54票 |
0.043 |
12位 |
|
37 |
12 |
13.5% |
あわら市(1) |
大野市(2) |
1.64倍 |
0.61票 |
0.035 |
5位 |
|
58 |
26 |
19.0% |
諏訪市(1) |
東筑摩郡(1) |
2.08倍 |
0.48票 |
0.052 |
22位 |
|
38 |
16 |
10.5% |
韮崎市(1) |
甲州市(2) |
1.75倍 |
0.57票 |
0.049 |
18位 |
|
46 |
27 |
39.1% |
羽島市(1) |
美濃市(1) |
2.86倍 |
0.35票 |
0.069 |
34位 |
|
69 |
33 |
18.8% |
下田市・賀茂郡(1) |
御前崎市(1) |
2.28倍 |
0.44票 |
0.059 |
27位 |
|
103 |
57 |
27.2% |
江南市(1) |
額田郡(1) |
2.79倍 |
0.36票 |
0.066 |
31位 |
|
51 |
17 |
3.9% |
亀山市(1) |
尾鷲市・北牟婁郡(2) |
2.29倍 |
0.44票 |
0.091 |
45位 |
|
47 |
16 |
6.4% |
守山市(2) |
愛知郡(1) |
1.93倍 |
0.52票 |
0.053 |
24位 |
|
60 |
25 |
10.0% |
京丹後市(1) |
南区(3) |
1.94倍 |
0.51票 |
0.063 |
29位 |
|
108 |
62 |
31.5% |
堺市東区及び美原区(1) |
大阪市生野区(2) |
2.36倍 |
0.42票 |
0.066 |
30位 |
|
89 |
41 |
23.6% |
芦屋市(1) |
佐用郡(1) |
4.65倍 |
0.22票 |
0.076 |
39位 |
|
44 |
16 |
9.1% |
宇陀郡・宇陀市(1) |
磯城郡(2) |
1.67倍 |
0.60票 |
0.045 |
15位 |
|
42 |
14 |
9.5% |
新宮市(1) |
日高郡(3) |
1.72倍 |
0.58票 |
0.040 |
10位 |
|
35 |
9 |
5.7% |
東伯郡(3) |
岩美郡(1) |
1.54倍 |
0.65票 |
0.039 |
8位 |
|
37 |
14 |
18.9% |
簸川(1) |
八束(1) |
1.94倍 |
0.52票 |
0.047 |
17位 |
|
56 |
20 |
16.1% |
真庭市真庭郡(1) |
勝田郡(1) |
2.95倍 |
0.34票 |
0.050 |
19位 |
|
66 |
23 |
12.1% |
廿日市市(2) |
山県郡(1) |
2.08倍 |
0.48票 |
0.052 |
23位 |
|
49 |
15 |
10.2% |
長門市(1) |
大島郡(1) |
1.91倍 |
0.52票 |
0.030 |
2位 |
|
41 |
14 |
7.3% |
徳島(11) |
那賀(1) |
2.18倍 |
0.46票 |
0.076 |
38位 |
|
41 |
13 |
7.3% |
木田郡(1) |
仲多度郡第一(2) |
1.87倍 |
0.53票 |
0.075 |
37位 |
|
47 |
13 |
8.5% |
西予市(1) |
宇和島市・北宇和郡(4) |
1.70倍 |
0.59票 |
0.040 |
9位 |
|
39 |
16 |
20.5% |
香美市(1) |
安芸郡(1) |
2.28倍 |
0.44票 |
0.088 |
43位 |
|
86 |
46 |
25.6% |
北九州市八幡東区(1) |
うきは市(1) |
2.30倍 |
0.43票 |
0.069 |
32位 |
|
38 |
13 |
7.9% |
嬉野市(1) |
伊万里市(3) |
1.51倍 |
0.66票 |
0.034 |
3位 |
|
46 |
16 |
17.4% |
五島市(1) |
南松浦郡(1) |
1.84倍 |
0.54票 |
0.042 |
11位 |
|
49 |
22 |
24.5% |
合志市(1) |
芦北郡(1) |
2.02倍 |
0.49票 |
0.070 |
35位 |
|
44 |
16 |
13.6% |
大分市(13) |
国東市・東国東郡(2) |
1.97倍 |
0.51票 |
0.096 |
46位 |
|
39 |
14 |
17.9% |
西都市・西米良村(1) |
串間市(1) |
1.60倍 |
0.62票 |
0.051 |
20位 |
|
51 |
21 |
21.6% |
志布志市・曽於郡区(1) |
西之表市・熊毛郡区(2) |
2.13倍 |
0.47票 |
0.058 |
26位 |
|
48 |
14 |
2.1% |
南城市(1) |
沖縄市(5) |
1.58倍 |
0.63票 |
0.024 |
1位 |
今回の統一地方選挙では、4月10日に茨城、東京、沖縄を除く44道府県の選挙が行われる予定であったが、東日本大震災の影響で岩手、宮城、福島の3県で延期となっている。
各都道府県の選挙管理委員会では、来る選挙に向けて3月31日時点で選挙人名簿に有権者を登録し、これを集計して公表している。上の表では、前記6都県を除 いてほぼこの3月31日現在のデータを収集・整理し、計算している。前記6都県は定時登録の3月2日のデータを収集し、選管、報道ともに31日時点の詳細 データがネット上で入手できなかった一部の県については3月2日(兵庫、福岡)、3月23日(徳島)のデータを採用している。
なお、表中や文中の都道府県名のリンクから、筆者が運営するサイトにアップした詳細データに飛べるようになっている。選挙区を構成する市区町村も記述しているので、現住地の定数不均衡の状況など、ぜひご確認いただければと思う。
「一票の格差」の分布
上記の表では、47都道府県議会の定数不均衡を比較することができる。新聞などで定数不均衡の指標としてよく使用される、議員1人あたり有権者数の最小値を分母とし、最大値を分母とする「一票の格差」最大値で見ると、1.51倍の佐賀県から、5.43倍の東京都まで、かなり広がりがあることがわかる。東京の分母(議員1人あたり有権者数が最小)の選挙区は島嶼部という特殊な事情があるが、これを除いても最小選挙区の千代田区選挙区と北多摩第三選挙区の間には3.03倍の開きとなる。この数字でも4.65倍の兵庫、3.62倍の北海道につづいて全国で3番目の値となる。
一方、全体的にみると、かつての衆院のように3倍を超えるような議会はごく一部で、かつての参議院のように6倍というような極端な差はみられない。表2は、都道府県の「一票の格差」最大値と、全都道府県の選挙区の「一票の格差」の分布を「一票の格差」の整数部分によって分類して示している。みての通り、過半数の都道府県では「一票の格差」最大値が2倍以内となっており、各選挙区の「一票の格差」(議員1人あたり有権者数最小値を分母とし、各選挙区の議員1人あたり有権者数を分子とする値)の分布では8割近い選挙区が2倍未満に収まっている。
ただし有権者数の割合では、2倍未満の割合は71%に低下する。これは「一票の格差」の数値が高い選挙区は低い選挙区に比較して有権者数が多いという当然の関係を示すだけでなく、後述する人口の多い都道府県ほど定数不均衡が進んでいるという状況も要因となっている。
また、選挙区の平均定数をみると、全体としては「一票の格差」の高低で明確な傾向はない。参議院選挙区では1人区よりも複数区で一票の価値が軽くなるという傾向があるが、都道府県選挙ではそうはなっていない。都道府県議会では、先の表をみても明らかなように、一票が重い選挙区も軽い選挙区も1人区が多くなるためである。
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・人類の英知を伝える「知の巨人」たち
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……etc.