“LGBT成人式”主催の若者たちが挑戦するもの ―― 自身を誇り、新しい一歩を

2012年1月15日、セクシュアルマイノリティが自身を誇り、大人になることを祝うためのイベント「LGBT成人式」が東京都世田谷区で開催された。LGBT成人式を主催したのは、早稲田大学公認の学生団体「Re:Bit」(りびっと)。セクシュアルマイノリティ問題を切り口として、「互いの違いを受け入れあえる社会」を次世代に創出することを目指し、イベント企画をはじめ、高校・大学や教育委員会向けの授業の開催、LGBT就活生の就職支援などさまざまな取り組みを行っている。同団体前代表の藥師実芳さん、現共同代表の古堂達也さん、山田月子さんに、LGBT成人式を開催した動機や今後の方針について話を伺った。(聞き手/荻上チキ、構成/宮崎直子)

 

 

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 この日だけにとどまらない「つながり」

 

―― 成人、そして成人式の成功、おめでとうございます! 今回、LGBT成人式を開催した経緯を教えていただけますか。

 

藥師 LGBT成人式は今年第一回目として開催されましたが、実はその前年に「第零回」とも言うべき式がありました。それは前副代表が自身の成人式を自身で開いたもので、会議室を使った、10人程の参列者の小さな式でした。それでも、参加した人たちはみんな、「これは面白い、わくわくする!」と思ったんですね。それがきっかけで、もっと大きなイベントにしようという話になったんです。

 

その式が行われたのは、前副代表がちょうど20歳になる年ですね。彼は女性として生まれたけど、男性として生きている性同一性障害の当事者です。ハレの舞台で、着たい袴を着て、みんなにおめでとうといわれる。それだけのことが、今はまだ「普通のこと」ではないんですね。参加者には、自分の性を肯定できず、いろんな思いで成人式に参加できなかったLGBTの人たちもいて、初めて成人式を迎えた喜びを共感しあいました。

 

そんなふうに世代やセクシュアリティを超えてつながる瞬間を、もっと多くの人と分かち合いたいと思い、規模を拡大した「LGBT成人式」を実現させたという経緯があります。

 

 

―― LGBT成人式では、具体的にどういうことが行われましたか。

 

藥師 当日は世田谷区の成城ホールを貸し切り、約400人の参加者が集まりました。

 

 

【タイムスケジュール】

〈着付け・記念撮影〉

15:20~16:20 式典

16:20~17:40 トークショー

〈交流会〉

19:00~21:00 アフターパーティー

 

 

まずは式典がはじまるまでの間に、着付けやメイクを行って、晴れ着に身を包んだ参加者たちの記念撮影を行いました。撮影は長年LGBTカルチャーを撮影し、『TOKYO BOIS』(「男の子のような女の子やFTM」をテーマとした写真・インタビューブック)などで知られる写真家の戸崎美和さん。

 

呉服屋「さかえ屋」さんとボランティアの着付け師・メイク師のみなさんの協力のもと、事前予約をしてくださった方に振袖と袴の着付けが行われ、希望者には「The Body Shop」さんよりご提供いただいた化粧品でメイクをしました。記念となる一日を記録に残そうと多くの方が参加され、まぶしい笑顔をカメラに向けられていました。

 

式典には、司会者として、性同一性障害であることを公表してモデル・タレント活動をされている佐藤かよさんをお招きしました。保坂展人世田谷区長をはじめ、17名の議員の方々が出席され、一人ずつ祝辞を述べていただきました。また、「新成人の言葉」では、現共同代表の二人がLGBT当事者としての様々な想いを語り、涙を流す人の姿もたくさん見られました。

新成人の言葉を述べる代表

新成人の言葉を述べる代表

 

 

藥師 また、タレントのMEGUMIさんを招いてトークショーを行ったほか、夜はパーティーを開きました。各協賛企業からお菓子やお酒が提供され、新宿二丁目のバーテンダーがLGBTの象徴である6色のレインボーをモチーフとしたレインボーカクテルを振る舞ったり、トランスジェンダーを中心とした団体により和太鼓演奏が披露されたりして、会場は非常に盛り上がりました。

初対面同士でも、みなさんがイベントの感想を話したり、様々な情報交換をしたりしていました。全国各地から参加されたみなさんに、この日だけにとどまらない「つながり」を提供できたのではないかと思います。

 

 

 

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