都市部の自動車はもうちょっと不便でもいいのではないか

タイトルに反して、まずは自転車の話から。というか本題は自転車の話でもある。自転車については、少し前に、「シノドスジャーナル」で取り上げたことがある。以下は、いわばその「つづき」にあたるものといってもよい。

 

 

「そろそろ自転車についてまじめに考えよう」

http://synodos.jp/society/2743

 

 

自転車規制強化の動き

 

この記事(何度か言及するので、以下「前の記事」と呼ぶことにする)では、自転車の対歩行者事故のリスクについて取り上げ、歩行者の視点から、そろそろ何かきちんとした対策が必要ではないか、という趣旨の主張をしたわけだが、最近それと整合的な方向性の政策が相次いで打ち出されているようだ。最近報道されたのはこれ。

 

 

「自転車は車道」徹底へ 警察庁、歩道の通行許可見直し(朝日新聞2011年10月25日)

http://www.asahi.com/national/update/1025/TKY201110250565.html

警察庁は25日、これまで自転車の通行が許されていた一部の歩道のうち、幅3メートル未満の歩道は許可しない方向で見直すことを決め、全国の警察本部に通達を出した。歩行者との事故を減らすのが目的で、通行できる歩道でも悪質な例は交通切符を切って厳しく対応するよう求めている。規制強化の一方で、自転車道を新設するなど環境の整備も進める方針だ。

 

 

7月21日付の、別の朝日新聞記事では、「縁石などで区切られた自転車道と、歩道上に設けられた自転車用の通行帯に、一方通行の規制を設けられるようにする案を公表した」としていた。今回のものは、狭い歩道ではそもそも自転車が歩道を走行すること自体を禁止しようという趣旨かと思われるので、もう一歩進めた、という印象だ。ちなみに記事中の「通達」というのは、おそらくこれだろう。

http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/taisaku/tsuutatu.pdf

 

 

もちろん、軽車両である自転車はもともと車道走行が原則だが、例外が幅広く設定されていた。10月の朝日新聞記事はこうつづく。

 

 

「軽車両」の自転車は、原則として歩道を通行してはいけないことになっている。例外は、13歳未満の子どもや70歳以上のお年寄りが運転する時くらいだ。

 ただ、歩道の幅が2メートル以上あり、歩行者の邪魔にならない場合は、各都道府県警の判断で自転車の通行が許可されてきた。こうした歩道が全体の5割近くを占めるとみられる。

 

 

今回の方針は、この「2メートル」を3メートルにして、自転車運転者の属性に関係なく適用されるルールを設定し、取り締まりも強化するというものだ。自転車の車道走行自体は、自転車にある程度入れ込んでいて、自転車のことを真剣に考えている人たち(前の記事では「シリアスサイクリスト」と呼んでみた)のあいだでこれまでも主張されてきたことと整合的だ。現在は、自転車は車道通行が原則ということすら知らない人が多く、自転車は当たり前のように歩道を走っている(警察官が歩道走行しているのもよく見かける)。歩行者の立場から見て、自転車が歩道を我が物顔で走りまわるのは迷惑かつ危険であるから、それが規制されるのはありがたいことなのだが、だからといって両手をあげて賛成、とはちょっといいがたい。

 

 

非現実的かつ「本気」でない規制

 

前の記事にも書いたが、自転車乗りの大半は、家から近所のスーパーやら最寄りの駅・学校等までの比較的短距離の移動のための気楽な、あるいは安楽な交通手段として自転車に乗る人びと、もっと踏み込んでいえば、歩道走行が当たり前と考えている人びとだ。こうした「カジュアルサイクリスト」たちにとって、今回の方針は正直な話、とても現実的にはみえないだろう。彼らが気軽な足として自転車を使ってこられたのは、自動車と接触するリスクが低い歩道を通ることができたからだ。車道では安心して走れない、という声はすでに上がりはじめている。

 

車道走行が原則とはいっても、もちろん例外はある。例外自体は以前からあったわけだが、今回少し変わった。下に通達の文章を引用しておくが、要するに「歩行者の通行量が極めて少ないような場合、車道の交通量が多く自転車が車道を通行すると危険な場合等」は見直しの対象から除いていいということのようだ。各警察本部が地域の実情に応じて決めるしくみになっている。実情に合わせるのはもちろん悪いことではないし、ぜひそうしてもらいたいが、実際にどうなるのかがきわめて曖昧になるという問題点もある。

 

 

 (2) 自転車と歩行者との分離

ア 普通自転車歩道通行可の交通規制の実施場所の見直し

歩道上で自転車と歩行者の交錯が問題とされている現下の情勢に鑑み、幅員3メートル未満の歩道における自歩可の交通規制は、歩行者の通行量が極めて少ないような場合、車道の交通量が多く自転車が車道を通行すると危険な場合等を除き、見直すこと。

イ 普通自転車歩道通行可の交通規制が実施されている歩道(普通自転車通行指定部分の指定がある場合を除く。)をつなぐ自転車横断帯の撤去

多くの普通自転車の歩道通行が念頭に置かれている普通自転車通行指定部分の指定がある場合を除き、自歩可の交通規制が実施されている歩道をつなぐ自転車横断帯は撤去すること。

 

 

また、他に何もしないということではなく、通達には、自転車用信号の整備やら路上駐車対策やら、あるいは安全教育やらといった項目も並んでいる。しかし、力点の置き方などからみて、あまり実質的な効果が期待できるものはみられず、正直、お役人さんの文章によくある、言い訳のための付け足しという印象を免れない。結局のところ、これまでとたいして変わらないという状況で、ただ何かあったら警察の裁量で取り締まれる範囲が広がる、といったところがせいぜいのような気がする。もしそうなら、それは個人的にもまったくありがたくなどないし、社会としても望ましくない。

 

悲観的になってしまうのは、もともとこの問題については、本質的な部分に踏み込もうとせず、とりあえず何かしておけばいいといった姿勢を行政側から感じることが常態化していたからだ。もちろん、抜本的な対策には時間もコストもかかるし、意見の対立もあろう。そう簡単に決められる問題ではないということはわかっている。一方、日々現場では事故が起きたりしているわけで、何もしないわけにもいかない。今回の方針も、そうしたせめぎあいの結果であろうことは想像がつく。しかし、だからといって、自転車乗りの大半を占めるカジュアルサイクリストたちを危険にさらしていいというものではない。わたしが前の記事で、自転車の車道走行そのものについては取り上げず、歩道を走る自転車乗りの人たちに歩行者を傷つけるリスクをどのように自覚し行動に反映してもらうかという観点から書いたのは、そうした考えからだった。

 

 

 

◆◆「αシノドス」購読でシノドスを応援!◆◆

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.226+227 特集:自立的思考のために

・飯田泰之氏インタビュー「経済学の基礎で社会を読み解け!――マクロ経済の思考法」

・角間淳一郎氏インタビュー「『風俗嬢かわいそう』で終わらせない――“孤立”に歯止めをかけるセカンドキャリア支援」

・【今月のポジ出し!】吉田徹「形骸化する地方自治――『くじ引き民主主義』を導入せよ!」

・藤代裕之氏インタビュー「フェイクニュースが蔓延するメディア構造はいかにして生まれたのか」

・塚越健司 学びなおしの5冊 <統治>

・齋藤直子(絵)×岸政彦(文) 「Yeah! めっちゃ平日」第八回