生活保護とクィア

クィアに「フレンドリー」である議員、とは誰のことか

 

「生活保護問題」が大きな注目を集めるなか、自民党安倍政権では「自助」(自分でなんとか頑張ること)を基礎とする方針を打ち出し、大きな支持を受けています。個々の議員もまた、「現金支給と現物給付」という現行の組み合わせから「現物給付」への移行をうたい、「自助」を全面に打ち出しています。

 

東洋経済オンラインで『国内LGBTに訪れた大きな“うねり” 自民党議員が!為末大さんが!』という記事が掲載され、自民党の議員にセクシュアル・マイノリティに協力的になりつつある人がいることが報じられました。そこでは、セクシュアル・マイノリティに関する新しい会を立ち上げようとしていたり、当事者団体と交流をし始めている議員たちが紹介されています。ここでは、この4名の他の政策や方針を紹介します。

 

牧島かれん議員

・生活保護は現金支給から現物給付へ、もしくは購入制限がかけられるカード使用に移行する

・生活保護においては、就労支援と、チェック機能の強化をする

・法人税を国際水準にあわせ、現役世代の負担を軽減する

・健康保険の適用範囲を厳格化する

・憲法で自衛隊の位置づけを明確にし、武力攻撃に対応できるような条項をつくる

・「離島における防衛力を強化」する

 

●馳浩議員

・「日本の未来に責任を ―― 子を育て 妻をいたわり 親守ろう」(スローガン)

・「生活保護の不正受給は許さない」

・生活保護は現金支給から現物給付に移行する

・「自助を基本に共助・公助のバランスが必要」

・「対中国への脅威を共有し、国際社会として連携した、毅然とした対応」を取る

・「4月28日[…]主権回復の日…政府主催式典が、今までどうして開催されなかったのか[…]外交権を回復した、国家の独立を考える、歴史的な一日に、すべき」(このブログには、知り合い男性を強引に見合いさせた様子も書いてあります)

 

●福田峰之議員

・「現在2歳の二人が縁あって出会い、結婚し、30歳になった時の社会を、絵でイメージ[…]そのために、私たちは10項目の政策を具現化」

・「『自助>共助>公助』の原則」

・「生活保護の水準を基礎年金給付額以下に引き下げ、現物給付と『購入品目制限付きクレジットカード』を併用」する

・「軽症の保険適用除外、高額先進医療への適用厳格化」を行う

・「相続税の廃止」をする

・「集団的自衛権の行使を認め[…]自衛隊を憲法上明記する。日米安全保障体制をさらに深化させ、特にアジアの安全保障における日本の役割を拡大」する

・「領土・領海侵犯に対し、実力を持って排除できるよう国内法や組織・機関の整備」をする

・「ODAは国益に直接資するか否かを基準とし、戦略的に運用」する

 

●橋本がく議員

・「生活保護の見直し:現物支給の拡大、就労支援」をする

・「生活まで無条件で国が補償する制度は、必ず人を堕落させる」

・「自主憲法の制定:自衛権の明記・自衛軍の位置づけ」をする

・「我が国の主権と領土を守る外交・安全保障」をする

 

社会を変えて行きたい ―― そう思ったとき、現政権の自民党の議員にアプローチするというのは現実的なやり方ではあるでしょう。さまざまな議員にアプローチするなかで自民党の議員にもこういった働きかけをするというのは、信念のある活動家が行っていることで、無下に否定できるものではありません。また、「LGBT」の生活をよりよくするために動く議員が増えること自体は喜ばしいことです。

 

しかし一方で、記事で名前をあげられた4名全員が生活保護を厳しくすることを政策にあげていることや、保険適用範囲を狭めようとしている議員もいることを考えれば、「セクシュアル・マイノリティにとっての味方」であるか否かというのは、「LGBT」に直接関連する法律への賛否ばかりでなく、複合的に考えなくてはいけないことが分かります。

 

生活保護法の改正案では、わたしたちが生活保護を申請したことを「扶養義務者」(配偶者、親、子、兄弟姉妹、そして場合によっては姪・甥、祖父母、孫、曾孫、おじ・おば、曾祖父母まで)に通知し、さらに「扶養義務者」に収入等を報告させ、それが本当の額なのかどうか調べることができるようにする案です。これが実現すれば、親族らに「あなたは扶養義務者です。扶養してください」「収入を報告してください」という要請がいき、さらに市役所や税務署、年金事務所にその報告を裏付けるための調査が入ることになります。

 

しかしクィアは、生まれ育つなかで決められた性別に求められる服装や立ち居振る舞いをしていなかったり、「異性」との性愛関係を結んでいなかったり、結ぼうとしていなかったりするなかで、自分の望む生き方と周囲の「こうあるべき」という規範とのあいだに挟まれています。そうしたなかで、わたしたちのなかには、家族と良好な関係を築き、維持できているわけではないという人がたくさんいます。

 

家族がつねに自分を理解してくれるわけではないのはクィアだろうとそうでなかろうと皆多かれ少なかれ同じだと思いますが、地元から離れて暮らしているクィア、親子の縁を切って独立しているクィア、家族の冠婚葬祭に出ることをあきらめているクィア、自分の望む生き方を隠しながら家族と住んでいるクィアなどがたくさんいるのも事実です。

 

クィアであることだけが原因ではないかもしれませんが、自分の服装や立ち居振る舞い、性愛関係の結び方や欲望のありかたが、親など家族との関係を悪くしてしまった、という人はたくさんいますし、そうなるのではないかという不安から、悩んでいるクィアがたくさんいます。実家を出て単身都会に出たものの、仕事がなく、困窮しているというクィアもいます。

 

そんなクィアにとって、生活保護の水際作戦は、これまでも非常に「有効」なものだったでしょう。家族に連絡するぞと言われて、クィアはその職員にどう自分の状況を説明できるでしょうか。親とは、兄弟姉妹とは、良好な関係にありません ―― そう言って「あぁそうですか、わかりました」と引き下がってくれる職員はなかなかいないでしょう。

 

「俺はトランスジェンダーで、親に勘当され、それ以来連絡を取っていません」「わたしはレズビアンで、家族に反対されたまま今のパートナーと同居し始めたので、連絡はしないでほしいです」―― 事情を説明するために、窓口でカミングアウトが必要だというのでしょうか。しかも、そこまで説明すれば「厚生労働省令で定める事情」にあたると判断され、通知なしで生活保護申請ができるという保証も、まったくないのです。

 

 

 

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