誰もが愛する人と安心して人生を送られる社会を目指して――体験談から法制度、ロビー活動まで

現在の婚姻制度の枠で生きづらさを抱える人たちが、自らが望む生き方を選択できる社会のために「特別配偶者法」の成立を目指し活動を行っているパートナー法ネット(特別配偶者法全国ネットワーク)。本記事ではパートナー法ネットによる2013年活動報告会の妙録をお送りする。同性同士で暮らしている人たちが実際にどういった生きづらさを抱えているのかがよくわかる具体的な体験談から、相続の問題など、現行法の法解釈からみるできること・できないこと、そして望ましい法制度のあり方など。誰もが愛する人と安心して人生を送ることのできる社会を目指して。(構成/金子昂)

 

 

同性パートナーシップが直面する問題と法律

 

赤杉 今日はパートナー法ネット(特別配偶者法全国ネットワーク)活動報告会2013にお越しいただきありがとうございます。共同代表の赤杉康伸です。

 

当団体は、2010年12月に正式に創設し、以来日本での「特別配偶者法」成立を目指したさまざまな活動を行ってきております。当団体の基本理念は、同性同士で暮らしている人をはじめ、現行の婚姻制度の枠で生きづらさを抱える人たちが、自分の望む生き方を選択できるような社会を作ることです。本日はこの一年間の活動報告から始め、当事者による体験談とその分析、同性パートナーシップ制度実現を目指すなかにおいて現行法で何ができるのか、そして、われわれがロビー活動の一環として各政党に提出した要望書についてお話したいと思います。

 

さっそくですが、そもそも日本における同性パートナーシップは法的にどのような現状にあるのか簡単に説明します。

 

日本国憲法第24条1項において、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」とあります。つまり日本国憲法では、同性間の婚姻が想定されていません。ただしこの条文が同性間の婚姻を禁止しているかどうかは議論があるところで、ここでは憲法上想定されていないという点を押さえていただければと思います。

 

日本では、異性間の事実婚カップルについては個別法に基づき、たとえば年金などの社会保障において、異性間の婚姻カップルに準じた権利が認められています。しかし同性間の事実婚カップルには、異性間の事実婚カップルのようには権利が認められていません。この点については国連の自由権規約委員会や社会権規約委員会から日本政府に対して指摘がされています。

 

その他、現在、同性間パートナーシップはさまざまな具体的問題に直面しています。いくつか紹介すると、

 

住居・家族向けサービス   ― 公営住宅、住宅ローン、家族手当、忌引、福利厚生
税金・健保・年金・生命保険 ― 確定申告の扶養家族、第3号被保険者、遺族年金、生命保険
在留資格・医療・介護    ― 配偶者査証、医療同意見、介護サービス、介護休暇
相続・祭祀         ― 遺産分割、相続税、臓器提供意思確認、墳墓

 

……等々、たくさんの具体的な不利益を被っているわけです。

 

こうした現状において、現行法のもとでどのような対処が考えられるかと言うと、たとえば(1)成年養子縁組の転用(法的親子関係の創設による家族形成)をして、パートナー間で親子関係を築く方法があります。しかしこのような転用は本来の趣旨から外れる使い方のため、トラブルが生じた際に他の親族から養子縁組の無効確認が提起されることもありえるため、安定した関係とは言えません。さらに生命保険を利用した保険金詐欺や戸籍の問題なども抱えています。

 

あるいは法律の専門家である公証人による(2)公正証書の作成があります。「共同生活と遺言に関する合意書」を公正証書として作成してもらうことで、お互いの財産の権利関係や相続、万が一のときの医療行為への同意などをあらかじめ公文書にしておくことができます。こうした公正証書を専門的に仲介する法律事務所もあり、利用件数は年々増加しているようです。ただしこの公正証書も社会生活の上で、とくに第三者に対してどれだけの効力を持つかはあいまいですし、極端に言えば無視することも可能なため、制度的なパートナーシップの法的保障とは大きな隔たりがあります。

 

 

同性カップルからの声

 

上杉 運営委員の上杉崇子です。当団体は今月5月より同性間カップルから体験談を募集しました。そのなかから抜粋してご紹介し、当事者の皆さんが具体的にどのような困難を抱えているかを知っていただきたいと思います。

●Aさん

 

私はレズビアンの社会人です。現在はパートナーと一緒に暮しておりません。過去には同性パートナーと共に暮した時期が数年ございました。彼女の進学をきっかけに別居を決意し、一年後に彼女は精神病を発病しました。医師からは彼女の一人暮らしが原因のひとつとなった可能性があると言われました。私も仕事をしているなかで彼女と次第に距離が離れておりましたが、現実には、彼女が発病し入院が決まった時にも、私には詳細な連絡も無く、一週間後にようやく連絡がとれた状態でした。

 

5年間付き合っているパートナーでも傍から見れば単なる友達でしか捉えられないのです。当時は彼女とは真剣に付き合っていましたし、同性婚という形がとれれば迷わず選択していたと思います。

その彼女とはいまも付き合っています。17年の付き合いなります。彼女が発病しているため、別居はいまも続いていますが、同性婚で社会的に認知されればすぐにでも手続きをして胸を張って彼女を支えたいです。

 

他国でも同性婚に対する関心も高まっておりますが、日本では議論すら起こっていないように思います。憲法改正云々ありますが、ぜひ、セクシャルマイノリティに関しても国民的議論が積極的に行われることを望んでおります。

 

 

●牧村朝子さん

 

フランス国籍女性と、日本国籍女性のカップルです。

 

私たちは日本で出会って愛し合い、予定日のない婚約を結びました。やがて、日本の企業で働くフランス人の彼女が、フランスの企業からヘッドハンティングされました。日本では他人同士でしかいられない私たちを、フランス企業はカップルとして認めてくれました。なんと二人分の引っ越し代を支給した上、婦妻で日本へ里帰りする航空券まで毎年支給してくれるといいます。

 

その破格の条件を聞いて私は、あることを思い出しました。ちょうどその頃、友人の同性カップルが海外転勤を理由に日本企業からの誘いを断っていたのです。

 

日本では、同性カップルに法的パートナー関係を認めていません。そのためどちらかに転勤があった場合、基本的には家族扱いしてもらえません。つまり、引き裂かれるか、辞めるか、もしくは周囲に隠しながら自費での引っ越しを強いられることになります。そのような悪条件であるにも関わらず、基本的には同性カップルは企業にとって独身者に見えますから、転勤辞令の対象とされやすいのです。

 

友人は語学堪能、華々しいキャリアもあり、また海外での仕事も志望していました。しかしせっかくの海外転勤のチャンスを断って、こう言っていました。「日本企業は私たちの関係を認めないどころか、相談すらできる雰囲気でなない。自分の働く業界ではどうしても、カムアウトが仕事に差し支える恐れがある。自分たちのセクシャリティは隠さざるを得ない」と。結局その日本企業は、同性カップルのパートナー関係を認めないせいで、貴重な人材を失ったのだと思います。いつか日本を後にすると、二人は言っていました。

 

フランス、そして日本。大切な彼女とこれから暮していくことを考えたとき、私は、日本にいては彼女のことを守りきれないのではないかと思いました。二人で働き、二人で税金を納め、二人で家を建て、二人で病や老いと向き合い、二人でトラブルにも対処し、そして二人でお墓に入る。そういったことを考えたとき、日本よりもやはりフランスの方がより確実な人生設計ができると思ったのです。

 

やがて二人でフランスに渡り、2012年10月、フランスのパートナーシップ方に基づいた関係を結びました。その後、同国で同性婚が法制化されたため、2013年9月に婚姻成立予定です。しかし同性婚法成立までは、結婚可能な男女カップルに比べて、どうしても配偶者としての滞在許可を得ることが難しいという現実がありました。そのため私たちは、たびたび引き裂かれるような思いをしてきました。

 

たとえばフランスのパートナーシップ法では、外国人配偶者の滞在許可が許されるわけではありません。日本人である私は滞在許可が下りず、ビザも期限日を迎え、またそれまでに日本でもフランスでも同性婚法制化が間に合いませんでした。私たちカップルはあらゆる手段を尽くしましたが、結局、引き離されざるを得ませんでした。すでに法的パートナーであるにも関わらず、です。結婚さえできれば、と、歯噛みする思いでした。「それが法律だからね」と、パリの市役所の担当者がさらりと流していたことを思い出します。(*現在のフランスは当時と違い、既に同性婚が法制化されています。そのため私たちのように、結婚を選ぶことができず引き離される同性パートナー関係のカップルはいなくなるでしょう)

 

加えて結婚手続き中、日本側の市役所と法務省のやりとりにおいて、結婚に必要となる「婚姻要件具備証明書」の発行を渋られたこともありました。日本の法務省では2009年から、海外で同性婚する日本国籍者にも婚姻要件具備証明書を発行するよう通達が来ています。しかし、フランスでの同性婚法制化を担当の方がまだご存じなかったようです。結局、当該書類を受け取るには時間切れになってしまい、別の手段をもって対応しました。

 

また、フランスと日本の制度の違いのなかで理不尽な思いもしました。フランス側からは「婚姻成立後3カ月以内に、日本側へ報告的婚姻届を出してくださいね」と言われます。しかし日本側の役所において、その報告的婚姻届は、同性婚であることを理由に、まず受理してもらえません。不受理になるであろう書類をわざわざ出すのかと思うと、なんとも言えない虚無感がありました。

 

今後、フランスからは婚姻成立後に配偶者ビザが下りることになります。故郷・日本の法律で認められないにしても、やはり、もうビザ切れで引き離される心配がないというのは嬉しいものです。しかし、日本で7年暮らし、日本での生活を愛するフランス人の妻は、「日本に帰りたい」と寂しそうに言っていました。日本ではビザがとれる確実性がないどころか、そもそも婚姻すらできません。現状の制度下において、私の力では彼女に配偶者ビザを約束し、彼女が望む日本での生活を再開させてあげることができないのです。

 

偽装結婚対策と言われれば仕方がありません。しかし、異性間で偽装結婚があるまま結婚制度が運用されているにも関わらず、同性婚には偽装結婚を理由に結婚制度を作らないというならば、それは筋が通らない話ではないでしょうか。

 

フランスにおいて同性婚法は、「みんなのための結婚」の愛称で呼ばれています。同性婚は同性愛者の為だけではないのです。同性婚は、異性愛者、両性愛者、汎性愛者、非性愛者、またどこにもあてはまらない方、あらゆるセクシャリティの人々が、それぞれの愛のかたちを祝福しあえる社会への前進なのです。同性婚は、誰が好む・好まざるに関わらず、すでに同性カップルに育てられている子供が、同性カップルをとりまく親が、家族が、友人が、もうこれ以上理不尽に引き離される人の悲しみや、制度で家族を守れない無力感に苛まれずに済む社会への前進です。

 

社会制度というものが、すべての人にとって完璧であることはありえないでしょう。しかし、すこしでも前を目指すために、すこしでも取りこぼされる人が減るように、私は日本においても、同性婚、ひいてはパートナーシップ法の成立を願ってやみません。

 

 

 

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