LGBT旅行記――ニューヨークで出会ったたくさんの支援

「自由の国アメリカ」のLGBT事情

 

2013年はアメリカのLGBT史が大きく前進した1年だった。

 

6月24日にニューヨーク州での同性婚制定。直後の26日にアメリカ最高裁が、連邦法における「結婚」を男女間に限ると規定した「結婚防衛法(DOMA)」を、違憲とする判決を下したことは記憶にも新しい。

 

LGBT(同性愛者や性同一性障害者などの性的少数者)の人権活動が熱を帯びるアメリカ。「日本の10年先」を考えるため、学生団体LGBT Youth JapanでニューヨークのLGBT支援団体を巡るスタディーツアーを実施した。

 

現在アメリカでは、LGBT人権について熱く議論が交わされているが、ヨーロッパなどと比べると保守的な国である。2013年12月現在、マサチューセッツ州を初めとした16州は同性婚を制定しているが、34州は州法で禁止されている。その現状を変えようとニューヨーク市内だけでも300以上ものLGBTに関する団体があると言われている。

 

2週間の滞在の中で約20のLGBT団体を巡った今回の旅から、これから日本でできることを考える。

 

 

LGBTサポートの拠点、The Center

 

1983年に設立したThe CenterはLGBTのためのコミュニティースペース。正面にはLGBTを象徴するレインボーフラッグが大きく掲げられている。毎日複数のイベントやミーティングが行われており、年間30万人ほどが来館する。また、選挙の投票所になるなど、LGBTだけではなく地域のコミュニティースペースとしても広く活用されている。

 

 

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所長は言う。「The Centerが設立した頃は、HIV/エイズが『ゲイの病だ』と誤解されていた時期でもあって、LGBTに対する差別偏見が非常に強かった。でもだからこそ、象徴となる場所が必要だった。LGBTの人にとってはサポートの拠点となり、LGBTでない人にとっては可視化の拠点となるような場所が」

 

 

LGBT×若者サポート:10代LGBTのためのサポート団体

 

日本人口の約5.2%(*1)を占めると言われるLGBT。この数字は40人クラスであれば、約2名はLGBTであるということになる。セクシュアリティを自認する時期はさまざまであるが、多くは幼少期〜第二次性徴期に自身のセクシュアリティを自覚するという。しかし、調査によると93%(*2)が教育現場でLGBTに対し不適切な情報提供を受けており、いまだ若者に対するLGBTサポートは行き届いているとは言えない。

 

(*1)2012年 電通ダイバーシティ・ラボ調べ(約70,000 人にスクリーニング調査を実施)

 

(*2)教育現場における同性愛に関する情報提供に関して―Reach Online 2005 調査結果より―

 

アメリカに行って驚いたことは、若年層のLGBTに対してもサポートが充実していること。

 

「ニューヨークの高校の多くはGay Straight Alliance(LGBTとその支援者が共にLGBTのサポートや啓発活動を行うための学生クラブ。略称はGSA)があるよ」とニューヨーク市の高校生は話す。

 

そんな10代のLGBT支援をする団体の一つが、Pride for Youth。

 

1995年に設立したこの団体は13歳〜19歳のLGBTA(LGBTとその支援者)に向けたネットワーキングや知識提供、カウンセリング、STI検査などを無料で提供する。

 

毎週金曜夜に行われる「コーヒーハウス」というパーティーに潜入した。足を踏み入れるとそこは「クラブか!?」と驚く音楽と、踊りまくるティーネージャーたちと、無料のソフトドリンクやお菓子。親の同意の元、自宅近くまでの送迎も行っている。

 

開催の4時間中2時間程度は学生が主体で行うカミングアウトについての講演やGSAの立ち上げ方などテーマに沿ったイベントが開かれ、楽しくLGBTについて学び、つながる機会を提供している。

 

 

LGBT×若者サポート:大学が行うLGBT学生支援

 

ニューヨーク大学には大学が運営するLGBT学生センターがある。1992年に設立した同センターはアメリカで2番目に古い学校設置のLGBTセンターである。常勤の職員が2名と学生アルバイトで運営されるそのセンターはキャンパス内に事務所と、学生ラウンジを併設したセンターを持ち、ニューヨーク大学の学生は誰でもいつでも利用可能。

 

 

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メーリングリストには卒業生や教職員も含め約3000名が登録しており、イベント企画、講演会、相談事業、サークルサポート、SAFEZONEトレーニングなどを行う。その設立には学生が自ら自分たちでサークルを組織することから始め、大学にLGBT学生サポートのニーズを訴えたことが発端であるとのこと。

 

写真は、飛び入りで新入生歓迎イベントに参加させて頂いたもの。新入生の一人は「自分の通う大学にオフィシャルにLGBTセンターがあることは安心につながる」と言う。

 

また、コロンビア大学には多文化支援のプログラムの一分野としてLGBT学生への支援が行われている。LGBT学生以外にも、ラテン系、女性、黒人、ネイティブ・アメリカンなどさまざまな学内グループを支援しており、LGBTであることを各自のもつさまざまなアイデンティティの中のひとつとしてサポートを行う。

 

日本の大学でLGBTのサークルを学生が運営している学校もあるが、大学が設置・運営している例はない。

 

 

LGBT×若者サポート:LGBTフレンドリーな公立高校

 

LGBTにとってのセーフスペースを謳う公立高校がHarvey Milk High Schoolだ。1985年からLGBTの若者支援を行う団体が運営しており、2003年に正式に公立高校に認定した。学校名は、1997年にゲイであることをカミングアウトしサンフランシスコ市の評議委員会に当選した、アメリカ最初の公職者の名前に由来している。

 

一歩校内に踏み込むと、至るところにLGBTの象徴である6色のレインボーが掲げられており、すべての生徒が自分らしい恰好で登校していた。

 

約100名の生徒が通い、同施設でHetrick-Martin InstituteというNPOが放課後にもプログラムを提供。LGBTのホームレスや低所得者のために食事やシャワーを提供し、多くのLGBTにとって放課後も居場所となっている。

 

「LGBTである」ことを理由として起るいじめはいまだ多いという。これは日本でも同じことだ。しかしながら実は、「LGBTだ」と言っていじめられる子どもの中には実際はLGBTでない生徒も非常に多い。

 

 

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実際に「LGBTである」といじめられ、アメリカで2011年に自死した子どもは9名。そのうち2名はLGBTの生徒ではなかった。LGBTであってもなくても、LGBTを揶揄する言葉は不登校・退学・死に繋がる。LGBTの生徒にとってのセーフスペースである学校はLGBTでない生徒にとっても、安心して通える学校なのである。

 

 

LGBT×若者サポート:LGBT若者と自死の関係

 

LGBTの若者支援を語る際に、決して無視して通れないのが自殺対策である。

 

そのサポートを行うアメリカ最大の団体がThe Trevor Project。1998年に設立されたこの団体はアカデミー賞も受賞した映画「TREVOR」が発端となっている。その映画で描かれたゲイの男の子が大反響を呼んだが、彼が画中に描かれた自死祈念を相談できるホットラインが当時は存在せず、それをつくろうと奮闘したのが設立のきっかけだ。

 

 

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The Trevor Projectは 24時間の無料電話相談、生徒/教員へ自死対策に関する出張授業、SNSでのネットワーキングを主に行っている。いまでは年間約36600件の相談電話を受けており、年々その数は右肩上がりだ。驚くべきは、そのすべてのプログラムが500名以上のボランティア中心で運営されていることである。事務所及びWeb上で毎月5回のボランティア説明会を行い、プログラムごとに丁寧な育成プログラムを用意することでこれが可能となっている。

 

The Trevor Projectの研究によると、身近に支援してくれる人が1人いるだけで、自死のリスクは30%も軽減されるとのこと。このように身の回りで支援を行える人を育成することこそがThe Trevor Projectの狙いだ。

 

日本でも、性別や同性愛に関わる相談を専門的に受ける24時間無料電話相談は2012年より実施されている。よりそいホットライン(http://279338.jp/yorisoi/index.html

 

 

 

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