円高は経済政策の失敗が原因だ  

政府と日銀が行うべきこと

 

日銀の政策変更には、急速に進む円高による経済のリスク要因の高まりに加え、政府の為替介入や日銀法改正の動きといった影響も背景にあるだろう。

 

政策金利を0~0.1%にうながすという措置は、政府が為替介入を断続的に行い、円を市中に放置しつづけることで、0.1%を有意に下回る水準にとどめる圧力にもなる。今後「実質ゼロ金利政策」ではなく、真のゼロ金利政策の採用に踏み切るべきだ。

 

そして時間軸の明確化は、日銀法改正が成立すれば「物価安定の理解」ではなく、「物価安定の目標」としてより強固なものになり、政府が目標を決め、日銀が手段の独立性を有するという、「手段と目標の独立性の所在」を明確にすることも可能となる。

 

さらに長期国債のみならず、社債やCP、ETF、J-REITといった資産の買取りを進める際には、日銀が購入した資産の価値が目減りした場合に政府が保証するという仕組みが必要だろう。これらはすべて政府のリーダーシップとバックアップが必要であることを意味している。

 

リーマン・ショック後に各国と比較して日本経済の立ち直りが遅く、円高となり、デフレがつづいているのは、危機に際して積極的な金融緩和を行わなかったことが大きく影響している。つまり、経済政策の失敗が現在の状況をつくりだしたのである。

 

今回の政策決定で、遅ればせながら積極的な金融緩和を行うための「道具」は整ったともいえるのかもしれないが、だとすれば、政府と日銀が共同して「道具」を有効かつ十分に利用することこそが、円高とデフレを止めるために必要だろう。

 

 

推薦図書

 

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安達誠司氏の著作では、為替レートと物価との関係に関する記述がたびたび登場するが、本書は過去の著作で部分的に提示されていた考え方を、「円の足枷」というかたちで統一的に論じていることが特色である。

 

為替レートと金融政策との関係について実証分析を交えた明確な議論と、世界金融危機以前の国際金融状況についての考察は、世界金融危機後の世界経済、さらに日本経済の問題点を考える上でいまだ示唆に富む。現在の局面こそ再読の意義がある書籍のひとつだろう。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.273 

・山本貴光「語学は裏切らない――言語を学び直す5冊」
・片岡栄美「趣味の社会学――文化・階層・ジェンダー」
・栗田佳泰「リベラリズムと憲法の現在(いま)と未来」
・渡邉琢「介助者の当事者研究のきざし」
・松田太希「あらためて、暴力の社会哲学へ――暴力性への自覚から生まれる希望」
・穂鷹知美「スイスの職業教育――中卒ではじまる職業訓練と高等教育の役割」