世代間格差は「解雇規制の緩和」では解消されない

冷静な議論が必要

 

ここまでの内容を簡潔にまとめると、以下のようになります。まず一般的に主張される見解は以下のような構造ですね。

 

 

解雇規制の緩和

企業が年長者を解雇

若者の雇用増と世代間格差の解消・軽減

 

 

しかしこれまで説明してきたように、一つ目の矢印の関係も二つ目の矢印の関係もどちらも成立しないと思われます。つまり解雇規制を緩和しても世代間格差は解消されないのです。一方で私が説明した対策は以下のような構造を持っていて、実効性を持つと考えています。

 

 

早期退職に対する国からの手当

年長者が離職

企業促進→若者の雇用増と世代間格差の解消・軽減←雇用形態の多様化

 

 

これまで解雇規制の緩和は世代間格差の解決策とはならないと主張してきましたが、これは解雇規制が今のままで全く手をつけなくて良いという意味ではありません。

 

既存の長期雇用契約に関して重要なのは、解雇規制の緩和ではなく、規制の合理化と明確化です。例えば整理解雇の四要素の一つ目は「人員整理の必要性が本当にあるのか」というものでした。しかし企業経営の経験を持たない裁判官が「あの解雇は必要だが、この解雇は不要である」などと適切に判断出来るものなのでしょうか。

 

企業の判断が裁判官により認められるか否かが不明確であることは様々な弊害をもたらします。例えば紛争になることを恐れる経営者が判断を先送りするかもしれませんし、それにより結果として企業が倒産してしまうかもしれません。また裁判をしてみなければ結果が分からないという状況では、紛争が増加することも予想されます。規制の内容自体ももちろん重要ですが、ルールが明確に定まっていることで裁判所の判断が予想しやすいこと(予見可能性)も非常に重要なのです。

 

労働問題には、非常に多くの利害関係者が絡んでいるために、合意形成が難しいという側面があります。専門家の間の議論をさらに深めていくためにも、私はこれまで部分的にしか行われてこなかった労働法学者と経済学者のさらなる共同作業が重要だと考えています。

 

これは最近始めたばかりなのですが、私は労働法学者の野川忍さんと共同で、労働問題と政策について真摯に議論し、合意できる範囲を少しずつ広げていくこと、また合意できない論点があればその相違点と理由を明確にすることを目的としたBlogを開設しました(http://nogawa-ando.blogspot.com/)。そのコメント欄に「このような論点について話し合ってほしい」とか「安藤の議論は、このような問題を見落としている」等のご意見を頂ければ、できる限りお応えしていきたいと思います。これからの労使関係のあり方を、皆で一緒に考えていきましょう。

 

 

 

 

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