次期日銀総裁人事と「参議院の壁」

【シノドスに参加しよう!】

▶メールマガジン「αシノドス」

 https://synodos.jp/a-synodos

▶セミナー「シノドス・サークル」

 https://synodos.jp/article/20937

▶ファンクラブ「シノドス・ソーシャル」

 https://camp-fire.jp/projects/view/14015

「次期総裁、副総裁は出身母体は問わず、デフレ脱却に向け、金融政策に関する私の考え方を理解し、確固たる決意と能力で課題に取り組む人を選ぶ」

 

次期日銀総裁人事について、こう安倍晋三首相は2月6日参議院本会議で発言した(『朝日新聞』13年2月7日。)。

 

白川方明日銀総裁は2月5日に4月8日の任期満了を待たずに3月19日に退任する意向を示した。3月19日には二人の日銀副総裁の任期が満了するので「総裁、副総裁の新体制が同時にスタートできる」(『朝日新聞』13年2月6日)ようにするためというのが理由であった。

 

新しい日銀総裁の任命時期が早まったわけである。安倍首相は金融緩和政策を進める人物を新総裁に起用することを望んでいる。しかし、首相が意中の人を総裁に起用できるのか不透明感が増している。理由は「参議院の壁」にある。

 

日銀総裁人事については前回の寄稿「安倍内閣の経済政策」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakaharukata/20130119-00023112/)でも簡単に論じた。本稿ではその後の展開もふまえてさらに詳述したい。日銀総裁人事の重要性に触れた上で、総裁人事の不確定要因について解説する。その上で、首相がもっとも確実に自らの希望する人物を日銀総裁に起用できる方法について述べたい。

 

 

日銀総裁人事の重要性

 

安倍首相は「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略」を経済政策の柱として掲げている。

 

三つの政策のうち恐らく現在もっとも注目を集めているのが金融政策であろう。近年、日本銀行はあきらかに金融緩和に消極的であり、これがデフレが持続した大きな要因であった。一層の金融緩和を安倍内閣が日銀に求めるのは妥当である。

 

内閣発足後、安倍首相は、政府と日本銀行の連携を強化する仕組みを作ることを指示、財務省と日銀の間で折衝が行われ、1月22日に安倍内閣と日本銀行は共同声明を発表した。この中に、「日銀は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。」ことが盛り込まれた。

 

2012年2月の金融政策決定会合以降、日本銀行は「中長期的な物価安定のめど」を1%としていた。したがって、以前よりは物価を上昇させることについて積極的な姿勢を見せたと言える。しかし、22日の金融政策決定会合で決まった金融政策の内容は「無期限緩和」とは言うものの、従来より大幅な緩和に踏み込むものではなかった。

 

だが、その後も円安と株高は進んできた。背景に次期日銀総裁人事への期待があることは間違いない。安倍首相が金融緩和に積極的な人物を起用することを先取りしているということである。

 

今後の金融政策は次期総裁に委ねられる。日本経済を回復させるのみならず、市場の期待に応える上でも総裁人事はとても重要である。景気回復が政権浮揚に繋がることを考えれば、総裁人事は安倍政権の行方を左右すると言っても過言ではない。

 

すでに、新聞紙上などでは数多くの人物が次期日銀総裁候補としてあげられている。武藤敏郎大和総研理事長、勝栄二郎前財務事務次官、丹呉泰建元財務事務次官、黒田東彦アジア銀行総裁、渡辺博史国際協力銀行副総裁、岩田一政日本経済研究センター理事長、伊藤隆敏東大教授、竹中平蔵慶応大教授、岩田規久男学習院大教授などである。

 

政権内部でも人事についてはいろいろな意見があるだろう。安倍首相は次期総裁の出身母体にはこだわらない考えを示す一方「国際社会に発信できる能力も重要」(『毎日新聞』13年2月8日)と述べている。麻生太郎副総理・財務大臣は次期総裁の条件として英語力、国際金融の知識を挙げた上、「組織を知らない学者はどうか」と発言している(『FACTA』2月号。)。安倍内閣が本当に以上の条件によると考えた場合、有力候補を絞り込むことは可能となろう。ここでは政権内の考えについてはこれ以上詮索しない。ただ、ひとつだけ注意書きを加えておこう。竹中平蔵氏は学者として見なされがちである。だが、竹中氏は小泉内閣時代に経済財政担当大臣として内閣府を動かし、組織運営能力を十二分に示したということである。

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

・大賀祐樹「こんな「リベラル」が日本にいてくれたらいいのに」
・結城康博「こうすれば介護人材不足は解決する」
・松浦直毅「学び直しの5冊〈アメリカ〉」
・山岸倫子「困窮者を支援するという仕事」
・出井康博「「留学生ビジネス」の実態――“オールジャパン”で密かに進む「人身売買」」
・穂鷹知美「ヨーロッパのシェアリングエコノミー――モビリティと地域社会に浸透するシェアリング」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(9)――「シンクタンク2005年・日本」第一安倍政権崩壊後」