サバイバルのための情報紙「J-one」刊行

4駆車の屋根にソーラーパネルを載せた自前の「ソーラーカー」で、福島県内の被災地を駆る取材者がいる。神奈川県在住のすぎたカズトさん。

 

27歳の時にネパールを訪れ、南アジア文化に触れたことをきっかけに、その後何度もインドやネパールを訪問。現地の映画に魅せられ、日本で唯一のボリウッド映画(ヒンディー語インド映画)専門誌「ナマステ・ボリウッド」を主宰。福島県会津本郷町に5年ほど、そして岩手にも住んでいた経験があり、震災後、福島を中心に被災地の支援活動を行った。このたび、主に福島の人々を紹介する「J-one」http://www.j-one21.jp/ を発刊した。

 

「J-one」 は一部500円で、第3号まで発売。第1号では被災地で支援活動をしたインドやパキスタン、多国籍人たちの声や、NGO難民を助ける会の活動の様子、第2号は音楽から世界へ祈りを伝えるウクライナのナターシャ・グジーさん、エジプトの琵琶奏者ムスタファ・サイファさん、第3号は南相馬市の詩人若松丈太郎さんや、震災後の福島の高校生の叫びを演じる相馬高校放送局のメンバーと作品「今伝えたいこと(仮)」などを特集している。すぎたさんが今回「J-one」を発刊したきっかけや目的などを聞いた。(聞き手・構成/藍原寛子)

 

 

福島の被災地の声を伝える「J-one」を発刊したすぎたさん

福島の被災地の声を伝える「J-one」を発刊したすぎたさん

 

 

―― 3.11の当日はどこにいましたか。

 

あの日、私はアジアフォーカス・福岡国際映画祭の取材で、久しぶりに九州に行っていました。その日の午前中、事務局の人と、あるインドの映画の話をしていました。その映画は、インドの理系のトップ校の学生の話で、テーマがイノベーション。インドは科学やITが発展し、日本以上の受験競争になっている。しかし同時に停電も起きるというような現状がある。ある嵐の晩、その学校が水浸しで停電にもなった。妊娠していた女性に陣痛が起き、大学に残った学生たちが何とかして無事に赤ちゃんを取り上げようとする。キャンパス内の車のバッテリーをかき集め、インターネットで医師から遠隔指示を仰ぎ、ネット中継する。ところが難産で、掃除機を見つけてきて赤ちゃんを吸引出産する、といった内容。

 

今のインドはイノベーションで世界に躍進する原動力がある一方、まだまだ不便なところがある。災害という不便の極致で、人はイノベーションをどう活用し、生き延びていくのか。そういったテーマを描いていました。映画の事務局の人と「日本はいきなりオール電化で便利になると、それ以前の生活を忘れてしまう。ところがインドは今でも停電するので、煮炊き用のストーブも使うし、それがダメならかまども使う。不便さを忘れない環境にある」というような話をしていました。その矢先、この大震災が起きたのです。

 

 

―― その後はどうしましたか。

 

その晩は広島の宿に移って、一晩中、ネットとテレビで何が起きているのかをチェックしました。翌12日、朝10時台ののぞみのチケットが取れ、自宅に戻りました。車内では、卒業旅行を取りやめた女子学生が乗っていましたが、大きなスーツケースを棚に乗せようとしていました。新幹線は高速走行なので、地震が発生して急ブレーキをかけたら、スーツケースが飛んできて凶器になる。「棚に乗せないで下に置いて」とか、「靴を脱いでリラックスしたら」とかアドバイスしました。

 

その時ふと、アジアでのバス旅行の体験を思い出しました。ボロボロのバスで断崖を走っていく。外国人の私は荷台に乗せられ、荷台には地元の人がお祭りで食べる子ヒツジも積んでいる。私は暴れる子ヒツジを手で押さえ、突然伸びてくる木の枝を手でよけて…。バスに乗るのも危険予知が必要でした。そのシーンを思い出したとき、「今、新幹線に乗っている女子学生たちはずっと安全な生活を送っているから、危険予知が鈍っているのかもしれない。そもそも何が危険かが分からないのかも。不測の事態を想像することを伝えていく必要があるのではないか」と思いました。それが発刊のきっかけです。

 

 

被災地のレポート満載の「J-one」

被災地のレポート満載の「J-one」

 

 

 

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