日本災害復興学会エクスカーション ―― 飯舘村コース

日本災害復興学会(10月7,8日、福島市・コラッセふくしま)開催を前に10月6日、学会参加者を対象として、福島県双葉郡の「川内村」と「飯舘村・相馬・南相馬」の2コースに分かれてエクスカーション(被災地視察)が開催され、両コース合わせて約50人が参加した。

 

「川内村」コースは、郡山市に設置された富岡町の仮設住宅の視察と、自治会や福祉関係者らからのレクチャーのほか、帰村宣言をした川内村の村内仮設住宅や除染現場等を視察した。「飯舘村・相馬・南相馬」コースは、福島市飯野支所内にある飯舘村役場支所での職員からのレクチャーに始まり、飯舘村内に移動してパトロール隊の詰所、村内の放射線モニタリングポスト等の現状視察、相馬市では津波被害を受けた松川浦の旅館主や、飯舘村の仮設住宅の自治会管理人などから話を聞いた。このうち、「飯舘村・相馬・南相馬」コースの内容をレポートする。(取材・構成/藍原寛子)

 

震災とともに「世帯分離」、世帯数は1.7倍に

 

当日の参加者は26人。午前9時30分、集合場所のJR福島駅西口からバスに乗り込んだ。最初の目的地は福島市役所飯野町支所に設けられた飯舘村役場支所。現地到着までの約30分間、移動車中で、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター地域復興支援担当の佐藤彰彦特任助教から飯舘村の現状について説明があった。

 

 

バスの中で震災後の飯舘村の様子を説明する渡辺守男さん

バスの中で震災後の飯舘村の様子を説明する渡辺守男さん

 

飯舘村の震災前の人口は約6600人・1700世帯。震災後の昨年4月に計画的避難区域となり、県内(村外)に約6100人、県外に約500人が避難した。約9割が飯舘村から1時間以内の圏域で避難生活を送る。仮設住宅や借上げ住宅(みなし仮設)で暮らす住民が多く、親世代、子世代の家族の住まいが別々となり、「世帯分離」も増えたため、震災後は1.7倍の約2600~3000世帯になっている。

 

 

「までいな村」 飯舘村の現状

 

役場支所では、総務課の松下義光さんから、避難の現状、飯舘村の除染や復興の現状について、震災後に作った村政要覧を使って説明があった。2005(平成17)年、村独自のスローライフを盛り込んだ総合振興計画「までいな村づくり」を進めてきた状況、合併しない村づくりを選んだ経緯、震災前からコミュニティ重視の村づくりに取り組んできた様子などの説明があった。

 

 

松下義光さん 飯舘村役場総務課

松下義光さん 飯舘村役場総務課

 

 

飯舘村の「までい」は、震災も契機となり、県内外に知られることになったが、地元の言葉で「手間暇惜しまず、丁寧に、心根の良い」の意味で、飯舘村流・スローライフの実現を目指す象徴的な言葉だ。松下さんら村職員も、までいの理念である「コミュニティ、家族、環境、エコ、効率一辺倒からの脱却」を実現すべく取り組んできた矢先だった。

 

「こうして震災前のことを説明していると、どうしても悲しくなってしまいますね」。松下さんがふと漏らした言葉に、飯舘村が失ったものと、現在も山積する課題の大きさが感じられた。

 

ふたたびバスに乗り込み、いよいよ飯舘村に入る。飯舘村役場や、8時間・3交代・24時間体制で村に入る不審者などを監視する住民による見守り隊の拠点になっている「いいたて活性化センター」を視察。両施設の前に設置された放射線モニタリングポストを見て回り、同センター前で元・小宮行政区長の渡辺守男さんの話を伺う。

 

 

福島市役所飯野町支所に設けられた飯舘村役場飯野支所

福島市役所飯野町支所に設けられた飯舘村役場飯野支所

 

 

村の見守り隊が24時間体制で監視

 

原発事故に伴い、警戒区域となった地域内の民家などでは窃盗事件の頻発が問題になっている。こうした犯罪を未然に防ぎ、また不審者を発見するため、24時間体制で村の巡回監視をしているのが、村民による見守り隊。

 

国の緊急対策事業による「臨時職員」の扱いで、オレンジのベストと帽子、腕章を着用、通行証を携帯、車にも通行証を貼って巡回する。不審者の発見などの成果もあげているという。男性だけでなく女性も活動するが、女性は夜9時まで。車で1時間以上かかる相馬市から通って活動している村民もいるという。勤務時間8時間のうち、2時間巡回して戻るサイクルで、放射線量の高い長泥(ながどろ)、蕨平(わらびだいら)地区などは、放射線の影響を考慮し、4日に1回の巡回になっている。支払われている手当は1日7000円。今年は危険手当1000円がプラスされた。

 

診療所のいいたてクリニックは診療を休止しているが、特別養護老人ホームいいたてホームは、放射線量の低さや高齢者の心身に与えるリスクなどを考慮し、特例措置で運営を継続、約100人が滞在し続けている。そうした建物を遠方に見ながらふたたびバスへ。車中から高線量区域の長泥の帰宅困難地区バリケードの様子を視察した。

 

 

 

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