ことばの仕事

言葉の仕事にはそれぞれ、機能する時間差があるように思います。

 

最も速いのは報道やジャーナリズムであり、何事が起きているのかを情報として伝えることがその第一義的な役割です。次にルポタージュやノンフィクション、報道の大きな枠組みから取りこぼされた細部を伝える言葉がやってきます。

 

作家の役割は、最後にやってきます。断絶からこぼれ落ちてきたかけらをひろい、無謀にも全体像を描こうとすること。人の経験や生の営みは、調査票やアンケート用紙に書ききることはできません。

 

「地獄」の風景が目の前に存在しているにもかかわらず、その地続きに頑丈な「日常」があります。それらを行き来していると、世界には断絶があるような感覚におそわれます。

 

2011年3月11日の震災が起きてからというもの、福島で暮らす人たちはみな、焼き切れるような感覚の中で走り続けてきたように思います。「あの日」は、いろんなことがありました。

 

浪江町のある女性が、手記を残しています。彼女は原発避難の途中で亡くなりました。彼女の形見である手記を貸してくれた浪江のおばあちゃんは、こう言いました。

 

「あちこち避難する途中で、弱って、死んじまったの」

 

午後2時46分、太平洋沿岸一帯に、観測史上最大の地震が襲いかかりました。M9、震度7以上の揺れ。建物は倒壊し、海岸には10メートルを超える津波が山のような大きな姿になり、山川草木すべて海へひきずりこんでいったのです。

 

沿岸は、見渡す限りの更地となり、ガレキの中には車、家、船、農機具、そして人。

 

翌朝。3月12日には、「爆発」しました。福島の海沿いの人たちは、あの出来事を「爆発」と呼びます。

 

「ばくはつした」

 

2012年の12月。原発震災の避難者が、避難先の借り上げ住宅の中で、ぼそりと口にした時。私は、何とも言えない眩暈がしました。「地獄」は、続いているんじゃないか、と。

 

(本記事は12月26日付「福島民友」記事からの転載です)

 

 

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