地域の自然エネルギーを創り出す ―― case.2 静岡

信頼関係を積み重ねる

 

静岡での取り組みからえられたものは、約150kWの太陽光パネルが生み出す電力に留まらない、地域の当事者たちの信頼関係にもとづく「コミュニティパワー」であるといえます。

 

世界風力エネルギー協会は、下記の3つのうち、少なくとも2つを満たす自然エネルギープロジェクトを「コミュニティパワー」と定義しています。

 

 

  1. 地域のステークホルダーがプロジェクトの大半もしくはすべてを所有している
  2. プロジェクトの意思決定はコミュニティに基礎をおく組織によっておこなわれる
  3. 社会的・経済的便益の多数もしくはすべては地域に分配される

 

この3つの観点から見た場合、まず、しずおか未来エネルギーのコミュニティソーラー事業の資金構成の1/4はしずおか未来エネルギーの自己資金、半分は地元金融機関からの融資、そして、残りの1/4の市民出資のうち過半数は静岡市民からの出資によるものであることから、このプロジェクトは、1の「地域オーナーシップ」を満たしています。

 

つぎに、このプロジェクトが実現するにいたるまでの無数の意思決定は、地域に基礎をおくアースライフネットワークと静岡市環境総務課から構成されるプロジェクト検討チームによっておこなわれ、その検討状況は地域の主要なステークホルダーが集う協議会の場で随時共有されてきました。このことから、このプロジェクトは、2の「地域意思決定」も満たしています。

 

そして、このプロジェクトの大半が地域のステークホルダーに所有されていることから、当然のことながらプロジェクトの経済的便益は地域に分配・還元されています。さらに、このプロジェクトは多くの人が集まる場所での設置を活かして、自然エネルギーの普及啓発と環境教育プログラムの実施を予定しており、これはつぎの世代の環境エネルギーの担い手を育成するという意味で社会的便益を生み出す可能性があります。このことから、このプロジェクトは、3の「社会的・経済的便益の地域分配」も満たしています。

 

以上のことから、しずおか未来エネルギーのコミュニティソーラー事業は正真正銘の「コミュニティパワー」であるといえます。しかし、このプロジェクトに取り組んだ当事者たちには、定義に照らし合わせた形式的な意味以上の「コミュニティパワー」=「信頼関係の積み重ね」が生まれたのではないかとわたしは考えています。

 

たとえば、この取り組みがはじまる以前から静清信用金庫とアースライフネットワークはCSR活動で協働してきたという背景があり、コミュニティソーラー事業ではCSRではなく、金融機関の本業である融資というかたちで協力関係が築かれました。これは、すでにあった信頼関係がプロジェクト実現のカギであったことを意味すると同時に、そこに新たな信頼関係が積み重ねられていることを意味します。しずおか未来エネルギーの事業報告会での静清信用金庫の担当者のコメントが、これを象徴していました。

 

「(融資に担保はとらないが)これまで積み上げてきた信頼関係こそ最大の担保であり、今回、本業で協力できることをうれしく思います」

 

本稿で見てきたように、地域のさまざまなステークホルダーが参加する自然エネルギー事業を実現させるには、複雑な現実の課題をひとつひとつ具体的に解決しながら、また、なんのためにその事業を実現させるのかを何度も問い返しながら進めていく必要があります。そういった作業は、もちろん手間もコストも時間もかかるのですが、静岡の取り組みを見てわかるように、試行錯誤した分だけ何事にも替えることのできない社会関係資本を生みだす可能性があるといえます。

 

 

関連映画

 

 

 

作品名:パワー・トゥ・ザ・ピープル ~グローバルからローカルへ~

原題:Power to the People

制作:VPRO

監督:サビーヌ・ルッベ・バッカー

配給:ユナイテッドピープル

オランダ/2012年/49分

 

この映画は、以前シノドスにもインタビューを掲載したデンマーク・サムソ島で100%自然エネルギーを実現させたソーレン・ハーマンセンをはじめとして(デンマーク・サムソ島で100%自然エネルギーを実現 ソーレン・ハーマンセン氏インタビュー  https://synodos.jp/international/1747 )、欧州各地で立ち上がりつつある地域の自然エネルギーの取り組みを追ったドキュメンタリー映画です。いまなぜ大規模集中型から小規模分散型へエネルギーと社会のあり方が変容しているのか、人々はどういった動機でこうした活動に取り組むのか、さまざまな手がかりを提示してくれる映画です。

 

なお、この映画はユナイテッドピープルの配給により自主上映会の開催が可能です。また、クラウドファンディングを利用して全国上映運動もはじまっています。

 

パワー・トゥ・ザ・ピープル

http://unitedpeople.jp/p2p/

 

パワー・トゥ・ザ・ピープル全国上映運動クラウドファンディング

http://motion-gallery.net/projects/p2p

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

・打浪文子「知的障害のある人たちと「ことば」」

・照山絢子「発達障害を文化人類学する」
・野口晃菜「こうすれば「インクルーシブ教育」はもっとよくなる」
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