災害多発の時代――国境を超えて繋がる福島とフィリピンの相互支援の輪

「台風で被害を受けたフィリピンの人を同じ被災者として支援したい」

 

昨年11月8日に、中心気圧900ヘクトパスカル、最大瞬間風速80メートルを超えた台風30号(台風ハイエン、現地名ヨランダ)がフィリピン中部を襲った。その直後、長年フィリピンの支援活動を続けてきた福島市民を中心としたグループ「シェア・ラブ・チャリティの会」(菅野良二代表)が福島県内外で募金活動を始めた。

 

同会は、1996(平成8)年にフィリピン・マニラ首都圏郊外のラグナ州ビニャン町出身のコラソン紺野さんを中心に、福島県内で募金活動を展開。同町に小学校校舎を建設したほか、99年にはハノイ西60キロのハタイ県バービー郡イエンバイ村にも小学校の校舎を建設した。震災後の2012年には、福島大学の国際交流サークル「カラーズ」の学生とともに、ビニャン町を訪問し、96年に同会の支援で建設された小学校の子どもたちと交流を深めた。

 

「現地の人々に本当に役に立つ支援を実施したい」。現在までに同会には100万円を超す募金が集まった。今後、募金を有効に、そして確実に現地の被災者に活用してもらおうと、支援物資や支援先を決めるため、12月13日から17日、代表の菅野さんが現地調査に入った。

 

筆者はこの調査に同行し、甚大な被害が出た東ビサヤ地区レイテ島のレイテ州都タクロバン市(人口約22万人)と、同島西部のオルモック市(人口約19万人)、政府やNGOなどの後方支援基地になっているセブ島セブ市を視察、自分自身も被災者でありながら、ほかの被災者の支援も同時に行っている現地の人々から話を聞いた。

 

 

フィリピンでも貧しい地域が多いビサヤ地方を直撃

 

筆者は2008年から09年、マニラ首都圏ケソン市を拠点に約1年間フィリピンに滞在していたが、この間、ビサヤ地区を数回、調査のために訪ねている。

 

調査の内容は「臓器(腎臓)売買」。1990年代後半から、フィリピン国内では違法な臓器売買の問題と、それを取り締まらない政府や警察機関の問題が表面化した。2008年にはフィリピン人と外国人の間での偽装結婚による臓器売買を含め、外国人への臓器売買を禁止する法律が成立した。それでも臓器を買い上げるブローカーは、貧しい人が多いビサヤ地区の島々や小さな漁村を「臓器村」などと呼び、常に臓器を買い上げるターゲットにしていた。「外国人や資産家といった裕福な人々に臓器を売りたい」という貧困者もいて、人権擁護や人身売買の問題に取り組むNGOは臓器売買を懸念していた。

 

台風ヨランダは、そうした貧困層の住む一帯で特に深刻な被害を出した。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)によると、12月18日から23日までの調べで、子ども500万人を含む1,410万人が被災し、6,069人が死亡、1,179人が行方不明になっている。特に台風の高波被害は甚大で、110万棟が破壊され、その約半分の55万棟が全壊し、家を失った410万人が避難生活を送っているという(台風の規模と被害状況はシノドス11月15日『フィリピンを襲った観測史上例を見ないほど猛烈な台風30号』 参加型地域社会開発研究所 フィリピン事務所長・織部資永氏のレポートで詳報。その後も被害は増えている)。

 

海岸沿いの高波被害地域は水上家屋が多かった。タクロバン南部の海岸地域では細い材木の柱でできた住まい、南部の島々ではニッパヤシの屋根に細い材木の簡単な住まいも多く、今回の台風ではひとたまりもなく吹き飛ばされてしまうという厳しい状況だった。車やトライシクル(三輪バイク)など避難のための移動手段もない、テレビやラジオ、携帯電話などの情報機器もないという人が多く、逃げる場所も手段もない人々が直撃されたのだった。

 

 

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強風で家が壊され、港から流されてきたコンテナやがれきが山積みになっている海岸地域

 

 

台風から1ヶ月後もがれきの山で暮らす人々

 

「見てください。がれきばかりで人が住んでいないように見えるでしょう。でも洗濯物があちこちに干してある。信じられないかもしれないけれど、このがれきの中で生活している人々がいるんですよ」。

 

セブ市で缶詰工場を経営する実業家で、タクロバンで支援活動をしているステファン・カスティーリョさんが、タクロバン市南部の海岸地区パロを案内しながら、説明してくれた。一帯は「家があった」場所も含めてがれきの山で、コンクリートの建物の1部分、あるいはコンクリートの柱や壁が残っているものの、どうみても安心して生活できるような環境ではない。

 

 

パロ地区の海岸地域。がれきの中で生活する人々の洗濯物が揺れている

パロ地区の海岸地域。がれきの中で生活する人々の洗濯物が揺れている

 

 

タクロバン一帯の道路は、台湾の財団によりがれき撤去が行われたという。資金を現地の住民を1日500ペソ(約1200円)で雇い、バスやジプニー(フィリピンの公共交通であるジープ型小型バス)、トライシクル、そしてトラックや大型重機が入れるように輸送経路を確保した。フィリピン政府や軍、地方行政が対処できない中、海外援助による公共事業、復旧事業として行われた。

 

ステファンさんとともに現地を案内してくれたタクロバンロータリークラブの前代表アンドリュー・ナンさんは「道路を確保しても、がれき処理が進んでいない。現段階ではすでに食料品は届いている。今はデング熱などの感染症予防、安全などの面から、住宅の再建が必要になっており、タクロバンロータリークラブでは、住民にトタンを配布する活動を始めた」と話してくれた。

 

海岸沿いに視線を伸ばすと、東ビサヤ地方最大の屋内競技場「タクロバン・コンベンションセンター」が見える。センターに寄ってみると、家を失った多くの人びとの避難所になっており、NGOなどの支援のテントもずらりと並んでいた。

 

現地の人の案内で、さらに海岸地域を回った。

 

海岸沿いの住宅のあった地域には何隻かの大型商船が打ち上げられていた。その船の間を数人の子どもたちが歩き回り、住宅になる木材を選んでいる。周辺では、使えそうな木材を使って住宅を再建しようという人々が家の再建に汗を流していた。

 

 

 

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