一度も稼働しないバターン原発はいま

炉心部から中央制御室へ

 

原発の概要説明を受けたあと、原発の建屋に入った。

 

内部は電気系統がほとんど動いておらず、見学者が来たら、薄暗い電気が付くだけ。屋外は30度を超えるフィリピンの気候。窓のない建屋に入ると、完全に蒸し風呂状態だ。団扇を使っても、生ぬるい風を感じるどころか、あおいだ空気によって湿気が首や顔にべトーっと粘りついてきて、ますます汗が噴き出てくる。

 

厚い鉄の壁と扉をいくつか抜け、いよいよ炉心部へ。

 

 

炉心部 上から シノドス

炉心部 上から

 

炉心部 横から

炉心部 横から

炉心部 燃料棒

炉心部 燃料棒

 

 

格納容器に入って、炉心を上から見下ろす構造になっている。数メートル下に、炉心部があった。燃料が装着されないままの炉心。ビニールがかかっている。

 

第一印象は「ずいぶん、小さい」。

 

周囲のコンクリートも黒ずみ、炉心自体にサビはないが、それでもホコリがついて汚れている。クレーンの操作盤はハンドルが針金で固定されていて、動かせないようになっている。そして「許可なく操作盤やクレーンを動かさないように」と書いた看板が掛かっていた。

 

 

針金で固定された 炉心のクレーン操作盤 シノドス

針金で固定された 炉心のクレーン操作盤

 

 

中央制御室に入った。

 

壁には360度、計器類、ボタン、ハンドル、監視室、資料棚などが並んでいる。建設着工の1976年から完成の1984年まで8年。東京電力福島第一原発の完成・稼働とは約10年遅れで完成したが、間違いなく70年代から80年代は最新の原子炉だったバターン原発。それが、一度も使われていない中央制御室は、サビやホコリが目立ち、そうとう老朽化している。

 

テーブルの中央に黄色い電話が一台。ダイヤルもボタンもついていない。その代わりに「National」の文字。

 

「懐かしい……」。思わずつぶやいてしまった。形は60~80年代、家にあった黒電話。そして新聞社の支社と電算部をつないでいた「漢テレさん」の直通電話と一緒だ。逆に、黒電話を知らない世代の福島の高校生は、興味津々の様子。受話器を取ろうとすると、解説の職員が言った。「これは大統領への直通電話です」。

 

すると、絶妙のタイミングで電話のベルが鳴った。懐かしい響き。「誰か出てください」と職員の男性は言い、満面の笑みで「実際には大統領室にはつながっていません」。暑さでヘトヘトになっていた見学者の間から、ドッと笑いが起きた。

 

 

 

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