「健全な好奇心」は人を生かす

「エンタメ闘病記」という新たなジャンルを切り拓いて話題の『困ってるひと』著者・大野更紗さんと、「ほぼ日刊イトイ新聞」を主宰するほか、幅広くご活躍のコピーライター・糸井重里さんの対談が実現しました。糸井さんはこの本を「ばら撒く委員会」に入ったのだそうです。その理由は……。(撮影/森本菜穂子)

 

 

新しい視点が増えた

 

糸井 僕はなんせ、この本の中の「どうしたらいいだろう? 何からしたらいいだろう?」って駅のホームで一人で立ちすくんでるシーンに反応しちゃった。「俺がほしがってたのはこれなんだよ!」って(笑)。

 

大野 そうですね、必死でした(笑)。

 

糸井 自分の頭をフル回転させて、止まって考えながら、もう次の行動を考えてるってのが、ビビッドに表れてるのがすごいなと思って、興奮しちゃったんです。僕もわりとああいうタイプなんだけど、僕にもできないなと思って。美しかったんですよ。

 

大野 いえいえいえいえ。

 

糸井 あの場面だけで、大野さんはどういう人なのかな、といろんなことが僕の中に湧いちゃって。読むのが全部面白くて。あと、隠してることが一通り伝わってくるのが面白いんですよね。

 

大野 隠してる?

 

糸井 病気から何から、「こんな大変な人いないよ!」と思うんですけど、それを伝えるためには、「これは言わない」ということがたくさんあって、そのそぎ落とした分量が並じゃない。「これなら誰にでもわかる!」と思って、僕もこれをばら撒く委員会に入った。

 

大野 それは、本当に心強いです。

 

糸井 誰かが「これをたくさん売る手伝いをしたいんだ」ってウェブ上に書いていたんだけど、僕もそういう気持ちになって、周りに「読め読め」って言うようになって。今でもやっぱり「大野さんだったらどう見るかな」っていう視点が僕の中に一個増えました。

 

大野 うわ~いやぁ、すごい!

 

糸井 真似はできないんだけどね。僕の中にその視点がなかったんですよ。それが増えたことで自分が豊かになったのが、リアルに感じられたんですよね。すみません、興奮して一気にしゃべっちゃったけど、機会があったら会いたいなと思ってました。ありがとうございます。

 

大野 いや、とんでもないです。まさか糸井さんの事務所にお邪魔して、糸井さんを見ることになろうとは。

 

糸井 大学院生としてはね(笑)。

 

大野 超ミーハーな気持ちで(笑)。

 

 

高度経済成長期のこと

 

大野 今日、糸井さんに是非お伺いしたいことがありまして。バブル体験とか、高度経済成長期体験って、私にはないんですよね。色々な方とお話しするときに、その時代がどういう時代だったのかっていうのは想像の範疇でしかなくて。

 

糸井 そのとき僕は、職も安定していなくて、どうしたものかと街を歩いてる時代ですね。

 

大野 バブルのど真ん中にいらした糸井さんにとって、例えばアポロ11号なんかはどういう意味を持つものだったんですか?

 

糸井 そのニュースは「どっかで火事があったね」っていうのと変わらない(笑)。ニュースとして語るんだけど、地続きじゃないんですよ、生活と。どういう意味を持つとか、どういうインパクトがあるっていうのは、それぞれに考える責任なんかないわけで。

 

大野 あー、確かにそうですよね。

 

糸井 今は「大衆が考える責任」についてまで考えますよね。今聞かれて初めて思ったけど、本来人が感じるのって、火事を語るのと同じようなもので、「この世界への意義」とか「時代の刻印が」とかって言う必要もないんです。「すごい時代になっちまったねー」って近所でやりとりされて、そのまま日常の会話の中に、すーっと戻っていく。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

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