「宇宙SF」の現在――あるいはそのようなジャンルが今日果たして成立しうるのかどうか、について

【シノドスに参加しよう!】

▶メールマガジン「αシノドス」

 https://synodos.jp/a-synodos

▶セミナー「シノドス・サークル」

 https://synodos.jp/article/20937

▶ファンクラブ「シノドス・ソーシャル」

 https://camp-fire.jp/projects/view/14015

■ジョー・ホールドマン『終りなき戦い』(ハヤカワ文庫SF)

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

『機動戦士ガンダム』の原型となったことでも著名なロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』(ハヤカワ文庫SF)以来、スペース・オペラの変種としてのミリタリーSFはアメリカを中心に一定の隆盛を誇っているが、ヴェトナム帰還兵によってものされた本書はその中でも古典的な位置を占めている。正体不明(行動原理が今一つ理解不能)な異星人との、広大な宇宙を舞台として千年にも及ぶ戦争が、末端の一兵士の眼から淡々と描かれる。超空間航行と亜光速航行を併用する遠征で、「ウラシマ効果」により故郷と同胞から百年単位の時間の壁によって隔てられる兵士たちの悲哀は、そのままにヴェトナム帰還兵の運命のメタファーとなっている。

 

なお現行の日本語訳は1974年刊の初版に準拠しているが、本書の真骨頂は90年以降流通している「決定版」(未訳)の方にある。そこでは編集部の意向によってマイルドに書き直された初版の第二部の代わりに、本来の第二部が収録されており、いったん退役した主人公が地球に戻って何を見るか、についての物語が初版とは全く別物となっている。こちらを読んで初めて、主人公が(そして著者が)戦地から帰還して、どれほど打ちのめされたのか、が少しだけ理解できる。

 

現代的なミリタリーSFで、なおかつアクションにとどまらず、知性とは文明とはといったシリアスSFっぽい思弁をも提供してくれるものとしては、ジョン・スコルジー『老人と宇宙(そら)』連作がおすすめである。

 

 

■ロバート・J・ソウヤー『スタープレックス』(ハヤカワ文庫SF)

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

「現代宇宙論の成果を踏まえて「スター・トレック」を無理やりバージョンアップしました」的な作品。超光速(というよりワープ航法)という大嘘は大目に見てあげてほしい。ダークマターの正体とか膨張を続ける宇宙の未来とかいった20世紀末の時点での現代宇宙論のテーマを、無理やりスター・トレック風の宇宙冒険譚、スペース・オペラの箱に収めている。それでも今日、21世紀の研究水準からすれば古びてしまっているのだが……。なお『タウ・ゼロ』も70年代初頭という時点での宇宙論SFとしての側面を持つ。

 

 

■小松左京『虚無回廊』(徳間書店他)

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

小松左京の未完となった最後の長編SF。小説家としての早すぎる晩年において書かれた、未完であるにもかかわらずきわめて完成度の高い、読ませる小説である。「人工実存(つまりは人格を備えたロボット。自己を複数のサブ人格に分割することもできる)」による宇宙探査、異文明との接触を描いている。主人公の地球出身のロボットのみならず、直接接触する相手もまた「人間」ではなく異文明の送り出した探査ロボットであるあたり、先駆的なポストヒューマンSFともなっている。

 

 

■星野之宣『2001夜物語』(双葉社)

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

日本SFまんがの第一人者の代表作。非常に乱暴にいえば「80年代までの宇宙SFを一つの作品として総括する」力技である。

 

 

■長谷川裕一『マップス』(メディアファクトリー)『マップスネクストシート』(フレックスコミックス)

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

シリアス寄りの宇宙SFまんがを星野に代表させるとしたら、荒唐無稽なスペース・オペラとしてはこちらにとどめを刺す。発想としてはソウヤー『スタープレックス』、あるいはベア『ブラッド・ミュージック』と似ているが、娯楽作品としての楽しさではこちらに軍配を上げざるを得ない。

 

 

■あさりよしとお『アステロイド・マイナーズ』(徳間書店)

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

現時点においておそらくはもっともリアルでハードな宇宙開発まんが。オムニバス形式で、近未来の宇宙開発――主として地球周回軌道と、小惑星帯が舞台となる――を軽妙なタッチで描いている。作品世界の背景となる基本的な認識は、著者がイラストで協力した野田篤司『宇宙暮らしのススメ』(学研)に依拠している。著者は日本随一の科学学習まんが『まんがサイエンス』(学研)の作者として、またアマチュアのロケット製作者として著名。

 

(本稿はα-synodos vol.141からの転載です → https://synodos.jp/a-synodos )

 

サムネイル「space」Sweetie187

https://flic.kr/p/9pGgw8

 

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

 

1 2 3 4
シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

・畠山勝太「こうすれば日本の教育はよくなる」
・穂鷹知美「マスメディアの将来――マスメディアを擁護するヨーロッパの三つの動きから考える」
・大賀祐樹「リチャード・ローティ」
・西山隆行「学び直しの5冊〈アメリカ〉」
・知念渉「「ヤンチャな子ら」とエスノグラフィー」
・桜井啓太「「子育て罰」を受ける国、日本のひとり親と貧困」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(8)――「シンクタンク2005年・日本」第一安倍政権成立」