3.11後の「表現すること」の戸惑い

「欠片」を拾い集めて、日常を再生する

 

荒井 おふたりの写真の何がいいって、何気ない日常が映っているところなんですよね。すみません、ちょっと言葉が適当かどうかわからないけど「どうでもいい」ような、あんまり「意味」がない日常の風景じゃないですか。

 

安田 あはは(笑)

 

佐藤 そうですね(笑)

 

荒井 「心」って、何かとてつもなく崇高なものでできているというよりは、一見どうでもいいような、日常の塵みたいなものが積もっていって「質量」が出てくると思ってるんですね。「昨日のテレビみた?」とか「さっきのご飯、あんまり美味しくなかったね」とか、何気ない会話とか場面が塵のように降り積もっていく。おふたりの写真は、「心の質量」になる塵が積もっていく瞬間を撮ってくれている。

 

佐藤 すごくうれしい言葉です。ぼくは欠片と言っているんですけど、シャッターを切る瞬間は、その欠片を集めているってことなんです。

 

震災の後「瓦礫」って言葉が本当に怖かったんですね。一週間ほど前は日常の生活の一部だったものが、粉々になって、何も表していない言葉になってしまっているじゃないですか。でもそのなかで、大切なものをみつけることができるんじゃないかと思って、シャッターを切って欠片を拾い集めたんです。そうすれば失われてしまったと思っているものから日常が再生できるんじゃないかなって。

 

いまでも母との思い出がぽつぽつ出てくるんですよね。あんなことしてたな、あのお茶が好きだったよなって。そういうどうでもいいことが。

 

荒井 大切な人との思い出ってそうですよね。どうでもいいことばかり思い出しますよね。

 

佐藤 そういったものが積み重なっていくとぬくもりを感じるようになるんです。ぼくにとって欠片は、どうでもいい粒じゃないんです。全体を構成するのは、そういう小さなものなんですよね。

 

 

「おふたりの写真の欠点ってなんですか?」

 

荒井 最後に、ひとつ質問させてください。これはぼくがお世話になった方から教えてもらった質問で、いま、いろいろな方にお聞きしています。おふたりの写真の「欠点」ってなんだと思いますか?

 

安田 ごめんなさい、ちょっと(安田さん席を外す)。

 

佐藤 ぼくの欠点は、写真だけで何かを伝えることができないことですかね。かならず言葉をつけます。写真だけの表現を追求している人からは「写真を愚弄しているのか」とか言われることもありますが、あんまり気にしないようにしています。

 

荒井 この質問、受け売りでいろんな方に投げかけているうちに気づいたんですけど、「欠点を語ってください」ってお願いすると、最終的に自分の長所を話してくれるんですよ(笑)。もちろん「ひとを選ぶ」質問なんですけど、きっとおふたりにはバッチリはまるんじゃないかと思っていました(笑)。

 

佐藤 あー! なるほどなあ(笑)そうですね、変えるつもりないですもん。そうかあ、欠点って特徴ってことなんですね。

 

荒井 そうなんです(笑)。「長所を語ってくれ」って言うと固まっちゃうことが多いんですけど、短所を聞くと生き生きと話してくれるんですよね。不思議ですよね(笑)

 

安田 すいません、戻りました。

 

荒井 安田さんはどうですか、ご自身の写真の「欠点」って何だと思いますか?

 

安田 えー! 自分の写真の欠点は、よく言われることなんですけど、ひとに近すぎることですね。

 

佐藤 ふふふ(笑)。

 

安田 なんで笑ってるの?

 

荒井 どうぞ続けてください(笑)

 

安田 どうしても人に近づきすぎてしまって、一歩引くことができないんですよね。「大好き大好き!」ってなっちゃうんです。私たちは一枚の写真を「バンッ!」と見せることもあるんですけど、物語を紡ぐように、写真と写真の間に想像力が働かせられるように、写真を連ねていかないといけないんですね。だから「大好き!」って距離感はそのままでいいと思うんですけど、俯瞰した視点も持たなくちゃいけないのかなって。

 

……なんでふたりとも笑ってるんですか?

 

荒井 ほらね(笑)

 

佐藤 種明かしは記事をお楽しみに(笑)

 

安田 えー、なんだろう?

 

佐藤 荒井さんはご自身の欠点はどこにあると思いますか?

 

荒井 そうですね。最初にお話した矛盾点だと思います。文章を書くのは臆病なくせに、書いたら傲慢になってしまう。傷つけたくないと思いながら書いて、でも自分のストーリーのなかに相手を押し込んでしまう。だけどこのやり方でしか生きていけないって自覚しています。

 

……そろそろ時間ですね。またぜひ近いうちにお話をさせてください。

 

佐藤 わあ、もうこんな時間なんですね。あっという間でした。

 

安田 全然話足りないです。

 

佐藤 またぜひ、もっとたくさんお話させてください。

 

(2014年3月4日 恵比寿にて)

 

 

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