飲み会で歴史談義をぶつ上司に贈る本――『エドノミクス 歴史と時代劇で今を知る』(飯田泰之・春日太一)ほか

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『エドノミクス 歴史と時代劇で今を知る』(扶桑社)/飯田泰之・春日太一

 

歴史の話はたいていつまらない。特に、飲み会で上司からされる歴史の話はなおさらである。話もだいたい似通っている。しかし、つまらなそうな顔をしたら「見どころがない」と判断されてしまう。飲み会の歴史の話は「忠義」のリトマス紙なのだ。我々に与えられた道は「へぇ、すごいですね」と感心するしかない。なんという不毛な時間。せめて面白い歴史の話をしてくれよ。

 

と、思っている人は意外と多いのではないだろうか。そんなあなたに紹介したいのは『エドノミクス 歴史と時代劇で今を知る』である。経済学者の飯田泰之氏と、時代劇研究家の春日太一氏の対談と、それぞれのコラムが収録されている。エコノミストと時代劇研究家から見た「江戸時代」は、今までの歴史の話とは一味違う。

 

ここでは、『忠臣蔵』を扱った、第二章『「元禄」という時代と「赤穂事件」』を取り上げよう。1960年代には、政治腐敗が問題となり、賄賂を受け取ろうとする側と拒否する側の対立を「忠臣蔵」に投影するようになっていった。赤穂の高い塩づくりの技術を吉良上野介が欲しがり、それを拒んだため浅野内匠頭に嫌がらせをしたという「塩田説」が生まれた1980年代は、企業間の情報戦が激化した時代でもあった。春日氏は「『忠臣蔵』というのは“時代性”を持ち込むのにいい器である」と言う。

 

実は、仇討に参加した多くの者たちは、なぜか新しく雇われたものが多かった。浅野家に対する忠誠心は強くなかったはず。しかし、元禄時代は当時の武士にとって再就職の問題は深刻だった。その中で、討ち入りは世間に対する格好の「プレゼンテーション」であったのではないか。四十七士は再就職先がなかった人間たちで、討ち入りをすることによって一族の再就職先を見つけようとしたのでは。

 

このように『忠臣蔵』を考えてみると、『忠臣蔵』に世の中の在り方を投影してきた現代の姿と、「忠義」だけでは動いていない戦略的な赤穂浪士の姿が浮かび上がってくる。

 

その他にも、「徳川家康が天下を取れた理由」「徳川家康はなぜ嫌われるのか」「吉宗を名君たらしめるもの」「進み過ぎていた江戸の貨幣制度」「司馬遼太郎の功罪」など、ついつい誰かに話したくなるトピックが沢山ある。歴史好きの上司にプレゼントすれば、「見どころのあるやつだ」と思われるし、もっと面白い話が聞けるに違いない。(評者・山本菜々子)

 

 

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