異なる何か/誰かに触れる――中東地域研究の魅力とは

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異なる何か/誰かに触れる

 

―― 中東地域について学ぶとどんな役に立ちますか?

 

キツイ質問ですね(苦笑)。所属先の大学で「中東・イスラーム地域研究」のゼミを持っていますが、学生たちにとって何の役に立つのだろうかと、いつも悶々としています。もちろん、外国・異文化としての中東のことを知ること、考えること自体に意味はあります。

 

しかし、私が期待しているのは、中東を学び、そこで得たものを通して世界を見直してみると、それまで見えていなかったものが見えてくる、当たり前だと思っていた価値観や常識が相対化されることです。だとすれば、中東を学ぶことは、結果的に学生たちの知性と個性を磨くことになる。

 

こうした作用については、中東は別に特別なものではありません。異なる何か/誰かに触れることで自分というものが相対化されるのはよくあることです。中東に限らず、他の地域、外国、異文化を謙虚に学ぶことは、その人の寛容さにつながっていきます。

 

日本を含む世界のあちらこちらで、自分が帰属する(と信じて疑わない)共同体の文化や歴史を絶対視して、他者を排除しようとする動きが増えています。そうしたなかで、自分の価値観や常識だけに縛られないことは非常に重要です。

 

 

―― 興味を持った高校生はどの学部に行けばいいですか?

 

中東の何に興味を持つかによりますが、中東地域研究を掲げた学部や学科はないので、まずは、いろんな大学のカリキュラムを見てみて、中東のことを教えてくれる授業、特にゼミがあるかどうかを確認することが大切です。そのとき、外国語・国際系学部はヒットしやすいですが、例えば、歴史に興味があれば文学部史学科、政治に興味があれば法学部政治学科で探してみるとよいでしょう。近年は、中東を専門にする先生の数も全国的に増えつつあります。

 

 

―― 最後に、高校生に一言お願いします。

 

グローバル化の進展とインターネットの発達によって、外国・異文化としての中東に触れる機会は右肩上がりに増えています。一昔前と比べると中東ははるかに身近な地域になりました。でも、ネット上の情報は仮想世界のものに過ぎないので、現地に行って現実世界を見てきなさい……というのはフェイントです(笑)。よくあるお説教ですね。もちろん一理はあります。

 

むしろ私は、逆にインターネットをどんどん使って下さい、と言います。せっかく素晴らしいテクノロジーがあるんですから。「インターネットでは自分が見たいもの、都合のよいものにしかたどり着けない」という批判もありますが、中東のことが気になったら見たいものをじゃんじゃん見て、疑問が湧いたらどんどん調べてみて下さい。どうしてもわからない、どうしても知りたい、と思ったら、中東に関する本もたくさん出ています。それでも満足できなかったら、中東に出かけてみて下さい。

 

異なる何か/誰かに触れることから中東地域研究ははじまります。

 

(2014年6月13日 立命館東京キャンパスにて)

 

 

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高校生レベルを対象とした岩波ジュニア新書の1冊。近年の中東情勢についての基礎知識と理解のための枠組みを学ぶことができます。同著者の『<中東>の考え方』(講談社現代新書, 2010年)も中東の現代史を把握するのに便利です。

 

 

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イスラームについての手軽でわかりやすい入門書。宗教としてのイスラームの誕生から、その基本的な教え、社会や政治に対する影響や役割など、包括的に論じられています。

 

 

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2011年以降のシリア「内戦」を扱った小著。なぜ紛争が始まったのか、なぜ紛争が終わらないのか、知りたい人は必須。それだけではなく、副題にあるように、シリアの現代史と政治の仕組みについても学べます。

 

 

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先生や上司のガンダム話を苦痛の時間から楽しくてためになる時間に変えたい人は必見。戦争の不毛さだけではなく、共和制/君主制、連邦制、独裁、ガバナンス、政治過程など、政治学の基本を勉強できます。TVシリーズは全43話でコンプリートが大変ですので、ひとまずダイジェスト化された劇場版3部作をおすすめします。どうしても本で読みたい人には、安彦良和『機動戦士ガンダム The Origin』(角川書店, 2002-11年、全23巻)があります。

 

 

 

 

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