〈昼の世界〉と〈夜の世界〉の断絶を超えて

論者の無意識を引き出していく

 

―― 宇野さんが論者の方にインタビューする上で、意識していたことはありますか?

 

ぼくでなければ聞けないことを聞こうと思っていました。論者自身のいいたいことは、彼らの書いた本を読めば誰でも分かる。でも、主張や作品の裏側には絶対に作者の無意識が存在しています。批評とは作者や作品の無意識を読むことですから、批評家であるぼくの仕事は論者の無意識を引き出していくことです。だから、他の人が聞かないことで、論者本人も自発的には喋らないことを、ぼくが引き出していかなければいけない。

 

古市憲寿くんであれば、社会学者としての古市くんではなくてエッセイストとしての「古市憲寿」を。安藤美冬さんであれば、ノマドライフの話ではなくて、彼女が一消費者としてどのように自己啓発文化に接してきたのかということを伺っています。どういう人であるのかをあまり知らない分、初対面の方やあまりお会いしたことのない方へのインタビューの方が上手くいったという気がします。

 

 

マニフェストに対応する存在

 

―― デザイン面のお話を伺いたいと思います。PLANETSの表紙はいつも可愛い女の子ですよね(笑)。

 

ぼくにとってこの本は、「新しいホワイトカラーのスタンダードをつくっていきたい」というマニフェストです。最初は『PLANETS SPECIAL 2010 ゼロ年代のすべて』の表紙のような「風景+合成写真」でコンセプチュアルなものを考えていました。でも、風景は世界観の提示に過ぎないので、ぼくの主張を表すことはできない。だとしたら、主張の提示に対応するものは人物ではないかと考えました。

 

誰が表紙にふさわしいのかを考えてみると、ぼくのマニフェストに対応する人物は、ぼくが200人以上のAKBグループのメンバーから選び抜いた推しメン以外には考えられなかった(笑)。ということで、AKB48兼NMB48メンバーの横山由依さんにお願いすることになりました。内容はもちろんですが、表紙から丁寧で質の高い仕事がしたかったので、撮影の際もぼくが細かくディレクションしました。

 

たとえば白シャツに赤のワンポイント、というイメージはぼくから提出しています。でも制服っぽく見えないようにしたかったので、スタイリストと相談してあの素材のシャツと胸元のコサージュにしました。あのコサージュは「タイだと制服っぽくなってしまうのでなにか考えて欲しい」というぼくの無茶な要求にスタイリストさんが応えてくれたものです。たぶん、ぼくは日本で唯一グラビアのディレクションができる批評家だと思います(笑)。

 

 

いかに手に取りやすい本をつくるか

 

―― vol.8はデザインも随分こだわっていますね。本のサイズが大きくなって、カラーページが大幅に増えた。色や写真の使用方法も特徴的です。

 

今までのPLANETSは、ぼくが学生の頃好きだった『別冊宝島』『アニメック』『OUT』みたいな、80年代、90年代のカルチャー誌やアニメ雑誌のエッセンスを取り込んだものでした。字は小さくてもいいから、ひたすら内容を詰め込んで濃密感を求めていた。しかし、今回の『PLANETS vol.8』はすこしでも多くの人に読んでもらうということが目的なので、内容のレベルは下げないままに、いかに多くの人が手に取りやすいものにするかということを考えています。

 

デザインはすべてをゼロからつくり上げたいと考えていたので、半年くらい前からデザイナーさんと打ち合わせを重ねて、細かいところまでこだわりぬいた。具体的には、「図と字をなるべく重ねない」とか、「視線を泳がせない」といった基本方針から決めていきました。

 

本の大きさを変えたのも、多くの人に手に取ってもらうためです。「A5サイズ」は文芸誌や評論誌のスタンダードになってしまっていて、「こういった本を読む人たち」に読者を限定してしまっている。それをどうしても脱したいと思いました。このサイズで字がたくさん詰まっている本は珍しいと思いますよ。

 

あとは、イラストを意図的に排除しましたね。イラストは本のカラーを分かりやすく示してくれる一方で、どうしてもカラーを強く決めすぎてしまう。だから、絵素材は外の世界とのハブになるようなものだけにかぎって、そのかわりに写真素材を多く使用しています。写真の解釈を限定しないように、あえてキャプションもつけていません。

 

 

「文学」の言葉で政治を支える

 

―― カルチャーとアカデミックという異なる領域ではありますが、読者がPLANETSとシノドスの両方を読むことによって、はじめて得られるものがあるような気がします。

 

シノドスのアカデミックジャーナリズムは戦後的な政治性で物事を考えている人にとっては、ただのバランス調整や対症療法に見えてしまうことが多いと思うんです。もちろん、実際にはそんなかんたんな話じゃない。でも、彼らには、今の若手の論客や研究者がなぜこういうことを論じているのかという意図がわからないんですよね。

 

こういう誤解がなぜ起こるかというと、それを支えるもの、なにが「政治的なもの」かを考える「文学」の言葉がやせ細っているからだと思います。だから、ぼくたちPLANETSはその「文学」の言葉を補っていきたい。読者がPLANETSで「文学」の言葉を蓄えて、シノドスで政治の考え方を身につけていくという両輪が理想ですね。

 

 

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vol.2019.4.15 

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