この経済失策がヤバかった!2012 日欧経済失政レビュー

『ユーロの正体』では、「欧州の経済統合の歴史」「ユーロ成立までの歴史」が詳細に紐解かれ、「なぜいま、ユーロが危機に瀕しているのか?」が、世間の経済解説の誤りを指摘しつつ解説され、一冊で、ユーロ危機のすべてがわかるよう、予備知識がない人でも理解できるよう懇切丁寧に解説されている。

 

そして、「実は、ユーロの失敗と日本経済の失敗の根は同根」であること、「日欧ともに経済の失政を改めない限り、経済の回復は見込めない」という「日本とユーロ圏の経済失政の正体」を豊富なデータを元に比較しながら見事に描き出されているのが大変に興味深い。「日本とユーロ圏の政策当局が陥った、『同じ過ち』とは何か?」著者である安達誠司氏に鋭く迫る、『ユーロの正体』シノドスジャーナルver.をお送りします。(聞き手・構成/杉山洋祐)

 

 

―― 最新刊の『ユーロの正体』(幻冬舎新書)を拝読させていただきました。前著であり姉妹本の『円高の正体』(光文社新書)同様、とてもわかりやすかったです。この本の中で「実は、ユーロの失敗と日本経済の失敗の根は同根」であり、「日欧ともに経済の失政を改めない限り、経済の回復は見込めない」と断罪されています。

 

本日は、『ユーロの正体』で描かれていたものの中でも、特に「日本とユーロ圏の政策当局が陥った経済失政の共通点」についてお聞かせいただければと思います。インタビューのタイトルは、年末ですので「この経済失策がヤバかった!2012 日欧経済失政レビュー」とつけさせていただいております(笑)

 

安達 はい、ちょっとタイトルには賛同できかねるのですが(笑)、日本とユーロ圏の政策当局双方が共に行った失策は、大きく分けると以下の4つであったと考えています。

 

 

発表!「この経済失策がヤバかった!2012 日欧に共通する4つの大失政」

 

(1)双方とも大規模な金融引締めで資産市場(株価や地価)を暴落させた

(2)資産市場が暴落したのに、双方の中央銀行ともに十分な金融緩和政策を行わなかった

(3)日欧の政策当局共に、十分な景気回復がなされる前に、消費税の増税などの緊縮財政政策を行った

(4)危機勃発後も、日欧の中央銀行ともに、頑なに金融緩和政策を拒んだ

 

 

日本の失われた10年がはじまり、ユーロ圏はユーロ危機に突入

 

―― それでは、ひとつひとつ詳しく教えて下さい。安達さんは、「『日欧の政策当局ともに、大規模な金融引締めで株価や不動産価格を暴落させた』ことが、双方の経済危機のはじまりだった」と書いていらっしゃいましたが、これはどういうことでしょうか?

 

安達 日本は1990年に、ユーロ圏は2005年に、それぞれの中央銀行が大規模な「金融引締め政策」を実施し、資産市場(株価や不動産価格)を暴落させるという愚を冒しました。そのことが如実にわかるのが以下二つの図です。

 

 

『ユーロの正体』146ページより引用

『ユーロの正体』146ページより引用

 

『ユーロの正体』148ページより引用

『ユーロの正体』148ページより引用

 

 

日本の場合は、日本銀行がマネタリーベース(=日本銀行が供給する通貨の量)を減少させるという金融引締め政策を1990年に行い株価が暴落。ユーロ圏では、2005年にECB(欧州中央銀行)が政策金利を引き上げるかたちでの金融引締め政策を行い、不動産価格が実際に暴落しました。下のユーロ圏の図は、スペインの例を表示しています。

 

その後、日本は長期の経済停滞に突入し、失われた20年と言われる状況に陥り、ユーロ圏もその後に停滞に陥り、現在へと続くユーロ危機へと発展したのです。

 

ちなみに、アメリカの中央銀行であるFRBも、FFレートと呼ばれる政策金利を上げるかたちでの金融引締め政策を2004年に実施。その後見事に不動産価格は大暴落。それが、2008年9月に起きたリーマンショックの引き金となりました。それがわかるのが下の図です。

 

 

『ユーロの正体』147ページより引用

『ユーロの正体』147ページより引用

 

 

―― 金融引締め政策とは、日本銀行やECB、FRBなどの中央銀行が、市場に供給する資金(貨幣)の量を絞ること(減らすこと)だと理解していますが、なぜ中央銀行が金融引締め政策を行うと、資産市場が大暴落するのですか?

 

安達 それはまさに、不動産投資や株式投資のための「民間の投資資金」も、元をたどれば「すべて中央銀行が供給した資金」が元手になっているからです。

 

つまり、大元締めである中央銀行が、市場全体から資金を引き上げる金融引締め政策を行うと、不動産市場や株式市場に流入していた資金も引き上げられてしまい、それまでに潤沢に投資資金が投入されていた株式市場や不動産市場への投資が真っ先になくなり、株価も不動産価格も大暴落するのです。

 

ユーロ危機も、日本の長期停滞も、そしてアメリカで起こったリーマンショックも、すべてその「中央銀行の行き過ぎた金融引締め政策」に端を発して起こされたことだということがわかるのが、上の三つの図です。

 

「日本とユーロ圏の政策当局ともに、大規模な金融引締めで株価や不動産価格を暴落させた」というのが、日欧にまたがる経済大失策のひとつ目です。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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