「福島の子どもは、大丈夫です」――甲状腺検査の現場から

学校検査で「受けない」という意思表示は難しい

 

甲状腺がんに限らず多くのがんの発症には、加齢や遺伝、生活習慣など、さまざまな要因が影響する。がんの発症に対するそれらの影響の大きさと比べた場合、低線量被曝の影響は非常に小さく、見分けることが難しい。とくに、被曝線量が低いほど、その影響は他の要因による影響にかくれ、観測することはより困難になっていく。

 

既に2014年には、公衆衛生学の専門家である東京大学大学院教授・渋谷健司氏が2014年6月の甲状腺検査評価部会で「現行の甲状腺検査のやり方を見直してほしい」と発言し、福島で行われている甲状腺のスクリーニング検査の問題点とともに、福島の子どもの初期被曝が健康に影響を与えるほどの線量ではなかった可能性を指摘していた。

 

UNSCEAR2016年白書によれば、「福島第一原発事故による甲状腺量の推定値はチェルノブイリ周辺が受けた線量よりも大幅に低いため、チェルノブイリ原発事故後に発生したような放射線被ばくによる甲状腺がんの大きな過剰発生は考慮しなくともよい」という。

 

さらに、2017年10月に開かれた県民健康調査検討委員会において、国際医療福祉大学クリニック院長・鈴木元氏が、原発事故直後の福島の子どもの被曝線量をより正確に評価し直す研究の中間発表を行った。この中間発表によると、子どもの甲状腺がんを誘発するリスクのあるヨウ素131などの放射性物質による初期の内部被曝(1歳児)は、原発周辺13市町村でも平均5~39mSvであり、同地域におけるUNSCEARの2013年報告書による1歳児の甲状腺等価被曝の推計(47~83mSv)より大幅に低い可能性が出てきたという。

 

なお、現在甲状腺の内部被曝を抑えるための安定ヨウ素剤の服用の目安も、IAEA(国際原子力機関)によって「(甲状腺にヨウ素を吸収しやすい)1歳児の甲状腺等価線量が50mSvを上回ると予想される場合」とされている。

 

 

早野 原発事故直後の放射性ヨウ素をはじめとする内部被曝が十分に少なくおさえられたこと、そもそも放出された放射性物質の量が多くなかったこと、またスクリーニングの方法や原発事故直後の牛乳などの食品出荷規制の徹底など、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故とでは、事故後の状況が非常に違うということがわかっています。

 

チェルノブイリ原発事故後の周辺住民の甲状腺等価被曝線量は、福島の場合とは桁違いに高かった。そして、最終的にはCardis(Elizabeth Cardis・国際がん研究機関 放射線・がん研究主任)らが線量応答(放射線被曝線量と見つかった甲状腺がんの症例数との関係を表すグラフ)の線を「エイヤ」と引いて、「今見つかっているのはチェルノブイリ原発事故由来の甲状腺がんである」としたわけです(注3)。

 

(注3)Risk of Thyroid Cancer After Exposure to 131 I in Childhood, E. Cardis et al., JNCI: Journal of the National Cancer Institute, Volume 97, (2005) Pages 724–732,

 

しかし、そもそもの住民の被曝が事故直後においても十分に低かったとすれば、このままスクリーニングを続けても、おそらく被曝線量の影響は見えてこないでしょう。では、この検査は一体なんのためにやっているんだろうか。

 

緑川 いずれにしても、「この検査を本当に必要としているのは誰なのか」ということについては、議論されなければいけないとは思っています。

 

現在は、福島県の事故当時18歳以下(および2011年内生まれの方)だったすべての住民に対して「あなたは甲状腺検査の対象です」というご案内をしています。当初は現在と違って、「検査に同意しません」という選択肢が明示されていないかたちでしたけれど。それでも、これは「検査を受けるかどうかはご自身が自由に決めていい」という検査ですから、検査を受けるかどうかの判断材料となる検査のメリットやデメリットなどを、正しく丁寧にお伝えする努力を続けなくてはいけないと感じています。

 

早野 高校を卒業して県外に出られるような年齢に達した方の受診率が大きく下がっているようですね。これは何が原因になっているのでしょうか。

 

緑川 そもそも、甲状腺検査の受診率がこれほど高い(約70~80%)のは、福島県内の高校生までの検査が学校検査であるということが大きな理由だと思います。現在、甲状腺検査は学校の授業時間をお借りして行っています。受診の意思確認の書類には「検査に同意しない」という項目もありますが、授業時間に行われる検査で、「自分の子どもだけは受けさせません」という意思表示は、心理的になかなかしづらいのではないでしょうか。

 

また、「学校の授業時間を使って検査をする」ということによって、学校保健法で受診が規定されている心電図検査や検尿などと同じように「受けるのが当然の検査なのだ」という、いわば暗黙の了解ならぬ「暗黙の誤解」も生じているようです。こういった理由もあって、対象者のうち学校検査を受ける年齢の方の受診率は著しく高いです。一方で、学校を卒業した年齢になったとたん、急激に受診率が下がります。たとえば、現在の18歳以上の方の受診率は2割を切っています。

 

早野 卒業したために学校検査がない方々の8割は検査を受けないという状況があると。これは、自ら検査を受けにいくほどの不安を持たない方が、現在全体の8割いらっしゃるということでもありますね。原発事故から6年以上が経って、当時と今とでは住民の不安の状況が変わってきたということはありますか?

 

緑川 お母さんたちについては、少し変わってきたようにも感じます。甲状腺検査の結果を説明したときに「私たちは、それほどたくさんの放射線には被曝しなかったんですよね」とおっしゃる方も多くなってきました。一方で「とにかく、放射線のことはもう話題にせず、心の奥にしまっておきましょう」という、少し違った理由で不安を口になさらない方もいらっしゃいます。

 

子どもたちは、どちらかといえば「正しく理解して不安ではなくなった」というよりは、お母さんたちが放射線のことを話題にしなくなった様子を察して、自分もその話題に触れないようにしよう、と考えている様子がうかがえます。子どもは大人たちの間の空気を読みますので。でも、子どもたちに向けた出前授業の後に、感想や質問を自由に書いてもらうと、「普段は言えないけれども、次に原発が爆発したらどうなるのか」というようなことを書く子が一定数います。あるいは「福島から出たら、私は差別されるんですか」という不安を書いてくる子もいます。

 

 

検査のメリット・デメリットを丁寧に説明する

 

ヨーロッパでは、2008年に低線量影響研究における高度専門家グループ(HLEG)を設置し、その報告を受けて2009年には国際的・学際的組織として「学際的欧州低線量イニシアチブ(MELODI)」が設立されるなど、低線量被曝に関する研究やそのための人材育成に力を入れている。

 

こういった背景もあって、2015年、EUは、福島県立医大の持つ知識や情報とヨーロッパで研究・蓄積されてきた知見とをあわせて活用しながら、原子力災害後の被災者の健康管理やリスクコミュニケーションを行うことを目的とした「SHAMISENプロジェクト」を立ち上げた。

 

 

早野 SHAMISENプロジェクトの勧告では、「原子力災害があっても、システマティックに(大規模な、ある集団全体を対象とした)甲状腺スクリーニングをすることは推奨しない」などの提言が出されました。これらの勧告は、現場の先生から見た場合に妥当なものでしょうか。

 

緑川 私は前向きに評価しています。希望者を対象とした甲状腺検査を行う場合には、受診者が判断するために十分な情報を提供すべきであるという勧告もまた妥当だと思います。こういったさまざまな国際的・学際的な専門機関の意見や勧告が、今後住民の健康を考えるために十分活かされることを期待します。

 

早野 ぼくは、今福島で行われている甲状腺検査が、形式上だけではなく、本当に受けたいと希望される方が安心して受けられるようなものになるといいと思っています。

 

住民が不安に思ったときに「検査をしてほしい」といつでも言える仕組みがあって、そして充実した設備で安心して検査を受けられる。そういったサービスとしての検査ならば継続してもいいのかもしれません。しかし、今行われている検査はそうではないですね。

 

緑川 検査のありようを考えていく上では、内心不安に思っている人がいれば、いつでも安心して検査を受けられるようにすることと、検査を受けたいと希望される場合には、いわゆる過剰診断が起こる可能性や、もし甲状腺がんが見つかった場合の選択肢についてなど、必要な情報を十分に説明できるようにすることが、まずとても重要だと思っています。

 

早野 学術的には、実際にこれだけの大規模な検査をした結果、ここまでに得られたデータをなんらかのかたちで後世に残すことは必要なのかもしれません。しかしその一方で、無症状のうちに検査を受けた結果、実際に手術を受けられた方がおられる。これは、一人ひとりの方にとっては一生の問題です。こういった方々やその家族に対して、どのようにされることが望ましいでしょうか。

 

緑川 「甲状腺がんが治った」ということは、「甲状腺がんにかからなかった」ということと同じではありません。手術をして摘出をすれば、体から甲状腺がんはなくなります。でも、「自分はがんにかかった」という記憶は、ときに原発事故の体験と結びついて残ります。あるいは、そのことを人生の大切な場面で、何度も思い返すことになるかもしれない。このことが、思いも寄らないような場面で、人生に大きな影響を及ぼしてくるような例も、私は実際に見ています。

 

一人ひとりにあわせた一貫したケアが継続的にできる仕組みが切実に必要だと感じています。

 

 

■「福島の誇り」を守る

 

2012年11月から翌1月にかけて、環境省は福島県以外の三地域(青森県弘前市、山梨県甲府市、長崎県長崎市)において、男女合わせて4365名を対象に、福島県内で実施されているものと同様の機器と手法を使って甲状腺検査を実施した。

 

ただし、この当時福島で行われていた甲状腺検査は、(そもそも放射線被曝影響は考慮される必要がないとされた)先行検査であった。このため、いわゆる「三県調査」と福島の先行検査の結果との比較のみをもって「福島における子どもの甲状腺がんは放射線被曝影響ではない」と断言することまではできないという指摘もある。しかし、この三県調査の結果、他県でも甲状腺がんが1例(福島の先行検査と同じ割合)見つかったほか、子どもの甲状腺に嚢胞が見つかる割合についても福島と他の地域との間に差がないことがわかり、当時嚢胞が見つかるということについて住民が抱いていた不安や混乱が徐々に収束へ向かうきっかけとなった。

 

 

早野 最近でも、さまざまな立場の方が「福島で見つかる甲状腺がんが放射線の影響かどうかを調べるために、県外でも子どもの甲状腺検査を行って比較してみるべきだ」とおっしゃることがあります。この考えについては、どのように考えておられますか。

 

緑川 いいえ、それは決してやってはいけないことです。「受診者の同意をとればいいのではないか」とか「十分に倫理的な配慮をすればいいのではないか」ということで、「他県でも同じように甲状腺のスクリーニングを行ってはどうか」とおっしゃる方はたしかに少なくありません。「福島以外の地域でも同じように検査をしてみたら、同じように甲状腺がんが見つかったから、福島の甲状腺がんは放射線の影響じゃなかったことが証明されましたね」と言えたとしましょう。けれども、それによって福島の住民が喜ぶでしょうか。「ほかの地域の子どもたちに甲状腺がんがたくさん見つかりました」と聞いて、福島の人々は本当に喜びますか。

 

早野 ああ、それはきっと喜ばないでしょうね。

 

緑川 お母さんたちに向けた説明会でも、「もし、今福島でしているのと同じような甲状腺検査を、他県でやったら、どんな結果が想定されますか」という質問はときどき受けます。「他県でも、福島で見つかっているのと同じように、甲状腺がんが見つかると思いますよ」とお答えすると、「だったら、他県でも福島と同じように、甲状腺検査をやってもらうことはできないんですか」とおっしゃる方はおられます。そのお気持ちはとてもよくわかるんです。

 

福島で行われていることと同じ検査を、他県でやってもらったら、たしかに福島と同じようにたくさん甲状腺がんが見つかるでしょう。そして、同じようにたくさんの子どもたちが手術を受けることになるでしょう。そして、「福島で今見つかっている甲状腺がんが放射線の影響で特別に増えているものではない」ということが証明されるでしょう。そういう結果を、私たち福島の住民が「それはよかった」って喜んで聞いてしまったら、福島の人々は、長い間に、とても大切なところで、さらに深く傷つくんじゃないでしょうか。

 

私は、説明会でそうお答えしています。「お母さん、そんな結果を喜んで聞いてしまったら、福島の誇りが失われるよね」って。そうすると、お母さんはじっと考えて、頷かれるんです。「先生、そうだね、福島の誇りが失われるよね」って。

 

私は三県調査に深く関わりました。青森では4回ほどプローベも握っています。そして今、説明会でもあのときの結果を使わせてもらっています。ですが、私は三県調査をしていただいてしまったことを、深く後悔しています。あんな検査をしていただかなければ、「嚢胞は心配のないものだ」という事実すら、住民に伝えられなかったなんて。

 

 

甲状腺検査が生み出す住民の不安

 

甲状腺検査の本格検査は、原発事故当時18歳以下および年内に生まれた方が25歳になるまでおおむね2年ごと、それ以降は5年ごとに実施される計画がされている。甲状腺を含む多くのがんは(症状の有無にかかわらず)加齢とともに増加するため、今後福島でのスクリーニング検査対象者の年齢が高くなれば、甲状腺がんの発見数は大きく増加することが予想される。

 

しかし、韓国で乳がん検診とともに甲状腺のスクリーニングを行った結果、発見された甲状腺がんの数はそれまでの約15倍に増えたものの、甲状腺がんによる死亡率に変化がなかった(注4)。この結果から「福島で、今後30代以降を対象に甲状腺のスクリーニングを行うようになれば、一生症状の出ない(命にかかわることのない)タイプの甲状腺がんが非常に多く発見される可能性がある」と過剰診断の危険性を指摘する専門家は多い。

 

(注4)Lee JH, Shin SW, Overdiagnosis and screening for thyroid cancer in Korea. Lancet 384(9957):1848, 2014

Ahn HS et al, Korea’s thyroid-cancer “epidemic”-screening and overdiagnosis. N Engl J Med 371(19):1765–1767, 2014

Vaccarella S et al, Thyroid-Cancer Epidemic? The increasing impact of overdiagnosis. N Engl J Med 375(7); 614-417, 2016

Lin J S et al, Screening for thyroid cancer updated evidence report and systematic review for the US preventive services task force. JAMA 317(18): 1888-1903, 2017

 

 

早野 科学では、「ゼロです」ということの証明はできません。でも、今後、初期被曝の推定などさまざまなデータが明らかになっていって、放射線の被曝による健康影響は統計的にもゼロに近いということは言えるようになるでしょう。ぼくは甲状腺についての専門家ではありません。でも、今福島の甲状腺検査で見つかっている甲状腺がんは、放射線被曝によるものではない。そのことは、すでに明らかですね。

 

緑川 いまや国内外にかかわらず、多くの専門家はそのようにおっしゃっていますね。

 

早野 「放射線による影響で福島の子どもに甲状腺がんが増えているわけではない」ということは、科学的にはもう十分すぎるほどはっきりしています。これはつまり、「本来見つからないで一生を終えたかもしれない甲状腺がんを、この検査はたくさん見つけてしまっている」ということでもあります。そして、がんは加齢とともにたくさん見つかる病気であることはよく知られていることです。つまり、このまま検査を続けて、対象者の年齢が上がっていけば、当然甲状腺がんの発見される数は増えていきますね。

 

そのように、一生症状が出なかったはずのものもたくさん含んだ甲状腺がんをどんどん見つけていくということは、住民のためになることなのでしょうか。

 

緑川 他県の医療機関で、「事故当時福島にいた」ということを理由に、通常の患者さんとは異なる手術をされそうになった例もあると聞きます。このように、この検査が受診者に与えうるデメリットは多岐にわたります。そういうことをしっかり考えて、十分に議論して、この検査は評価されていかなければならないと思います。

 

そして議論の結果、もし「この検査が住民のためになっていない」という結論になれば、これまで検査や治療を受けてきた多くの方々を、少なからず傷つけることになります。ですから、検査の今後を議論するにしても、まずは今まさに傷ついている人、そしてこれから深く傷つくかもしれない人たちのケアを十分にできる仕組みを作ることが非常に重要だと考えています。

 

早野 現場で先生方がそういったこまやかな心配りをなさっている一方で、現場から離れた検討委員会の記者会見などでは怒号が飛び交うような状況もあります。その上、福島で見つかった子どもの甲状腺がんについて、テレビも新聞もいわゆる両論併記をします。メディアによっては、「多くの専門家や国際機関がこう言っています」ということと、「とある一人の学者がこう言っています」ということとを、ほぼ同じ時間や紙面の大きさを使って報道をする。そういう報道によって、「まだ甲状腺がんと放射線の影響との関係はわかっていない」と、多くの方々が思っておられます。

 

また、テレビや新聞を含め、あたかも原発事故由来の甲状腺がんが見つかってほしいかのように振舞っておられるメディアの方が一定数おられることも事実です。

 

緑川 そういった振舞いを見ると、まるで福島がそういう土地になってほしいかのようだと感じることもあります。

 

早野 Google Trendsで「内部被曝」と「外部被曝」という検索ワードの数を比べると、「外部被曝」のワードが検索される数は原発事故直後からずっとそれほど多くはないです。「内部被曝」のワードが検索される数はそれに比べればまだ多いのですが、それでも原発事故以降徐々に減ってきてはいる。しかし、「甲状腺がん」のワードが検索される数は減っていない。

 

おまけに、ところどころ顕著なスパイク(この場合、「甲状腺がん」というワードが検索される数が急増し、グラフに一時的な上昇が見られること)が見られます。このスパイクは「甲状腺がんが新たに〇〇人見つかりました」などの報道があると起こっているようです。かつ、「甲状腺がん」のワード検索のほとんどが、福島県内からのアクセスであることもわかります。このことから、原発事故から6年以上が経過し、放射線についてのさまざまな心配が少しずつ落ち着いてきたにもかかわらず、こと甲状腺がんに対する不安だけは相変わらず落ち着いていない、ということが言えます。

 

緑川 住民の不安の解消や心身の健康を見守るためにやっているはずの甲状腺検査そのものが、新たな不安の原因のひとつになっているのかもしれないんですね。

 

早野 少なくとも、「このデータがそういう側面があることを示している」ということは言えますね。

 

 

「スクリーニング」のメリット・デメリット

 

国内外の専門家のほとんどは「福島における甲状腺のスクリーニング検査で発見されている甲状腺がんは、原発事故由来の放射線被曝によるものではない」という点で合意している。一般的にスクリーニングには、がんや生活習慣病など、無症状のまま悪化することのある疾患を早期に発見し、それによる死亡率を下げるというメリットもある。

 

しかしその一方で、一見(がんなどの)対象疾患に見えるものの、精密検査をした場合にそうではなかったもの(偽陽性)を発見したり、今回甲状腺がんにおいて問題となっているような「一生無症状のまま(命にかかわることのない)であった可能性の高いもの」を多く発見したり(過剰診断)などのさまざまなデメリットもある。こういったデメリットは,不要な精密検査(医療被曝を含む)や治療による体への負担に加え、とりわけ対象が子どもであれば、その精神的負担は深刻な問題となる。

 

住民の甲状腺がんに対する過剰な不安を解消し、また自分自身や家族が検査を受けるかどうかを判断するためには、甲状腺がんという病気そのものの特徴を正しく伝えること、そしてスクリーニング検査という手法そのものの持つメリットとデメリットなどの情報を広く周知することが重要である。これは、国や県だけではなく、テレビメディアや新聞など県内外の報道機関などにとっての急務であろう。

 

 

「福島の子どもたちは大丈夫です」

 

対談の後、緑川医師にコメントを求めた。

「福島の子どもたちは大丈夫です。それが、私がはじめから信じて、なによりも守らなければいけない言葉です。」

これが、福島の甲状腺検査の現場で、福島の子どもたちと向き合い続ける医師の言葉である。

 

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