「ジョブチェンジ」し続けるための自分への先行投資法

▶シノドスの電子メールマガジン「αシノドス」

https://synodos.jp/a-synodos

▶真の教養を身に着ける「シノドス・サークル」

https://synodos.jp/article/20937

新潟県立大学学生×鈴木悠司「質疑応答」

 

短期と長期のベンチマークを両方設定する

 

浅羽 ありがとうございます。私とのクロストークはここまでにして、みなさんから質問してほしいと思います。今日、ステージ0から1に変わるキッカケになったでしょうから、さらに1から2に変える、踏み出す行動の最初の第一歩にしてほしいところです。

 

学生A 投資に関する質問です。目的があって投資が生まれると思うのですが、逆はあるのでしょうか。

 

鈴木 ないわけではありません。何かをしてみたいと思ってしていたら、そこが目的に変わっていくことはあります。大谷投手の例は、目的が具体的になっているわけですが、最初から目的があそこまで具体的になっていることは稀です。なんとなく役立ちそうだと思うからしてみよう、あるいは興味の赴くままにというのも、論としてはありうると思います。

 

学生B 私は読書が好きで、最近、『生き残るための、独学。』(千田琢哉著、学研プラス、2018年)という本を読みました。その中で、人生において参考にした方がいいのは自分と近い経歴の人だと書いてありました。どう思われますか。

 

鈴木 いい質問ですね。ベンチマークの仕方としても理解していいと思います。自分と経歴が近い人というときに……私はその本は読んだことがないですけれども、その本ではなぜそうだと書いてあるのですか。

 

学生B 具体的には、いろいろなお金儲けの仕方がある中で、あまりにも自分と経歴がかけ離れていると、知識の量などの前提条件が違う一方で、自分と近い人だとある程度似ている部分があるので参考にした方がいいと書いてありました。

 

鈴木 正しい部分と、そうではない部分があると思います。正しい部分というのは、確かにみなさんが今から天才物理学者を真似ろとか、プロ野球選手を真似ろといわれても、たぶん厳しいと思うので、近い人の経験に学ぶというのは大事だし、短期的にはすごく意味があると思います。

 

一方、自分に近い経歴だと思っている人だけでとどまってしまうと、そこからさらに違う世界のことを学ぶことがしにくくなります。遠い経歴、自分とかけ離れていると思う人でも、よくよく見てみたら、何らかの参考にできるところがあるものです。両方、必要だと思います。

 

 

 

 

今日、世界中にベンチマークがあるとお話ししましたが、世界の中でお手本になる長期のベンチマークと、身近にいる短期のベンチマーク、両方、設定するのがオススメですね。短期の場合だと、たとえば留学して帰ってきた先輩なんかがちょうどいいでしょう。

 

長期のベンチマークだけ設定してうまくいく人もいますが、普通の人は、長期のベンチマークだけだと、遠すぎて挫折してしまいます。特に外国語の学習の場合はそうです。そういう場合は短期のベンチマークも設定しておくといいでしょう。ところが、短期のベンチマークだけだと、そこに追いついたときに「次」を目指さなくなってしまうので、長期のベンチマークも忘れずに持っておくことが大事だと思います。

 

ですから、その本は短期のベンチマークの設定という意味ではすごく正しいのですが、みなさんは我々より時間という意味では有利なので、長期のベンチマークも考え始めるのがいいと思います。

 

学生C 鈴木さんは、子供の頃に抱いた夢や、いま抱いている夢、老後にどういう人生を送りたいかというプランはあるのでしょうか。それがお話しにあった投資とどのように結びついていますか。

 

鈴木 はい。子供の頃の夢は全然違いましたね。正直、何になりたかったのか、記憶もおぼろげです。アナウンサーになりたかったとか、競馬の騎手になりたかったとか、スポーツ選手になりたかったとか、その程度だと思います。そういう意味で、今やっていることと直接関係ありません。

 

今は、ヘルスケアの業界にいるので、幅広い人の健康増進、あるいは病気の予防に貢献したいという大きな夢があります。ビジョンとして共感できるので携わっています。また、老後の計画ですが、長期のことは分からないので、予測をあえてしないようにしています。先行投資云々だと、私の業界に関してはするべきことは明らかで、新しい技術の開発とグローバル展開が課題なので、そのために必要なことを粛々と行っていくということですね。

 

みなさんも、子供の頃の夢はこうだったというものがあると思いますが、それは変わっていても全然いいと思います。正直、ずっと同じということも珍しい。一方で、その時その時、数年間のスパンで目標があって、それに向けて投資しているかが大事ですね。

 

 

学ぶことは何度でも生まれ変わること

 

浅羽 「学ぶことは何度でも生まれ変わること」という定義がありますが、どう受け止めますか。

 

鈴木 正しいと思いますね。私は大学に入ったときは法学部に入るコースで、それが国際関係になって、そのあと外交をしていたら金融の世界に行って、次はコンサルティングで、いま全然違うヘルスケアにいます。生まれ変わりといっても過言ではないほど新しいことを学んできましたが、だからこそとても刺激になって、その時その時、充実しています。

 

浅羽 みなさんは今、国際地域学部にいて、国際地域学を学んでいますが、そういうコンテンツが直接十年後の仕事、あるいは老後につながらなくても、新しいことを学んだ、失敗を克服したという経験は、今後、別のところでも生かしていけるものですよね。

 

鈴木 そうですね。何かを学ぶ時のやり方というのは、みなさん一人ひとり、こうすれば効率的だという方法があるでしょう。新しいことに一定の期間、目標を持って取り組むとか、そのために日々のスケジュール管理をして学んでいくとか、検定試験を受けて不安を克服する、挑戦する、そういったものの一連のプロセス自体が、いろんな新しいことを始めるうえですごく役に立つので、そういうプロセスを一通り経験しておくかは大きな差が出ます。

 

学生D 先行投資について質問をさせていただきたいのですが、仕事を選ぶとき、やりたい仕事があってもできないとか、やりたくても給料が安くて大変だということもあると思います。どんなバランスで、どこを重要視して先行投資をすればいいのかというのを伺いたいです。

 

鈴木 いい質問ですね。給料も大事だし、やりがいも大事だし、やりたいことも大事でしょう。コツは、それぞれのジョブチェンジ、転職でも配置転換希望でも、一年に一回くらいのタイミングで、結局、自分にとって今、何が重要なのかについてまず一回紙に書き出しています。一個ずつ。そうすると、8~10個ぐらい出てきます。

 

次に、自分の中で優先順位をつけていきます。なかなかつらい作業ですが、プライオリティが出るので、それに基づいて選ぶ。全部かなえることはできないものです。ジョブチェンジであれ、時間の使い方であれ、自分の中で「何を捨てるか」を決めるプロセスを経ることで、そしてその紙を持っておくことで、こんなはずではなかったと思うか、あるいは概ね選んだ道に満足していると思うか、のちのちレビューすることができると思います。

 

浅羽 私と鈴木さんは異色のコラボレーションだと思うんですね。一見、分野も違うし、出身校も違う。この二人はいったいどこで出会って、どれだけの準備をして、今日この場が成り立っているのか。みなさん、まったく異業種の人と、30代になったときにコラボできるイメージを持てますか。こういう仕事の場が成り立っている仕組みについて関心を持つ人もいれば、今日の話のコンテンツそのものだけに関心を持つ人も、いろんなレイヤー、層があると思います。プラットフォーム、土台という部分で、私たち二人の関係を例に取り上げて、最後、一言いただければ…。

 

鈴木 どう知り合ったのかと、お互いのメリット、デメリットをお話しすればいいということですよね。共通の知り合いがいたのと、先生の本のレビューをブログに書いたら、その共通の知り合い経由で先生からメッセージをいただいて交流が始まったんです。偶然の接点からオンラインでお互い意見交換をして、オフラインで会うようになったら、大変面白かったんです。

 

私にとっては、ジョブチェンジの概念、先行投資の概念は社会科学で学ぶことが多いというように、社会科学の考え方や方法論はビジネスにおいて役に立つことが多いんですね。ビジネス界でアカデミズムの知見というのを積極的に学んでいる人は、正直、そう多くないです。加えて、私自身、アジアでビジネスをやっているので、韓国や東アジアに関する研究は知識としてとても役立ちます。

 

私が浅羽先生にどういうメリットを与えられているかは正直分からないですが、そういう意味で勉強させていただき、それ以上に楽しくお話をさせていただいていて、今回こういうコラボにつながったというわけですね。

 

浅羽 いろいろと本当にありがとうございます。今日のこの機会が、ステージ0から1へ、知らなかった、できなかったことをまずは「知る」いいキッカケになったと思います。この後はオープン・クエスチョンですね。「すごい人が来たけど、私とは違う話だし…」と聞き流すのか、あるいは自分の文脈で切実に受け止めて、「我が事」として一週間以内に、いや今日中に何か始めるのか、1から2へ、「できないことに気づいて行動している」ということが問われるんだろうと思います。私自身、このタイミングでリフレクションする絶好の機会となりました。

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

1 2 3 4 5 6
シノドス国際社会動向研究所

vol.267 

・堅田香緒里「ベーシック・インカムとジェンダー」
・有馬斉「安楽死と尊厳死」

・山本章子「誤解だらけの日米地位協定」
・桜井啓太「こうすれば日本の貧困対策はよくなる――貧困を測定して公表する」
・福原正人「ウォルツァー政治理論の全体像――価値多元論を手がかりとして」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(11)――シンクタンク人生から思うこと」
・杉原里美「掃除で、美しい日本人の心を育てる?」