2014.04.21

カジノと街づくり――複合型施設の可能性とは

木曽崇×木下斉

社会 #synodos#シノドス#カジノ#IR推進法#街づくり#統合型リゾート#ギャンブル

昨年12月に国会に提出されたカジノ推進法(IR推進法)。カジノ設立は、地域の街づくりとどう関わっていけるのか。国際カジノ研究所所長・木曽氏と、長年街づくりに関わる木下氏が語り合う。α-Synodos vol.146+147「GW目前!リゾート特集」より、一部転載する。(構成/山本菜々子)

カジノはこわい?

―― 今日はカジノと街づくりについてお話していただければと思います。「カジノ」と聞くと、ネガティブなイメージをもっている方も多いかもしれません。賭け事に打ち込んで人生を無駄にしてしまったり、マフィアが牛耳っていたり、カジノの奥には隠し部屋があって悪い親分がいたり……

木下 それは、映画の観過ぎなんじゃないかな(笑)。

木曽 私も、こんな外見なので恐い人によく間違えられます。

木下 ははは(笑)。「賭け事はダメだ」とキレイごとで言いますが、現実解としてずっと昔からあったわけですし、今もあるわけですからね。建前で議論しているから、間違った方向に議論がいってしまう。これはあらゆる分野で新産業が起きないのと一緒ですね。良からぬことが起きないように止めておこう、となってしまう。

木曽 よく言われるカジノのネガティブなイメージは、実態と離れていますね。

木下 へー、ネガティブなんですね。僕はそもそもそんなネガティブなイメージはないですね。日頃カジノにいったりするわけでは当然ないですが、知人などが「ラスベガスとかマカオとかに観光に行った時に寄ってきた」という話も普通に耳にしますしね。とはいえ、色々な意見が出やすい分野ではありますよね。さて、いま、日本でもIR推進法が進んでいるようですが、そもそも、IRはどのようなものなのでしょうか。

木曽 簡単に言うと、カジノを含んだ複合商業観光施設です。カジノだけでなく、ホテルや飲食店、ショッピングセンター、国際会議場、美術館といった様々なものがある施設だと思ってください。

よく勘違いしている人がいるのですが、日本のカジノ合法化ではパチンコ屋さんのようなものが全国津々浦々にできるわけではありません。現行の案では、国内で2~4の施設からはじめて、最大10まで増やしていくイメージです。希望している自治体に対し、国が認定を与えるかたちになっています。

木下 法律ができたからと言って、日本中にカジノができるわけじゃないと。

木曽 そうです。また、カジノ反対派の中には「こんなものに税金を使って!」という人もいます。しかし、IR推進法は基本的に民間資本による開発を前提にしています。カジノの運営許可を与える代わりに、周辺の複合商業開発をやってくださいという話です。

「やりたい人はいますか?」と民間企業に問うて、その中で一番地域振興に役立ちそうな案を出した企業を選んでいく。ですから、民間事業者が資金調達をするし、投資リスクも運営リスクも負います。税金を使うわけではありません。

木下 IR法の実現可能性はどうでしょうか。

木曽 去年の12月に衆議院に提出されて、今は内閣委員会での審議を待っています。起案をした議員連盟に200名ちょっとの国会議員がいますし、提出の際に自民党および野党をふくめて3党から法案了承も得られているので、審議さえ行なわれれば実現する可能性は高いと思っています。問題は、今期の常国会で審議入りが出来るかどうかですね。これに関しては微妙なところです。

(写真:左から木下氏・木曽氏)
(写真:左から木下氏・木曽氏)

どのような機能をつくるのか

木下 地域振興の重要なポイントは、「他にやれないことをやれるようにする」ことです。競争ってそういうものです。みんながやっていないことをやるからこそ、あらゆる競争で優位に立てます。今までの地方振興の大きな間違いは、47都道府県、同じことができるように支援策をしてきた点です。

横並び、護送船団、平等といえば聞こえはいいですが、もめないために適当に全部にやってしまうだけです。そしてみんなで同じことをやったら、特別ではなくなりますから、共倒れになったりするんですよね。

さらに今の地域振興は国内だけでなく、海外の地域とも競争環境にあったりするので、国内でいくら調整したとしても、意味がなくなってしまっているんです。

カジノ誘致のメリットは、少なくとも国内ではみんなのやっていないことができる点です。立地優位性があると判断される限られた国内地域だけにできる、産業振興や地方振興は、日本では結構画期的ですね。

木曽 開発の数を限定するのはその発想です。限定をすると、その地域の収益は上がります。寡占状態とも言えますね。その代わりに、行政側が望むような余分な投資もしてください、と民間企業に求めているのが、IR推進法の考え方です。たとえば、今まで行政が建ててきたコンベンションセンターなどを替わりに建ててもらう。

木下 なんでも公共資金で建てる発想は日本だけですよね。スタジアム建設だって、海外はほとんど民間資金導入してやっています。民間だと利益を出さないと維持できないのでイノベーションがどんどん起こる。たとえば、スタジアムを併設してホテルを建てて、その部屋から試合を観戦できるサービスをしたりと、知恵が生まれます。

木曽さんにお聞きしたいことがあります。カジノ間でももちろん国際的な競争がありますよね。そこを勝ち抜くためには、カジノ以外のプラスアルファが必要だと思います。そこから、統合型リゾートの構想があるのでしょうか。

木曽 それもありますね。ギャンブルというサービスは基本的に差別化できないんです。テーブルゲームはみんな同じテーブルゲームです。カジノごとに違ったものを提供していませんし、Aカジノでできることは、ほぼBカジノでもできます。

差別化をしていくには、ギャンブル以外の観光機能が大事です。カジノで稼いだお金を、周りで使って楽しんでもらうビジネスモデルになっています。

木下 立地場所は重要ですか。地の利のような、もともとその土地にいろんなものがあるとか。

木曽 とても重要です。ギャンブルだけでは差別化が難しい中、立地地域がユニークさをどう出していくのかは、大きな問題だと思います。

しかし、いまのカジノ業界では、統合型リゾートの中に何をつくるのかという話ばかりされています。展示場をつくれ、美術館を建てろ、観覧車をまわせ、日本風のお城のデザインでいこうとか……(笑)。でも、そんなもんは民間企業が提案していくものだから、誘致する側が考えてもしょうがない。

本当に考えるべき問題は、立地地域だけのユニークな資産と、統合型リゾートとをどう融合するかです。統合型リゾートのような集客力のある施設が、周囲にまで経済効果をもたらすためには、特定の条件が必要だと思っています。どうやって施設と外の地域を融合させていくのか。木下さんにもしアイディアがあればぜひ聞いてみたいです。

木下 ぼくが統合型施設で危惧しているのは、施設内に全部つくってしまうことです。全部をつくってしまと、外に出なくなる。昔のリゾート開発では、地元と施設が完全に切り離されていました。そして施設内が陳腐化すると、すぐに廃業につながり、施設は廃墟になってしまう。

カジノを設置する際、カジノ開発企業にとって世界で一番おいしい条件にしなければならないと私は思います。要望に出ているというコンベンションセンターなんて日本中既にあちこちにあるから、新たに建ててもらわなくていいと思いますね。そんなことよりも、施設と街との物理的な距離感をどう近くするか。間を結ぶ交通インフラなどを整理してもらうことをした方がよっぽど経済波及効果を追求すべきと思います。

たとえば、福岡空港は博多とタクシーで10分~15分くらいで移動できる距離です。だから、みんなギリギリまで街中で飲んで飛行機で帰ってきます。物理的距離感って経済波及では重要です。でも、もしそれが40分・50分かかったら空港で飲み食いしますよね。施設内で閉じてしまう。だから、経済波及を考える上で、立地と既成市街地との距離感を意識し、短時間でカジノと街を行き来できるインフラは必要だと感じます。

施設側からしたら、施設内で稼いだお金を施設内で使って欲しいかもしれません。でも、長い目でみたら立地地域と融合していき、他のカジノとは違う魅力をアピールした方が国際的にも差別化をはかれると思います。日本は、繁華街に出てもそんなに身の危険がありません。安心して夜中でも街中に行って、飲んだり食べたりできるのは素晴らしい魅力だと思います。

木曽 素晴らしいですね。お話を聞いていて、熱海のカジノ構想について面白いことを言っていた方を思い出しました。彼らも、特定の機能をカジノにわざと欠けさせることを考えていました。熱海では、宿泊機能は街中に埋まらないほどある。だとすると、そこに複合型施設を設置した場合、なんでもあるんだけど宿泊機能だけはつけない、という要件を出す計画を立てていました。必然的に統合型リゾートと街の間をお客様が行き来する状況がつくられるわけです。

木下 これは、面白いアイディアですね。日本は、高度成長期以降、あらゆる施設を作ってきました。宿泊施設もそうですが、住む人がいなくて空き家が増えている現状もあります。これからの地域振興のビジネスとしては、過去投資して回収が終わっているストックを新しい収入源の人たちに使ってもらった方がいい。

新しい施設を建てて、費用を回収しながら新しい人に使ってもらうよりも、リノベーションなどをして今ある施設を使った方が、効率的ですね。新しいピカピカしたホテルよりも、リノベーションホテルが良いという人もいるわけです。宿泊施設を欠けさせるというのは、その意味で有効なアイディアだと思いました。

どこに建てるのか

木曽 もう一つ、木下さんにお知恵をいただきたい点があります。用地選定についてです。今のところ、カジノの構想のスタートが「ここに使いたい用地がある」という自治体の動機からスタートするんです。最適立地を選ぶのではなく、土地のあるところに建てようとする。これは、変えなきゃいけません。

木下 そもそも余っている土地だから、最適立地とはいいがたいですよね。アクセスが悪いとか、そもそも高いとか、理由があって余っているはずです。

行政が開発して損を出して放置されている土地って全国でいっぱいあるんですよ。つぶしたら、その分を一気に税金から補てんしなきゃいけないから、細々と放置して続けているんです。その損を埋めたいがために、総合型リゾートでも建てようという発想ですね。自分達の過去の失敗を隠すのに、新しい事業を使うなんて、そういう考え方はダメですよね。

現実的に考えて統合型リゾートの設置エリアは、都市部エリアに限った方がいいです。去年から、中心部に都市機能移転をする動きが国交省も含めてやっています。その一環に組み込めばいいと思います。で、都心機能集中の基本計画を制定している自治体の都心部エリアに限る。そうすると、法律上の裏付けも出てきます。

木曽 いい考えですね。あくまで、中心エリアの再開発だと。

木下 はい、少なくとも時間的に移動可能な範囲という意味での中心部。中心部に近く、IRからの動線も確保されれば、波及効果で開発余地が生まれたり、商業機会が中心部でも生まれる可能性が高い。とんでもない外れたところにカジノをつくると、中心部とつなぐインフラを作るのに多額のコストがかかります。でも、都心だとそのインフラも最小限ですみますよね。そのほかに、病院だったり下水道だったり、はずれに作ったら費用が掛かってしまいます。

木曽 スマートでいいですね。しかし、実現は大変でしょうね。いろんな利害が絡んできますからね。

木下 地方議会だと簡単に決められないでしょうね。変な立地になるようであれば、国がちゃんとした立地適正するように中心街区エリアくらいには指定したほうがまだ利害で揺さぶられなくてよいかもしれません。

その先の実務的には、その後は自治体と投資する民間企業次第ですよね。そういう意味では、IRを活かすも殺すも、議会とかを整理つけられる自治体の経営感覚をもったトップの手腕次第とも言えます。トップがしっかりしていないと、結局のところ議長の土地になったりね(笑)。

木曽 そういったことは、まことしやかにありますからね(笑)。

木下 今の日本の「リゾート」へのイメージって、街中から遠くにあるイメージなんですよね。「リゾート」は街中に近接してつくるものだという概念にした方がいいですね。

パース図に気をつけろ

木下 結局、統合型リゾートが地方の政治的軋轢になる可能性が非常に高いと思っています。カジノがあるエリアの選出議員と無いエリアの選出議員で必ずもめるのではと懸念しています。

木曽 それは、ものすごくもめるでしょうね。

木下 カジノから金をとって、自分の地域に回せという風に内輪もめしてしまうと、せっかく来た産業がみんなにたかられて終わってします。

今まで、公共施設などは、成り立たないものを税金でやって、成り立たないからもっと税金をつかう仕組みでした。それよりは、自立して資本家が満足する金額で建てて、人も雇用して税金を納めてくれて、で十分なんです。それ以上のぞむ必要性はないわけです。

ですが、なかなか、人間は欲深いですから、カジノの方にあれをつくれ、これをつくれと求めてしまう。それをやらせればやらせるほど、地元はどんどん細っていくんですけどね。大いに設けて、大いに雇用してもらって、大いに周辺エリアにも波及してもらえるようにするという、利益を生み出す方向に意識を向けて欲しいですね。変な利益分配の方向ではなく。

今まで、公共施設を民間資本導入でやりましょうという話になっても、日本ではすごく建設費用が安くなった、良い建物が出来たという話を聞きません。それは、建て方を決めている行政、審議会とかの人がたてるスペックに問題があるのです。共用部が異様にでかい仕様だったり、特殊な工法が必要な仕様だったり、商業施設だったらありえません(笑)。そんなもののスペックで建てても民間は全然おいしくないんです。

だから、ぼくは、計画、開発、運営を統合して一つの民間事業者にやってもらうのが重要です。ぼくが一番懸念しているのは、カジノ基本計画を行政が立てて、建物になにをつくるかを盛り込んで、中に閉じる計画にして、それをどこかが入札で落として建てて、運営だけカジノの専門会社に任せる。これをやったらアウトだと思っています。

木曽 今の統合型リゾートに関しては、基本的に開発計画の基本的な内容に関しては、投資や開発リスクを負う民間事業者が提案すべきものであって、行政側は最低限の政策上の要件を設定したうえで、ベストなものを選ぶという形です。

木下 それは安心しました。

木曽 どうしても、地域の中で統合型リゾートの論議をしだすと、キレイなイメージ画を作りたがる人がたくさんいるんです。CGを駆使した完成予想図をつくってくる人が多いんですよ。それは、めちゃくちゃな間違いです。

木下 「パース図」ってやつですね。これはね、一番困るんですよ。絵が出ると、そういうものになるとみんな思ってしまうんです。区画化整理や再開発でもこれで大いに間違いが助長されています。

木曽 そうそう。そうなんです。

木下 震災復興でも、初期に壮大なパース図を出してしまった街は、今はそれを手仕舞いするのに苦心しています。

木曽 私も、海外で民間の投資家側について現地の自治体と交渉する仕事とかをやっているんですよ。そうすると一番困るのがパース図です。カジノ誘致をする自治側に経営コンサルなんかが入っていて、事前にパース図をつくるわけです。

彼らは地域の法制プロセスの中で、議会の承認や知事承認を得るときに、そのパース図を参考資料として持ち込んでいる。そうすると、政治的な決断はその「絵」を前提になされているので、最終的に民間側に要求するのは「この絵どおりに建てられる会社」なんです。

実際に、広大な敷地の中でカジノ開発する案件があって、そこで出たパース図がめちゃくちゃで、とても苦労しました。ここの景観が一番いいからと小高い山の上にカジノと宿泊施設を置いて、一方で山のふもとの湖に商業の中心を置いていました。でも、その間はどうやって結ぶのか、全く考えられていない。民間側としては到底有り得ない非効率な開発案なのですが、パース図を前提にして政治決定がなされてしまっているから、「知事がどうしてもこの案でいきたいと言っている」みたいな話が出てしまう(笑)。

木下 笑い話みたいに聞こえますが、よくあるんですよね。施設一つにとってみても、資金調達コストによって建てられるものは当然変わってきます。なのに、パース図に縛られてしまうのは、おかしいですよね。

木曽 絵は一人歩きしてしまいます。インパクトがあるんでしょうね。

木下 あれは、建築コンサルが孫請けのパース図制作会社に投げて、つくっていたりするんです。計画じゃなくて、妄想が入っていたりもする。これも街づくりの現場で実際にあった話ですが、某コーヒーチェンが一階に入った店舗のパース図を持ってきたコンサルの人がいて、「出店が決まったんですか」と聞いたら、「決まっていません。イメージです」と言われました(笑)。そんないい加減なものに振り回されたらかなわないですよね。

計画できるもの/できないもの

木曽 木下さんは「街づくりは不動産運用だ」という言い方をよくされていますね。私は、統合型リゾートの正当性として周辺の地価を上げる効果が高いことに注目しています。カジノ自体に観光客の吸引力があって、周辺不動産の商業的な価値が高まる面もありますが、それ以上にカジノが持っている機能的な部分もあるんです。

普通の観光地は、昼に遊んで、夜にごはんを食べて、飲んであとは寝るしかない。しかし、カジノは基本的に夜の商売です。夕食を食べて酒を飲んで、そこからはじまります。つまり、寝る前に商売がもう一回転する。

周りの商業施設ももう一回転できるんです。今まで、朝・昼・晩だったのが、そこに深夜が加わる。つまり、今まで三毛作だったのが、四毛作目まで含まれてくるんです。これが強い。

ぼくは、これを「深夜経済」と呼んでいます。街づくりってこれまでは物理的な場所を見がちでしたが、朝・昼・夜・深夜と、時間帯ごとに街づくりを考えた方がいいと思っているんです。

木下 それは、おっしゃる通りですね。ヨーロッパの街づくりでも、木曽さんの言う「深夜経済」、ナイトタイム・エコノミーが注目されています。クラブシーンや映画など、まさにご飯を食べて飲んだ後に楽しめるものが大事です。

これは、郊外とか離れていて車での移動が必要な場所では難しいですよね。カジノから街中への短距離インフラがあれば、街にくりだして、例えば稼いだお金を使おうとなります。どちらにしてもリゾートですから遊びにいきたいと思うでしょう。こうして深夜経済の拡大をしっかりと生み出せれば、それは不動産価値を上げる大きな要因になると思います。

木曽 統合型リゾートにないものが、街になければいけませんよね。そう考えた時に、盛り場のようなものが重要なのではと思っているんです。盛り場は、設計して建てるものではありません。自然発生的にできたものであって、つくろうと思っても作れない。そこにしかない魅力です。お客さんを外に出す要素だと思います。

木下 一定の猥雑性ですよね。近年においても日本の都市形成は純化する方向なんですよね。綺麗にすることを目指している。

木曽 おっしゃる通りです。私は夜の盛り場は、自然や文化資源に匹敵する観光資源だと思っているんです。北海道のすすき野や、福岡の中洲は夜の盛り場が観光資源として成り立っています。東京だって六本木や歌舞伎町にあったはずなのに、今の歌舞伎町は石原都政下の「都市浄化作戦」の後に、基本的に盛りがなくなってしまいました。どこに行っても、大型チェーンの居酒屋やカラオケばかりです。

木下 盛り場に価値があると思う人が少ないんですよね。少なくとも表立っては言わない(笑)。日本はナイトマーケットをどんどん規制してきました。でも、計画投資では達成できない盛り場を、街や社会が受け入れているのは発展的社会だと思うんです。計画からそぐわないものを排除していくやり方は誰でもできます。しかも、計画してできるものは、結局同じものに収束してしまう。都市計画の多くは、道路を広く整備して、その代り高い建物を建てるというものになってしまうわけです。でも、新宿・ゴールデン街のようなものは計画して作れないですよね。

木曽 絶対につくれないですね。

木下 絶対につくれないからこそ、価値があっていまだに続いています。一方で、計画して建てた再開発施設がダメになってしまう。人間にとってなにが魅力的なのか、とても示唆的だとおもいますね。

仙台に戦後焼け残った横丁が南と北にあるんです。都市計画上は火事が起きたら危ないからいつでもつぶしたい。北側の方は数年前に用地関係が整理ついて、再開発されました。しかし、全くつまらない居酒屋チェーンビルになり、全然人が来なくなってしまいました。南側は店が入れ替わりつつ残っています。特徴もあるから観光客もくる。魚民が入っているようなどこにでもある居酒屋なんて観光客の人はいかないじゃないですか。人間の欲求でできた盛り場に、開発が負けた例ですよね。

(続きはα-Synodos vol.146+147にて https://synodos.jp/a-synodos )

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プロフィール

木曽崇国際カジノ研究所 所長

国際カジノ研究所 所長。エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員。日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。日本のカジノ合法化はもとより、ナイトライフ全般の振興に尽力する。

この執筆者の記事

木下斉一般社団法人公民連携事業機構理事

1982年7月14日東京都生まれ。一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事、内閣官房 地域活性化伝道師。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、経営学修士。専門は経営を軸に置いた中心市街地活性化、社会起業等。著書に『まちづくり:デッドライン』(日経BP、共著)『まちづくりの経営力養成講座』(学陽書房)『稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則』 (NHK出版新書)など。公式サイト http://www.areaia.jp/ ( twitter : @shoutengai )

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