2025.10.01

英会話学習においてAIが絶対にできないこと――英会話上級者になるために必要なこと

AIが切り開いた新しい入口

AIによる英会話学習は、英語学習者にとっての「入口の壁」を劇的に下げました。

好きな時間に、好きなだけ練習できる。
外国人と話すのと違って、まったく緊張しないですむ。
発音の矯正も、文法のチェックも、単語力の確認も、AIなら迅速に対応してくれます。

AIは英語学習の入口を広げ、誰もが気軽に練習できる環境をつくりました。

しかし――ここで立ち止まって考える必要があります。
というのも、AIがあれば「人の指導」はいらない、という論調があるからです。

いくらAIが進化しても、ある地点から先には絶対に進めません。
AIが絶対にできないこと、それは日本語で考える回路を壊し、英語の発想に切り替える指導です。
そして、それは上級をめざす学習者にとって、決定的な欠陥となります。

翻訳思考――AIが壊せない壁

英語中級者の多くは、すでに十分な基礎力をもっています。
TOEICは750点以上。ビジネスメールも書ける。会議でも最低限は発言できる。
それでも――雑談や抽象的な話題になると、途端に英語が怪しくなります。

原因は、英語力の不足ではありません。
日本語で考えてから英語に置き換える「翻訳思考」の習慣にあります。

たとえば、友人や同僚との雑談で、「仕事に対する価値観」が話題に上ったとき。
日本人の頭に浮かぶのは、「自己実現」「やりがい」「社会貢献」といった日本語の抽象概念です。

そしてそれを英語に変換しようとします――
“self-actualization” “sense of fulfillment” “contribution to society” といった具合に。

辞書的には正しい。文法的にも正しい。
AIに入力すれば、「Perfect!」と返されるでしょう。

しかし、実際にこれを会話で口にすると、相手の反応は薄いはずです。
「ああ、そうですね」で会話が終わってしまう。

なぜでしょうか?

AIは「英語」がどこから生まれたのかを判定できません。
つまり、学習者が日本語発想をそのまま残したまま英語を使っていても、AIはそれを「正解」と処理してしまうのです。

AIは文法や単語の「結果」だけを評価する仕組みであり、あなたの「思考プロセス」には介入できません。

だからこそ、AIは翻訳思考を矯正できない。
これがAI学習の決定的な限界です。

ネイティブは体験で語る

この違いは、ネイティブが抽象的な話題を語る方法を見れば、一層はっきりします。

日本人の中級者は、「自己実現の大切さ」を、たとえば次のように語ります。

Self-actualization is very important for modern people.
(現代の人にとって、やっぱり自己実現が大事だよね)

文法的には正しい。意味も通じる。
日本語でのコミュニケーションであれば、問題はありません。
日本語ではこのような抽象的な文章でやり取りをするのは、一般的だからです。

しかし、このような英語は、一見、しっかりした英語に見えますが、コミュニケーションという観点から見ると、ほとんど無価値です。
新聞社説の一節、あるいは格言のような響きで、何が言いたいのかまったく伝わりません。

一方、上級者やネイティブは、次のように語ります。
比較すれば、ここで言わんとしていることが、よく理解できると思います。

“You know, I used to always worry about what others thought.
But when I started doing what I really wanted – like learning guitar even though I’m terrible at it – I felt more like myself.
That’s when I realized being true to yourself matters more than fitting in.”
(前はずっと、人からどう思われるか気にしてたんだ。
でも、本当にやりたいこと――たとえば下手でもギターを始めたとき――をやってみたら、自分らしくいられる気がした。
そのとき気づいたんだよね。人に合わせるより、自分に正直でいることの方が大事なんだって。)

この文章では、自己実現の重要性が、個人的なエピソードをもとに、具体的に語られています

コミュニケーションにおいて、どちらが優れているか、一目瞭然でしょう。
どちらが心に残るでしょうか?
どちらが「この人ともっと話してみたい」と思わせるでしょうか?

しかしAIは、この違いを指摘できません。
抽象的な翻訳を並べても「Good job」と返してしまう。
つまり、AIはあなたが「英語で発想していない」という本質的な問題を見抜けないのです。

必要なのは「思考の英語化」

中級者が上級者をめざすとき、本当に必要なのは、単語力や文法の知識を増やすことではありません。
日本語の抽象概念を壊し、英語の発想で再構成する「思考の英語化」が、必要なのです。

たとえば「責任感」。
翻訳思考なら “Responsibility is important.” (責任感は大事だよ)などと言うでしょう。

しかし思考の英語化を経た学習者は、
“When I say I’ll do something, I follow through.”(ぼくはやると言ったことは、必ずやるよ)と表現できるようになります。

「創造性」ならどうでしょうか。
“Creativity is necessary for innovation.” (創造性がイノベーションには大切だ)と、格言のような翻訳をする代わりに、
“I like finding new ways to solve old problems.”(古い問題に、新しい解決法を見つけるのが好きなんだ)などと言えるようになります。

これは、たんなる言い換えではありません。
日本語の発想を捨て、英語の発想に切り替えた結果として生まれる言葉、表現なのです。

AIにはこの訓練ができません。
翻訳思考をつづけても「正しい英語」と評価してしまう。

実際の変化――受講者の事例

この違いがどれほど大きな意味を持つのか、シノドス英会話の受講者の例を見てください。

受講前の話し方:
“I believe work-life balance is crucial for productivity and mental health in contemporary society.”
(現代社会において、生産性とメンタルヘルスのためにワークライフバランスは不可欠だと考えています)

正しい英語です。
しかし、抽象的で教科書的。
具体的に何が言いたいのかがさっぱり分からず、相手の心にはまったく響きません。

受講後の話し方:
“I used to work 10 hours a day and felt proud of it.
But when my kid asked why I was always tired, I realized something was wrong.
Now I leave the office at 6, and honestly, I get more done because I’m actually focused during work hours.”
(前は1日10時間働いて、それを誇りに思ってたんだ。
でも子どもに「なんでいつも疲れてるの?」って聞かれたとき、何かがおかしいって気づいた。
今は6時にオフィスを出るようにしてるけど、正直なところ、仕事中に集中できるから、むしろ前より成果が出てるんだ)

同じ「ワークライフバランス」でも、後者は具体的でリアル。
相手は情景を思い浮かべ、共感し、「もっと話を聞きたい」と感じます。

これこそが「思考の英語化」の成果です。
そしてこれは、AIが絶対に導けない変化であり、境地です。

本当の上級への道――AIの限界を超えて

この記事を読んでいる英語中級者のあなたは、すでに十分な基礎力をもっています。
足りないのは知識ではなく、英語で発想し、語る力です。

AIは優れた練習相手です。
流暢さを育て、文法を直し、発音を整える――その役割は大きい。
しかし、翻訳思考を壊すことと、英語で考える回路を築くことは、AIには絶対にできません

人間のコーチは、言葉の運び方や沈黙の間から、あなたが日本語で考えているかどうかを察知できます。
そして、あなたの具体的な体験を引き出し、それを英語で再構成させる。
この働きかけは、人間にしかできない指導です。

シノドス英会話は、この「思考の英語化」を最高到達点として掲げています。
AIを英会話学習に活用することは、いまや不可欠です。
しかし、AIが切り開いた入口を踏み台にし、その先で、真に英語のコミュニケーションに必要な発想とスキルを身につける。
それが、あなたを上級者へと押し上げる唯一の道です。

AIが絶対にできないこと――それを実現するために、シノドス英会話は存在します。

中級から上級への移行に苦労しているならば、ぜひ一度ご相談ください 👇

英語を学んできたのに話せない。

問題は、知識ではなく“思考と英語が結びついていない”ことにあります。

「単語は知っているのに、言葉が出てこない」
「訳しながら話そうとして、途中で止まってしまう」
——それは、 語順感覚や基本的な動詞の使い方が身についておらず、
頭の中で一生懸命、英作文しているからです。

英語は、知識を積み重ねるだけでは話せません。
日本語で考えてから訳すのではなく、自然に英語で発想できるようになること。
そのための“頭の使い方”を育てることが、英会話の出発点です。

シノドス英会話では、語順・動詞・思考を軸に、
“話すための英語”を一から育てる個別コーチングを行っています。