2025.10.30
単語をたくさん覚える必要がない理由
英会話を学ぶ人の多くが、こう感じています。
「英語が話せないのは、単語を知らないからだ」と。
そうした思い込みから、単語帳を何周もし、アプリで暗記し、難しい語彙をひたすら増やそうと努力しています。
けれども、いざ会話になると──
頭に浮かばず、言葉が出てこない。
じつは、ここには大きな誤解があります。
英語を話せない理由は、単語を“知らない”からではなく、単語を“使えない”から。
そして、もうひとつの誤解。
英会話に必要な単語の数は、私たちが思っているよりもはるかに少ないのです。
語彙研究の第一人者ポール・ネーションによれば、日常会話の95%以上は2,000〜3,000語の高頻度で使われる単語でカバーされます。
つまり、「難しい単語をたくさん覚えなければ話せない」という考えは、根本的な誤解なのです。
この記事では、英会話における単語学習の「量の神話」と「使えない語彙の落とし穴」を整理し、本当に“使える単語力”とは何かを考えていきます。
英会話に必要な語彙数は意外と少ない
「英語を話すには、何万語もの単語を覚えなければいけない」と思っていませんか?
実際には、そんなに多くの語彙は必要ありません。
多くの研究で、日常的な英会話の95%前後は、わずか2,000〜3,000語の基本単語で成り立っていると報告されています。
つまり、頻度の高い単語をしっかり使いこなせれば、日常生活や仕事上のコミュニケーションは十分に成り立つのです。
たとえば「環境問題」や「教育」などの社会的トピックでも、専門用語を知らなくても意見を言うことはできます。
“global warming”(地球温暖化)という単語を知らなくても、“the earth is getting hotter”(地球がだんだん暑くなっている)と表現すれば、相手にはしっかり伝わります。
英語の会話では、難しい単語を使うことよりも、知っている単語を組み合わせて、自分の考えを明確に伝えることの方がはるかに重要です。
実際のところ、ネイティブスピーカーでさえ、日常会話で使っている単語数は3,000〜4,000語程度にすぎません。
つまり、英語が話せるようになるために必要なのは、「難しい語彙を増やすこと」ではなく、基本的な単語を自在に使いこなすことなのです。
「知っている単語」と「使える単語」は違う
多くの学習者が、以下のような経験をお持ちだと思います。
単語帳で何度も覚えた単語が、いざ会話になると出てこない。
「知っているのに、口から出てこない」──この状態です。
これは決して記憶力の問題ではありません。
単語を“知っている”ことと、“使える”ことは、まったく別の能力だからです。
頭の中にあるだけの単語は、受け身の知識(受容語彙)です。
一方、会話の中で瞬時に使える単語は、使い慣れた知識(発表語彙)と呼ばれます。
この「知っている」と「使える」の間には、かなり大きな距離があります。
その距離を埋めるには、単語を“使う練習”が必要です。
そのためには、単語帳を眺めるだけではなく、実際に文をつくったり、話す中で使ってみたりする必要があります。
そうすることで、はじめて「使える単語」に変わります。
たとえば “frustrated” という単語を覚えたなら、“I was frustrated when I missed the train.” のように、自分の経験と結びつけて使ってみる。
そうすることで、その単語は「自分の言葉」として定着していきます。
つまり、単語学習の本当の目的は「覚えること」ではなく、覚えた単語を自由に使えるようにすることなのです。
単語学習にまつわる誤解
英語学習では、「単語をたくさん知っている人ほど話せる」というイメージが強くあります。
しかし、これは半分しか正しくありません。
ここでは、よく見られる3つの誤解を整理してみましょう。
① 難しい単語を使わないと知的に見えない
実際にはその逆です。
ネイティブスピーカーほど、日常会話では短く・簡単で・わかりやすい言葉を使います。
“utilize” より “use”、 “assist” より “help”。
英語では「やさしい単語で明確に言うこと」が、知的で洗練された表現とされています。
② 語彙数が多ければ表現力も高い
語彙数はたしかに大切ですが、それだけで表現力は決まりません。
むしろ、限られた単語を自在に組み合わせて使える力のほうが、実践的な会話でははるかに重要です。
たとえば “make” や “get” のような基本動詞も、
“make a decision” “get better” “get lost” のように使い分けるだけで、豊かな表現が可能です。
③ 一度覚えた単語は忘れない
単語は使わなければ、どんどん忘れます。
記憶の研究でも、「覚えたことを思い出す」「間をあけて復習する」ことで定着率が大きく上がるとされています。
つまり、単語学習は一度きりの暗記ではなく、繰り返し使い、思い出すサイクルをつくることが何より大切なのです。
こうして見てみると、単語学習において大事なのは「数」ではなく「質」。
そして「知識」ではなく「運用」です。
どんなに単語を知っていても、使えなければ“語彙力”とは言えません。
「使える単語」に変えるために
では、覚えた単語を「使える単語」に変えるにはどうすればいいのでしょうか。
ポイントは、覚えるだけで終わらせず、使う場面を通して記憶を定着させることです。
以下の4つのステップが効果的です。
① 使う場面を想定して覚える
単語を文脈のない状態で暗記しても、会話では出てきません。
「空港で使う」「自己紹介で使う」「ミーティングで使う」など、具体的な場面を思い浮かべて覚えることで、記憶が“使えるかたち”になります。
② 文や会話の中で使ってみる
単語を単体で覚えるよりも、短い文やフレーズで使う練習をしましょう。
たとえば “recommend” を覚えたら、“I recommend this movie.” のように、自分の言葉で文をつくってみる。
こうした“生成”の練習こそ、語彙を使える知識に変えるプロセスです。
③ 繰り返し思い出す
人の記憶は時間とともに薄れます。
覚えた単語を忘れにくくするには、一定の間隔をあけて何度も思い出すこと(間隔効果)が重要です。
単語アプリの「復習間隔」や、自分でつくる小テストを活用すると効果的です。
④ 自分の経験に結びつける
単語は、自分の感情や体験とつながると強く記憶されます。
たとえば “nervous” を覚えたら、“I was nervous before my first presentation.” のように、実際の経験と結びつけて使ってみましょう。
記憶科学でも、“意味のある学習”が長期的な定着を促すとされています。
こうして単語を「覚える対象」から「使う道具」に変えていくことで、あなたの語彙は本当の意味で“生きた単語力”になります。
英語を学んできたのに話せない。
問題は知識量ではありません。
あなたの脳が「英語で思考を組み立てる回路」を持っていないだけです。
「文法や単語は知っているのに、言葉が出てこない」
「訳しながら話そうとして、途中で止まってしまう」
それは、頭の中で日本語を英語に変換しているからです。 これは「翻訳回路」であって、「英語の思考回路」ではありません。
実際の会話では、日本語の台本など存在しません。
思考を直接、英語の語順で組み立てる——
この回路がなければ、いくら知識があっても話せないのです。
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