2016.05.02

すれ違いを起こさないために――東日本大震災から学ぶ支援の届け方

佐藤一男 / 防災士

社会 #東日本大震災#震災復興

東日本大震災で被災し、陸前高田市米崎小学校体育館避難所で2か月間避難生活をしました。そのなかで、多くの方から支援を届けていただきました。何もかも失ったなか、空腹を満たし、寒さをしのぎ、辛さを忘れることができました。感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。

しかし、思いがすれ違ってしまい、思いを受け止め切れなかった物資や活動があったことも確かです。その思いの「すれ違い」は、なぜ発生するのか、どうすれば「すれ違い」を起こさずに済むのかを考えました。

支援をいただいた身でありながら失礼なことであることは承知しています。しかし、東日本大震災以降も続く新たな被災地発生のニュースと、そのなかで「支援したい」人に対して発せられるクレームを見て、なにかできないかと筆をとりました。もしかすると、大変失礼なことも書いているかもしれません。

それでも最後まで読んでいただければ、支援したい人が支援を受ける人へすれ違いなく思いを届ける方法と考え方がまとめてあります。最後までお読みください。伏してお願い致します。

なにを失ったのか

生活するすべてのものを失ったのが、東日本大震災です。津波が自宅を押し流しましたので、すべてを失いました。衣類、生活用品、車、仕事(収入)、自宅、楽しみ、希望、中には家族まで。それが「被災する」ということです。平成26年8月に発生した広島の土砂災害でも、平成27年9月に発生した関東・東北豪雨でも、平成28年に発生した熊本地震でも、被災した人は同じように多くのものを失いました。

支援物資と支援活動について

まず、私たちにいただいた、支援物資をあげたいと思います。ただし、このなかには、トラブルの元になったものもありますので、全部を参考にするのは控えてください。

水、衣類、毛布、食料、衣料品、靴、調味料、サランラップ、茶碗、コップ、マスク、歯ブラシ、化粧品、タオル、ポリタンク、自転車、バイク、漫画本、オモチャ、ペン、ノート、模造紙、パソコン、携帯電話、携帯電話用バッテリー、タブレット、電池、発電機、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、机、懐中電灯、ラジオ、たばこ、お酒類、コーヒー、ガソリン、軽油、灯油、こいのぼり、イルミネーション、ライター、千羽鶴、寄せ書き、等々、あげればきりがありません。

また、支援いただいた活動についてもあげたいと思います。

炊き出し、避難所運営の手伝い(受付や物資の仕分け)、医療、弁護士、税理士、司法書士、洗濯、お風呂、体操、子どもの遊び相手、散髪、マッサージ、傾聴活動、お話し相手、歌、漫才、落語、太鼓、家の片付け、泥かき、草取り、等々、こちらもあげればきりがありません。

せっかくの物資と活動ですが、メディアやネットでは様々な注意点があげられました。私の調べた範囲でまとめると下記のようになります。

<支援物資について> 

(1)一つの箱にいろいろなものを詰めないでください

(2)箱には、四方に中身を書いてください

(3)着古した下着や靴下は送らないでください

(4)生ものを送らないでください

(5)「いらないから送ろう」というものは、もらってもいらないと思ってください

(6)集めていないと書いてある物は送らないでください

(7)いつまでも物資を送らないでください

(8)千羽鶴はいりません

(9)模造紙を張り合わせたような大きなサイズのメッセージはいりません

<支援活動について >

(1)捜索活動を最優先にさせてください

(2)災害発生直後は道路の整備が十分でないため渋滞が発生します

(3)自己完結で活動してください

(4)被災者に負担をかけないでください

(5)危険な場所に入らないでください

(6)犯罪目的だと間違えられるような場所には立ち入らないでください

米崎小学校避難所の例も紹介しながら、これを一つずつ解説します。

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支援物資を送る際の注意点

(1)一つの箱にいろいろなものを詰めないでください

いろいろなものが入っているとすべての箱をあけて整理しないと配布できません。特に衣類は、できるだけ同じものだけを入れて送ってください。被災地での物資の仕分けは、場所が少ないのです。効率化にご協力お願いします。

米小体育館避難所で実際にあった話ですが、バナナを衣類で包んで送ってきた方がいます。バナナが傷むことを心配した人の配慮だと思います。ですが、バナナが入っていることを配布するときまで気がづかず、バナナから出た汁で衣類がダメになっていたことがあります。衣類は、急いで配布するとは限りませんので、ご配慮ください。

(2)箱には、四方に中身を書いてください

物資はいったん、避難所内の一角に積み重ねられます。私たちの場合は、時間を決めて、今日は衣類配布、今日は靴の配布、明日はタオルの配布などと順番に配布していました。なにが入っているか、どのように積み重ねても、どこから見てもわかるように、箱の四方に品名を書いていただけると仕分けと配布がスムーズです。

(3)着古した下着や靴下は送らないでください

洗濯したものであっても、下着などの直接肌につけるものだけは、古いものは避けてください。また、物資置き場にある程度の期間保管する場合もありますので、古い下着ですと匂いが移ってしまうこともありました。ほとんどを地域の焼却所で処分せざるを得ませんでした。

(4)生ものを送らないでください

いただいたからといって、すぐに消費できるとは限りません。被災から日数が経ち、支援が安定してくると消費を急がなければいけない食品が出てきます。そこに生ものなどが届くと、食事の計画に影響が出ます。大量に送ってくださる場合は、発送の前に連絡をいただけると食材の調整がしやすくなり、ありがたく思いました。

(5)「いらないから送ろう」というものは、もらってもいらないと思ってください

子どもが大きくなり使わなくなったオモチャなどがまとめて届くことがあります。中には壊れたオモチャや揃っていないカードゲームがありました。これも焼却処分せざるを得なくなり、着古した下着と同じく被災地の焼却場の負担となります。

(6)「集めていない」と書いてあるものは送らないでください

だんだんと日数がたってくると、被災地の行政から「○○は足りています」と発信される時期に入ります。物資を保管するにしてもスペースは有限です。作業効率が悪くなりますので、行政は近くで手に入れられるようになったものから、受け入れを順に中止します。

また、行政が十分だと判断したものは、近いうちに多くの避難所でも配布されます。ですので、せっかくいただいても余ってしまい、有効に活用されない可能性もあります。行政が支援をうけとらないと判断したものは、その地域の避難所でも必要のない可能性が高いでしょう。

(7)いつまでも物資を送らないでください

「被災地」と呼ばれる地域もいつかは商売が再開されます。支援物資により、せっかく再開した商売が立ち行かなくなるようなことがないようにご配慮ください。ただし、現地購入による物資は、被災した人と、商売を再開した人の両方を支えることができます。

体育館避難所を卒業し仮設住宅に入ったときには、支援活動としてバーベキュー大会をしていただきました。その際、現地購入のお肉や野菜を使用していました。それも、現地の情報をしっかり受け止めている人だからこそできたことでしょう。

(8)千羽鶴はいらない

ネット上で話題になりましたが、避難所で生活している人というよりも、物資の仕分けと配送を担当した人の言葉でしょう。仕分けと配送を「作業」だと考えると、優先順位の低い「千羽鶴はいらない」と思うのかもしれません。ですが、私たちの避難所に届けられた千羽鶴はバスケットリングにぶら下げており、子どもやおばあちゃんは喜んでいました。

とはいえ、避難所解散のときには、狭い仮設住宅にもっていくわけにはいきません。かといって焼却するのも気が引けます。私たちは近くの保育園に託しました。その後、子どもたちに分けられ、各家庭に持ち帰りました。

(9)模造紙を張り合わせたような大きなサイズのメッセージはいらない

避難所は、多くの場合大きい建物です。ですが、避難が長期化すると壁が物資で隠れてしまったり、必要な情報を書いた掲示物が貼られます。メッセージを貼る場所が減っていくのです。いただいたメッセージは必ず一度は貼りましたが、ずっと貼り続けるわけにはいかず、次のメッセージをいただくとはずしていました。そして、千羽鶴と同じように、はずしたあとに焼却できず、避難所解散の際には行き場を失いました。私たちの場合は、近くのコミュニティーセンターに集め、短期間ですが掲載していました。

ここまで、いくつか注意点を書きました。知っていてほしいのは、個人宅に送るのでなければ、物資が被災者に直接届くことはありません。たとえば、自治体に物資を送ると、一度集積所で品目ごとに仕分けし、避難所に送ります。集積所には何千、何万という荷物が集まります。仕分けだけでもかなり大変な作業です。

ですので、「男性用・上着・Lサイズ」のように一つの箱には一つの品目を入れてください。その際、(2)で取り上げたように箱の四方に、大きく内容を書いていただけるとどこからでも確認できます。「一箱分も同じサイズの男性用の上着なんかない」と思われるかもしれませんが、ご近所に声をかけて集めてみてください。仕分けの負担が減るので、とてもありがたい一箱になります。

私たち米崎小学校仮設住宅の住民も2014年10月にフォトジャーナリスト安田菜津紀さんとのご縁でシリア難民に衣類を送りました。すぐにダンボール10箱を越える衣類が集まりまり、東日本大震災の経験を踏まえて、どの段ボールになにが入っているのかわかる形で送りました。

ちなみに、災害後、すぐに衣類を送りたいと思った場合、なにを送ればいいのでしょうか。もし、被災した地域が寒いと想像できるときは、まずは、ジャンパー・オーバー・コート類を送ってください。東日本大震災は3月に災害発生し、熊本地震でも屋外避難した人もいます。何度も繰り返すようですが、被災地には物資が多く届き、被災者の手に渡るには時間がかかります。優先的に防寒着だけを送っていただけると、非常に助かります。

また、物資だけではなく、義援金や支援金を寄付する方法もあります。日本赤十字でもコンビニでも被災した県や市の行政でもかまいません。義援金は直接被災者に届けられます。支援金は被災した人を支える活動に使われます。失ったものは、届けていただいた「物資」だけで賄えないことも記しておきたいと思います。

支援活動についての注意点

ここからは、支援活動について、書ければと思います。

(1)捜索活動を最優先にさせてください

災害発生後、一週間ほどは、生命を守る捜索活動などが最優先です。捜索活動に集中している人に、避難所の場所を聞いて道案内してもらうことは、避けてください。

(2)災害発生直後は道路の整備が十分でないため渋滞が発生します

被災発生地域では、捜索の他にも優先しなければいけない作業がたくさんあります。水道や電気の復旧作業、傾いて危険になった建物の撤去、応援医療や自衛隊の通行など、あげればきりがありません。災害が発生した地域は、ナビ機能などはあてになりません。場合によっては新しい道もつくられます。

ボランティアさんが活動できる環境が整いましたら、募集と同時に通行可能な道路が発表されます。通行可能と表示されていない道路は緊急車両等の専用道路の可能性もありますので、必ず、提示された道を通行してください。自分がボランティアに不慣れだと感じている場合は、ボランティアバスなどを活用するのが安心です。

(3)自己完結で活動してください

ボランティアさんの募集がはじまったばかりのころは、営業店舗も少なく、物流も完全ではありません。被災現場に来てから「お弁当屋さんはどこですか?」などということのないように情報を集め、ネットなどで確認し、あると確信できないものは被災地域に入る前に十分な量を確保してから来てください。復旧直後は、店舗も混み合います。情報を確認し、被災者の分を購入しないように配慮をしていただければと思います。

また、トイレは数も限られ混み合います。体調管理も忘れずに。疲れたと感じたら活動を中止して休んでください。体調を崩しても病院は込み合っています。

(4)被災者に負担をかけないでください

炊き出しや片付けなどの活動をした後、被災した人に現地の案内を依頼する人がいました。避難所で休んでいるからといって、運転の依頼や長時間の拘束はご配慮ください。「ボランティアにいきたいので車で迎えに来てください。帰りも送ってください。」という申し出もありましたが、これは、丁重にお断りしました。

(5)危険な場所に入らないでください

ボランティアの受付がはじまったとしても、完全に元通りではありません。崩れかけた崖や、陥没した道路など、危険な場所は沢山あります。「記念に」と倒壊しそうな建物に近付くのはやめてください。特に地震による被害が発生した地域ですと、高い確率で余震があります。

(6)犯罪目的だと間違えられるような場所には立ち入らないでください

被災地には、良心のボランティアさんに混じって、犯罪目的で来るような人もいます。地域の人は警察などと連携して警戒にあたっています。活動場所以外の建物に立ち寄ると、疑われることもあります。

被災現場は、当然ながら災害が発生した場所です。地震や噴火による災害の場合、被害が繰り返される可能性が高いのです。ボランティアに来ていただいた方が、危険な目にあってしまうのは本末転倒でしょう。被災地にいくときはどうなっているのか必ず情報を仕入れ、想像してください。ガレキを撤去した地域では、釘や金属片によるパンクもありました。

また、ナビだけを頼りにコンビニや公衆トイレをあてにすると、休業していたり、建物ごと無くなっている場合もあります。必要な荷物も、現地で調達するのは難しいです。とはいえ、現地の商店が復活してきたら、ぜひ食事と買い物をお願いします。

以上、大変に失礼な内容もありました。言うまでもなく、支援物資と支援活動には心がこもり、ほとんどがありがたいものでした。ですが、今後の災害現場に生かしていただきたいと考え、書かせていただきました。

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支援は断りづらい

支援はすべて善意からはじまります。だからこそ、物資も活動も断りづらいのです。いただいた物資のなかで使わなかったもの、使えなかったものも処分しづらい。古い肌着やパンツでさえも処分しづらいのです。

声をかけていただいた活動は、できる限り受け入れ、求められれば対応もしました。支援活動のために学校内の施設を自治会の名前で借りたこともあります。活動当日に使う資機材を買ったり借りたりして用意したこともあります。借用費用や購入費用を支払ったこともあります。それでも断ることは難しかったのです。

もちろん、ほとんどの支援団体はまったく負担をかけないように配慮してくださいました。活動に必要なものをすべて持ち込み、ごみ一つなく帰っていく団体もありました。

しかし、私たちの避難所ではありませんが、このような事例も聞きました。あるグループから連絡があり「なにか活動をしたい」とのこと。「なにができますか」と聞くと「花植えならできます」とのことです。当日は、花の苗、シャベル、軍手、プランターまで自治会が用意してお客様のように迎え、花を植えて帰っていったそうです。苗代もプランターも自治会の負担。帰ったあと、「どっちがボランティアかわからんねぇ」との声が被災者から聞こえたそうです。

支援のミスマッチを防ぐために

支援活動をする団体と、受ける団体の間でミスマッチが発生しました。支援したい団体は必ず「なにに困っていますか」と聞きます。しかし、私たちはすべてを失っているのですから、すべてに困っています。

そこで必要なのは、支援する側の「自分たちの得意分野は○○です。必要ですか?」の一声でした。米崎小学校の避難所では「皆さんはどのような団体ですか?なにを得意としているのですか?」と聞き、ミスマッチを防ぎました。

パソコンをつくっている会社に避難所内の物資の整理をお願いするより、避難所事務用のパソコンを提供してもらった方がいいでしょう。学生団体の場合は、お金のかかるパソコンよりも、体力勝負でやってもらえる物資の仕分けなどを頼みたい。ぜひ、万が一の時には、なにが得意かを教えてもらえればと思います。

被災地に時間を

大災害が発生し、地域以外にも多くの人に支えられました。しかし、震災直後には地域の市役所の方、社会福祉協議会のみなさん、消防署職員・消防団員、警察官、自衛隊員……このような人々にまずは支えられます。通常業務をこなしながら、使われないかもしれない万が一のマニュアルをつくり、訓練を繰り返してもなお、対応しきれないのが災害です。

それなのに、災害が発生すると「なにをやっているんだ」「準備が足りない」とクレームをいれる人がいます。被災直後の現場で必要なのは時間です。反省も必要ですが、まずは現場の人から時間を奪わないでください。

東日本大震災後に……

東日本大震災後にも、日本では数々の場所で災害がおきました。その現場から届いた声も紹介します。

東日本大震災では多くの店舗を失い、計画停電も行われ、物流はストップしたままでした。ほとんどなにもない状態だったのです。物資の運びこみは1か月以上つづきましたが、なにもない状態でしたので、かなりありがたく利用しました。

しかし、それが東日本大震災後の、被災地で困った事態を引き起こします。広島市の土砂災害でも常総市の水害でも、一気に物資が全国から流れ込みました。しかし、東日本大震災とは違い「生活に必要なものがない」という状態は一時的なものでした。道路が復旧すれば、すぐに買えるのです。しかし、物資が大量に入ってしまったため、周辺市町村の店舗の売り上げは落ちました。

物資の仕分けや受け取りのために、行政職員に負担がかかりました。各行政からも「物資の受け取りは中止します」と発信していましたが、それでも止まらなかったようです。次の万が一の際には、被災した現場がどのような状況なのか、行政からの情報を確認して「必要なものを必要な時期に」送ることが求められているでしょう。

まとめ

冒頭のお世話になった支援物資の例として、「トラブルの元になったものがあります」と書きましたが、不要なものはありませんでした。一つの箱のなかにいろんなものを入れると仕分けに大量の人員と広い場所が必要になったり、物資が大量にあることで周辺の店舗の売り上げが落ちたりと、問題は物資そのものではなく送り方とタイミングにあると私は考えています。

支援物資は、被災した人だけでなく、被災地へ荷物を運ぶ宅配便、荷物を受け取り仕分けする人、連絡係と配達係として避難所を回る役所の職員とボランティアなどの手を通ります。そのすべての人の動きがなければ、支援物資は被災者の元に届かないのです。

ですので、テレビや新聞で見る被災者だけではなく、間にいる彼らの存在も想像してみてください。そうすることで、いつどのようにすれば自分の思いが届くのかが見えてくるはずです。

また、被災地で家の片付けのお手伝いや炊き出しやイベントを行いたい方もお願いします。被災した人が早く我が家に帰りたいだろう、お腹をすかしているだろう、心に余裕がなくなっているだろうと考えてくださるのは、大変ありがたいのです。しかし、支援により、みなさんが危険な思いをすることは、だれも望みません。災害発生から最初の一週間は、食糧さえあれば生命の危機にはなりません。ですので、自分がボランティアに不慣れだと感じている場合は、落ち着いて行動してください。はじめる時期が遅くても助かることは沢山あります。避難所の生活環境と道路の改善が進めば、多数のボランティアさんが必要とされる日がすぐに来ます。

晴れ着で入学式を

ここまで、様々な注意点を書きましたが、私たちが予想していなかったうれしい支援もありました。

米崎小学校の体育館は6月末まで避難所になっていました。その間、様々な行事が行われましたが、入学式もその一つです。米崎小では、全国から遅れ、半月後の4月20日に入学式が行われました。

私の娘も入学式を控えていました。妻の実家からランドセルを買ってもらい、妻と娘用の晴れ着も用意していましたが、津波はそれを奪っていきました。多くの人が同じ状況でした。ランドセルは全国から寄せられ、4月初旬には児童全員に配布されました。それでも晴れ着はなかったので、小学校からは「普段着で来てください」との連絡が入っていました。

明日に入学式を控えた4月19日の夜だったと思います。体育館避難所の前に一台のワゴン車が止まりました。出てきた人は「入学式を控えたお子さんはいませんか」と言いました。

内陸の市のPTAの方たちが、入学式を終えたご家庭から、晴れ着を集めてもってきてくれたのです。そのおかげで、米崎小学校では全員晴れ着で入学式をできることになりました。

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おわりに

今回は、支援したい気持ちを有効に届けたい人に届ける方法について書きました。しかし、今回の熊本地震にかかわらず、台風、集中豪雨、河川氾濫、土砂災害、豪雪、噴火など全国各地で災害が発生しています。日本のどこにいても「絶対に安心」ということはありません。次は、あなたの住む街が被災地と呼ばれるかもしれません。

防災というと、行政の役割と思いがちですが、家具の固定や備蓄品の用意などは各家庭で取り組むことです。

まずは、災害発生時にケガをしないこと。発生後に自宅に取り残されても対応できるように用意をすること。自宅や職場から避難所へいくための、安全性の高い道を複数確認しておくこと。普段から天気予報を確認し、各種の警報が発表されたときには早めに対応することを家族や友人と話し合ってください。

自然災害は止められません。被害を軽減するためには、知識と経験をもとに、備えるしかないのです。 備えるのは、みなさんです。

東日本大震災で被災し、日本中・世界中の人から支えていただき、今日まで暮らしてきました。 心よりお礼申し上げます。その支えてくださった人に「大切な人を失う」という悲しみ・苦しみ・後悔をもって欲しくない。 この記事によって、今一度、防災について話し合うきっかけにしていただけるとうれしいです。

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プロフィール

佐藤一男防災士

米崎小学校体育館避難所元運営役員。米崎小学校仮設住宅自治会長桜。ライン311 元副代表http://satokazuo.com/index.html

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