すれ違いを起こさないために――東日本大震災から学ぶ支援の届け方

東日本大震災で被災し、陸前高田市米崎小学校体育館避難所で2か月間避難生活をしました。そのなかで、多くの方から支援を届けていただきました。何もかも失ったなか、空腹を満たし、寒さをしのぎ、辛さを忘れることができました。感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。

 

しかし、思いがすれ違ってしまい、思いを受け止め切れなかった物資や活動があったことも確かです。その思いの「すれ違い」は、なぜ発生するのか、どうすれば「すれ違い」を起こさずに済むのかを考えました。

 

支援をいただいた身でありながら失礼なことであることは承知しています。しかし、東日本大震災以降も続く新たな被災地発生のニュースと、そのなかで「支援したい」人に対して発せられるクレームを見て、なにかできないかと筆をとりました。もしかすると、大変失礼なことも書いているかもしれません。

 

それでも最後まで読んでいただければ、支援したい人が支援を受ける人へすれ違いなく思いを届ける方法と考え方がまとめてあります。最後までお読みください。伏してお願い致します。

 

 

なにを失ったのか

 

生活するすべてのものを失ったのが、東日本大震災です。津波が自宅を押し流しましたので、すべてを失いました。衣類、生活用品、車、仕事(収入)、自宅、楽しみ、希望、中には家族まで。それが「被災する」ということです。平成26年8月に発生した広島の土砂災害でも、平成27年9月に発生した関東・東北豪雨でも、平成28年に発生した熊本地震でも、被災した人は同じように多くのものを失いました。

 

 

支援物資と支援活動について

 

まず、私たちにいただいた、支援物資をあげたいと思います。ただし、このなかには、トラブルの元になったものもありますので、全部を参考にするのは控えてください。

 

水、衣類、毛布、食料、衣料品、靴、調味料、サランラップ、茶碗、コップ、マスク、歯ブラシ、化粧品、タオル、ポリタンク、自転車、バイク、漫画本、オモチャ、ペン、ノート、模造紙、パソコン、携帯電話、携帯電話用バッテリー、タブレット、電池、発電機、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、机、懐中電灯、ラジオ、たばこ、お酒類、コーヒー、ガソリン、軽油、灯油、こいのぼり、イルミネーション、ライター、千羽鶴、寄せ書き、等々、あげればきりがありません。

 

また、支援いただいた活動についてもあげたいと思います。

 

炊き出し、避難所運営の手伝い(受付や物資の仕分け)、医療、弁護士、税理士、司法書士、洗濯、お風呂、体操、子どもの遊び相手、散髪、マッサージ、傾聴活動、お話し相手、歌、漫才、落語、太鼓、家の片付け、泥かき、草取り、等々、こちらもあげればきりがありません。

 

せっかくの物資と活動ですが、メディアやネットでは様々な注意点があげられました。私の調べた範囲でまとめると下記のようになります。

 

<支援物資について> 

(1)一つの箱にいろいろなものを詰めないでください

(2)箱には、四方に中身を書いてください

(3)着古した下着や靴下は送らないでください

(4)生ものを送らないでください

(5)「いらないから送ろう」というものは、もらってもいらないと思ってください

(6)集めていないと書いてある物は送らないでください

(7)いつまでも物資を送らないでください

(8)千羽鶴はいりません

(9)模造紙を張り合わせたような大きなサイズのメッセージはいりません

 

<支援活動について >

(1)捜索活動を最優先にさせてください

(2)災害発生直後は道路の整備が十分でないため渋滞が発生します

(3)自己完結で活動してください

(4)被災者に負担をかけないでください

(5)危険な場所に入らないでください

(6)犯罪目的だと間違えられるような場所には立ち入らないでください

 

米崎小学校避難所の例も紹介しながら、これを一つずつ解説します。

 

 

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支援物資を送る際の注意点

 

(1)一つの箱にいろいろなものを詰めないでください

 

いろいろなものが入っているとすべての箱をあけて整理しないと配布できません。特に衣類は、できるだけ同じものだけを入れて送ってください。被災地での物資の仕分けは、場所が少ないのです。効率化にご協力お願いします。

 

米小体育館避難所で実際にあった話ですが、バナナを衣類で包んで送ってきた方がいます。バナナが傷むことを心配した人の配慮だと思います。ですが、バナナが入っていることを配布するときまで気がづかず、バナナから出た汁で衣類がダメになっていたことがあります。衣類は、急いで配布するとは限りませんので、ご配慮ください。

 

 

(2)箱には、四方に中身を書いてください

 

物資はいったん、避難所内の一角に積み重ねられます。私たちの場合は、時間を決めて、今日は衣類配布、今日は靴の配布、明日はタオルの配布などと順番に配布していました。なにが入っているか、どのように積み重ねても、どこから見てもわかるように、箱の四方に品名を書いていただけると仕分けと配布がスムーズです。

 

 

(3)着古した下着や靴下は送らないでください

 

洗濯したものであっても、下着などの直接肌につけるものだけは、古いものは避けてください。また、物資置き場にある程度の期間保管する場合もありますので、古い下着ですと匂いが移ってしまうこともありました。ほとんどを地域の焼却所で処分せざるを得ませんでした。

 

 

(4)生ものを送らないでください

 

いただいたからといって、すぐに消費できるとは限りません。被災から日数が経ち、支援が安定してくると消費を急がなければいけない食品が出てきます。そこに生ものなどが届くと、食事の計画に影響が出ます。大量に送ってくださる場合は、発送の前に連絡をいただけると食材の調整がしやすくなり、ありがたく思いました。

 

 

(5)「いらないから送ろう」というものは、もらってもいらないと思ってください

 

子どもが大きくなり使わなくなったオモチャなどがまとめて届くことがあります。中には壊れたオモチャや揃っていないカードゲームがありました。これも焼却処分せざるを得なくなり、着古した下着と同じく被災地の焼却場の負担となります。

 

 

(6)「集めていない」と書いてあるものは送らないでください

 

だんだんと日数がたってくると、被災地の行政から「○○は足りています」と発信される時期に入ります。物資を保管するにしてもスペースは有限です。作業効率が悪くなりますので、行政は近くで手に入れられるようになったものから、受け入れを順に中止します。

 

また、行政が十分だと判断したものは、近いうちに多くの避難所でも配布されます。ですので、せっかくいただいても余ってしまい、有効に活用されない可能性もあります。行政が支援をうけとらないと判断したものは、その地域の避難所でも必要のない可能性が高いでしょう。

 

 

(7)いつまでも物資を送らないでください

 

「被災地」と呼ばれる地域もいつかは商売が再開されます。支援物資により、せっかく再開した商売が立ち行かなくなるようなことがないようにご配慮ください。ただし、現地購入による物資は、被災した人と、商売を再開した人の両方を支えることができます。

 

体育館避難所を卒業し仮設住宅に入ったときには、支援活動としてバーベキュー大会をしていただきました。その際、現地購入のお肉や野菜を使用していました。それも、現地の情報をしっかり受け止めている人だからこそできたことでしょう。

 

 

(8)千羽鶴はいらない

 

ネット上で話題になりましたが、避難所で生活している人というよりも、物資の仕分けと配送を担当した人の言葉でしょう。仕分けと配送を「作業」だと考えると、優先順位の低い「千羽鶴はいらない」と思うのかもしれません。ですが、私たちの避難所に届けられた千羽鶴はバスケットリングにぶら下げており、子どもやおばあちゃんは喜んでいました。

 

とはいえ、避難所解散のときには、狭い仮設住宅にもっていくわけにはいきません。かといって焼却するのも気が引けます。私たちは近くの保育園に託しました。その後、子どもたちに分けられ、各家庭に持ち帰りました。

 

 

(9)模造紙を張り合わせたような大きなサイズのメッセージはいらない

 

避難所は、多くの場合大きい建物です。ですが、避難が長期化すると壁が物資で隠れてしまったり、必要な情報を書いた掲示物が貼られます。メッセージを貼る場所が減っていくのです。いただいたメッセージは必ず一度は貼りましたが、ずっと貼り続けるわけにはいかず、次のメッセージをいただくとはずしていました。そして、千羽鶴と同じように、はずしたあとに焼却できず、避難所解散の際には行き場を失いました。私たちの場合は、近くのコミュニティーセンターに集め、短期間ですが掲載していました。

 

 

ここまで、いくつか注意点を書きました。知っていてほしいのは、個人宅に送るのでなければ、物資が被災者に直接届くことはありません。たとえば、自治体に物資を送ると、一度集積所で品目ごとに仕分けし、避難所に送ります。集積所には何千、何万という荷物が集まります。仕分けだけでもかなり大変な作業です。

 

ですので、「男性用・上着・Lサイズ」のように一つの箱には一つの品目を入れてください。その際、(2)で取り上げたように箱の四方に、大きく内容を書いていただけるとどこからでも確認できます。「一箱分も同じサイズの男性用の上着なんかない」と思われるかもしれませんが、ご近所に声をかけて集めてみてください。仕分けの負担が減るので、とてもありがたい一箱になります。

 

私たち米崎小学校仮設住宅の住民も2014年10月にフォトジャーナリスト安田菜津紀さんとのご縁でシリア難民に衣類を送りました。すぐにダンボール10箱を越える衣類が集まりまり、東日本大震災の経験を踏まえて、どの段ボールになにが入っているのかわかる形で送りました。

 

ちなみに、災害後、すぐに衣類を送りたいと思った場合、なにを送ればいいのでしょうか。もし、被災した地域が寒いと想像できるときは、まずは、ジャンパー・オーバー・コート類を送ってください。東日本大震災は3月に災害発生し、熊本地震でも屋外避難した人もいます。何度も繰り返すようですが、被災地には物資が多く届き、被災者の手に渡るには時間がかかります。優先的に防寒着だけを送っていただけると、非常に助かります。

 

また、物資だけではなく、義援金や支援金を寄付する方法もあります。日本赤十字でもコンビニでも被災した県や市の行政でもかまいません。義援金は直接被災者に届けられます。支援金は被災した人を支える活動に使われます。失ったものは、届けていただいた「物資」だけで賄えないことも記しておきたいと思います。【次ページにつづく】

 

 

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