自然エネルギーの未来は、わたしたちの選択の問題である

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2013年2月に発行された『世界自然エネルギー未来白書』。本報告書は、ISEP研究部長のエリック・マーティノー氏が、世界の自然エネルギー分野の専門家や実務家170名に行ったインタビューをまとめたものだ。日本においても導入が加速されつつある自然エネルギー。その未来にはどのような可能性があるのか。世界ではいまどれだけ自然エネルギーが普及し、現在、わたしたちはどのような局面に立っているのか。ISEP研究員・古屋将太氏によるインタビューをお送りする。

 

 

自然エネルギーの未来の可能性

 

古屋 2012年7月から固定価格買取制がはじまったことにより、4月〜11月末時点までに新たに運転開始した自然エネルギーの設備容量は144.3万kW、11月末までに経産省の認定を受けた設備容量は364.8万kWと、遅ればせながら日本でも自然エネルギーの導入が加速しつつあります。

 

今回は、先日『世界自然エネルギー未来白書(http://www.isep.or.jp/gfr)』を発表したエリック・マーティノー氏に自然エネルギーの未来について、世界の専門家たちはどのような可能性と選択肢を見ているのか、うかがいたいと思います。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

 

エリック わたしは米国出身で、1980年代から30年近く自然エネルギーの分野で政策、技術、経済、地理など、幅広く活動してきました。ワシントンDCにある世界銀行で途上国の自然エネルギー開発プログラムを指揮したり、中国の大学で教鞭をとっていたこともあります。そして、2008年から日本に移り住み、環境エネルギー政策研究所(ISEP)で活動しています。

 

わたしが日本に来たのは、日本を含むアジアでの自然エネルギーの可能性を見ていたことが大きな理由です。実際に世界における自然エネルギーのリーダーシップは米国と欧州からアジア(とくに中国)へと移りつつあります。また日本が自然エネルギーにおいて世界でのリーダーシップを発揮するのを見たいと思ったことも日本に来た理由のひとつです。

 

国際的に仕事をすることが多いので、世界中どこにいても仕事ができるのですが、東京はもっとも快適に感じるので、ここに住むことを決めました。

 

古屋 まさにリチャード・フロリダがいうところの「クリエイティブ・クラス」ですね。

 

エリックは、この2年間、世界の自然エネルギー分野の専門家や実務家170名にインタビューを行い、近年発表された50のシナリオから、自然エネルギーの未来の可能性をまとめ、先日アブダビ・自然エネルギー国際会議で『世界自然エネルギー未来白書』をリリースしました。

 

すでに世界の専門家たちから、「さまざまな立場にある専門家や機関の多様な展望をモザイク状に総合させ、自然エネルギーの未来の信頼できる可能性の幅を提示した画期的なレポート」との評価がなされていますが、こういったレポートをつくろうと思った最初のアイディアはどういったものだったのでしょうか? たしか2010年のデリー・自然エネルギー国際会議のときだったと思いますが。

 

エリック もともと2005年からREN21が毎年発行している『自然エネルギー世界白書』の主筆者を務めてきました。『自然エネルギー世界白書』は現在の世界の自然エネルギー普及状況をまとめたものであり、そこには未来の展望は一切含まれていませんでした。

 

ふと「現状はわかった。では、未来についてはどうなのか? たくさんのシナリオが出され、それらはいくつかのビジョンを示していて、グラフ上では自然エネルギーは時間とともに増えていく未来を描いている。自然エネルギーの未来について、わたしたちの現在の考え方とはどういったものなのだろうか?」と考えはじめました。

 

レポートのアイディアを得たのは、デリー・自然エネルギー国際会議の昼食時にマイク・エックハート(米国再生可能エネルギー協会前会長)と話していたとき、彼が「世界のオピニオン・リーダー100人から自然エネルギーの未来についての展望を2〜3ページ書いてもらい、集めたものをウェブサイトに載せようと考えている」と聞いたことが最初でした。

 

それを聞いたとき、実際に100名もの人たちにすべて自身で書いてもらうことは難しく、また、政策立案者が200〜300ページもの文章量にすべて目を通すことも難しいだろうと思いました。そこで代わりにわたしが彼らのところに行ってインタビューして、それを30ページ程度のひとつのレポートにまとめるべきだと思い、このレポートを書くことを決めたのです。

 

調査ではおよそ100の自然エネルギーのシナリオを集め、そのなかからレポートでは50のシナリオを使いました。それらはページ数にして5,000ページになりました。また、あらゆるタイプの専門家、研究者、政府機関関係者、ビジネスパーソンなど、できるかぎり多くの人から話を聞く必要があると考え、当初150名にインタビューすることを予定していました。しかし、最終的に170名になり、そのインタビューノートは1,000ページになってしまいました(笑)。

 

それらを30ページ程度にまとめることは、わたしのこれまでの仕事のなかでもっとも困難な作業となり、結局レポートができるまでに2年かかりました。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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