どうなっちゃうの?NPO税制

現在、NPO法人には3つの心配事がある。寄付金税額控除の廃止議論、法人寄付特別損金参入・みなし寄付金の見直し、そしてNPO法改正だ。来年度の税制議論が始まり、ますます不安が高まるNPOの関係者たち。そうした声を受け、10月9日に「どうなっちゃうの? NPO税制」シンポジウムが開催された。いま政府でどんな議論が行われているのか、与党・野党それぞれの立ち位置など、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏とNPO議員連盟の各議員が議論を交わした。(構成/金子昂)

 

 

NPO税制、どうなっちゃうんだろうか!?

 

松原 こんばんは、NPO法人シーズの松原明です。今日はお忙しいところ「どうなっちゃうの? NPO税制」シンポジウムにお集まりいただきありがとうございます。

 

現在、全国に約5万のNPO法人があり、そのうち約700の認定・仮認定NPO法人がございます。ちょうど昨日(10月8日)、与党税制協議会が始まり、税制の議論がスタートされました。10月から12月までは、来年度の税制を決める大切な時期なんですね。そんな中、われわれNPOが、税制議論に関連して、心配なことが3つあるんです。

 

ひとつめが、寄付金税額控除についてです。いま、個人が認定・仮認定NPO法人に寄付をした場合、所得控除か税額控除のどちらかを選択して、控除を受けられるという仕組みがあるのですが、この税額控除を取りやめようという声が一部から出ているんですね。

 

ふたつめが、認定NPO法人に対して企業が寄付したとき、損金参入限度額が拡大される仕組みがあるのですが、これが見直しの対象になっています。さらに認定NPO法人が収益事業で得た利益を、非収益事業に使用した場合に、この分を寄付金とみなす「みなし給付金」という制度も見直しに対象になっているんです。法人税引き下げによって税収は減るため、いろいろなところから税源を集めようとしているのではないかと思っています。

 

みっつめが、NPO法改正です。2011年にNPO法が大改正され、その際3年後に見直しをすると決められました。その期限が来年3月にせまっているにも関わらず、議論がほとんど進んでいない。どう変わっていくのか、いったいどうなっちゃうんだろうと思っております。

 

今日は、NPO議連の先生方にお集まりいただき、ぜひ「みなさん心配されていますが、大丈夫ですよ」とお話いただけたら、そして後退を阻止するだけでなく、むしろより前向きなお話ができればと思っております。短い間ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

それでは本日ファシリテーターを務めていただきます、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんにバトンタッチいたします。

 

 

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駒崎 みなさん、こんばんは。認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹です。いま松原さんからご案内があったように、今日は「NPO税制どうなっちゃうんだろうか!?」という我々の心配をつまびらかにしていきたいと思っています。

 

日本はいま、世界でも有数の寄付しやすい税制をもっている国なんですね。というのも、認定NPO法人に寄付した場合において、最大で50%もの寄付がバックされるという仕組みがある。これは今日お越しいただいた超党派のNPO議連の皆さんが、汗をかいて勝ち取ってくださった制度です。その素晴らしい税制を見直す声が、与党や財務省の税制調査会で上がっているようなんですね。われわれNPO業界はもちろん、学校法人、公益社団法人、社会福祉法人にとっても不安なことです。

 

しかし、新聞など報道をみていても、これから議論がどのような方向に進んでいくのかがよくわかりません。そこで、政治の中枢にいらっしゃる先生方にお話をお聞かせいただきたいと思い、本シンポジウムを企画しました。それでは、まずNPO議連の代表であられる中谷元衆議院議員にご挨拶もかねて、現状についてお話いただきたいと思います。

 

 

「まだどうなるかはわからない」

 

中谷 みなさんこんばんは。自由民主党の中谷元です。NPO議連には代表者が2人おりまして、わたくしと江田五月参議院議員が議員を務めております。この議連は超党派でございまして、私と辻元さんが一緒にいるという異様なものでございます(笑)。

 

辻元 あはは(笑)。

 

中谷 今日は、社民党の吉田忠智参議院議員、みんなの党の山内康一衆議院議員、民主党の岸本周平衆議院議員、同じく民主党の辻元清美衆議院議員、そしていまはいらっしゃいませんが後ほどいらっしゃる公明党の谷合正明参議院議員がNPO議連から参加させていただきました。

 

歴史は2001年の10月、認定NPO法人制度が創設され、国税庁に認定されました。寄付金についての税制上の優遇が認められてもう13年。節目となる10年目の2011年には大改正が行われ、より便利な制度になりました。

 

現在NPO法人は49,173あり、そのうち一般社団財団法人が32,505、社会福祉法人が19,821となっています。このうち58.6%が健康医療に関するもの、47.4%が社会・教育、町づくりに関する団体です。第二の公共とも言われますが、補助金やお役所の仕事ではなく、市民自らが社会的な活動を大いに広めていくことは非常に大事なことですので、これからも議連として、全力で取り組んでまいりたいと思います。

 

駒崎 ありがとうございます。連続で恐縮なのですが、いま与党内で一部見直しの議論があるという話があることについて、内実について中谷先生からお話をお聞かせいただけますでしょうか。

 

中谷 日本の財政は毎年、財務省を中心に、12月に税収の見積もりと予算案を決めておりますが、今日まさに、自民党内で議論が始まったところです。

 

消費税増税、法人税の引き下げ、軽減税率など、非常に難しい問題が多々ありますが、その中でいま、NPO税制が俎上に載せられているんですね。結論は12月に出ますから、その間に、国会での論戦などで野党の先生方から指摘をうけたりしながら、政治的に決定がなされる。ですから、いまの段階でどうなるかは言えません。ただ、せっかく作った税制ですから、現状が悪くならないように精一杯働きかけをしているところです。

 

 

主税局「くやしい!」

 

駒崎 なるほど、まだどうなるかはわからない、と。では野党側の立場から見るとどうなのでしょうか? 状況としてはマズそうなんですか? それとも頑張っていけば、なんとかなるような状況なのか……そうですね……目があったので、岸本先生、お願いします。

 

岸本 目が合いました、民主党の岸本です。

 

私はもともと財務省の人間です。随分昔ですが、若い頃には主税局で寄付金税制を担当していました。当時からいいことだと思っていましたので、寄付対象となる特定公益増進法事からの申請は、私が担当していた2年間、すべてを即座に認めていました。ああ、もちろん審査しなかったわけじゃないですよ(笑)。

 

しかし主税局というのは、お金をとる、増税するのが仕事の部署です。増税してもボーナスがあがるわけではありません。べつに悪い人たちというわけじゃないんです。現下の財政のために、増税をしているわけですね。ただ政治的にあげることができなくて、いまのような惨憺たる状況になっているわけです。

 

主税局には「くやしい」という言葉があります。税金をまけるのがくやしい。地方税もあわせて、寄付した金額の半分が戻ってくるという制度は、もっともケチな日本の財務省の、主税局の職員からするととにかく「くやしい!」わけなんです。もともと主税局にいた人間ですから、よくわかります。主税局にとっては、いわば喉に引っかかったとげ。できればなくしたい。というのも、いま対象になっていない方々も同様の制度を欲しがりますから、どんどん波及していくわけですよ。だからとにかくやめたくてやめたくて仕方ない。きっといままさに、この議員会館で蠢いていると思いますよ。危機的な状況だ、と私は考えています。

 

もうひとつ懸念があります。皆さんお忘れかもしれませんが、私たち民主党が政権を担っているときに、いいことも少しはしているんですよ。「少しは」って私が言っちゃいけないんですけどね(笑)。例えばNISA、あるいは教育資金の贈与を受けた際に、贈与税を非課税にするなどですね。いまの政権は民主党がやったいいことも否定していっている。税額控除についても、民主党が法律をつくって、議員立法で適用を広げていったんですよ。なかには中谷先生のような寛大な方がいらっしゃいますが、すべての先生がそうではない。きっと主税局のように「くやしい!」というメンタルをお持ちの方もいらっしゃる。それが自民党の税制調査会で働く可能性はあるわけです。この2点において、頑張っていかないといけないことなんだと思っております。

 

 

女性が輝く社会と地方創生をするならば

 

駒崎 ありがとうございます。岸本先生のお話を伺っていると、わりと不吉な状況になりそうですが、辻元先生、いかがでしょうか。

 

辻元 民主党の辻元清美です。NPO議員連盟では幹事長を務めております。今日はNPOの関係者が多くいらっしゃっていますから、むしろ中谷先生の方をむいてお話をしたいなあって感じですが(笑)。

 

安倍総理が、女性が輝く社会をつくりたいとおっしゃってますね。そして地方創生を実現したい、と。それならば、この市民公益税制は絶対に守るべきなんです。もし、たった30%しかいない、儲かっている企業の法人税を減税するために、NPOや学校法人、社会福祉法人などの税額控除も含めて、税の優遇を切り捨てるのであれば、女性の輝く社会も地方創生も実現しません。みなさん、違いますか?

 

2013年版の中小企業白書によれば、株式会社・有限会社における女性起業家の割合は17.3%、NPO法人の女性起業家の割合は52.7%となっています。さらに内閣府市民活動団体等基本調査報告書によると、女性スタッフが全体の半数以上を占める団体が約7割。そして約4割の団体では、スタッフは女性だけというような状況です。ということは、ですよ。女性の仕事を増やすことが、輝くということならば、これだけ頑張っているNPOや公益団体の女性をいじめるようなことは、やめていただきたい!

 

そしてもうひとつ。地方がものすごいしんどい中で、町づくりとか観光とか、介護などはいったい誰がやっているんですか? NPOですよね? そういうNPOが、活動を続けるために必死で寄付を集めているところを、安倍さんは切り捨てるのか、と。この点を国会で迫っていきたいな、と思っています。中谷さん、がんばってくださいねえ。よろしくお願いいたします。

 

 

廃止の考えはない

 

駒崎 ありがとうございます。なんだか疑似国会みたいになってきていますが(笑)。

 

ただいま公明党の谷合先生が到着いたしましたので、与党側の立場でお話をお聞かせいただきたいと思います。

 

谷合 公明党の谷合です。党ではNPO局長を、議連の方では事務局次長を務めております。

 

まず公明党として、税控除を縮小するような考えの下で、平成26年度の税制改正大綱にそうした内容を盛り込んだことはいっさいありません。公明党としては、税控除の縮小や、みなし寄付金制度の廃止をするという考えはまったくない、ということを冒頭でお話しておきたいと思います。

 

念のためお話をしておきますと、昨日、公明党の税調総会第一回がキックオフいたしました。税調会長の斉藤鉄夫衆議院議員は、NPO議連の役員も務めております。斉藤会長に寄付金税制はどうなるのか、縮小ではなく少なくとも継続、あるいは対象を拡大していく方向で見直すべきだと話したところ、廃止のために税制改正大綱に、税額控除制度の再検討の一文を盛り込んだつもりはない、と言っていました。そして今日、皆さんにそのことをお伝えください、と。

 

昨年、NPO議連でアメリカを視察しました。アメリカではNPO法人や公益法人が、日本でいう中小小規模企業のように、全国に網の目を張って様々仕事をしている。それを受けて、これまでNPO法人は一部しか対象になっていなかった信用保証制度を、より広く認めていけるように、経産省とやりとりをしております。

 

というのが、公明党の考えであります。遅れてしまったため、同じ与党である中谷先生がなにをお話になられたのかわからないのですが、与党としては、この制度をしっかり堅持していくつもりだということをみなさんにお伝えしたいと思います。

 

 

本当の寄付文化

 

駒崎 公明党さんに堅持すると明言いただけてとても心強いです。信用保証制度、いますぐ使いたいですね。では、続いてみんなの党の山内先生、よろしくお願いいたします。

 

山内 山内です。私もNPOで働いていたときに資金集めをしていたので、みなさんのご苦労を多少はわかっているつもりです。

 

さて、寄付金税制に関する問題点を2つ述べます。ひとつは辻元さんと同様で、営利企業の税金を減らすために、非営利企業を犠牲にするというのは、時代に逆行している、論外だということ。

 

もうひとつが、ふるさと納税についてです。これは納税とありますが、税額控除であって納税でもなんでもありません。評判のいい制度ではありますが、私はあえて批判したい。というのはふるさと納税が、日本の寄付文化をゆがめてしまうものだと思うからなんです。

 

ふるさと納税は、例えば700万円くらいの所得があるご夫婦が、ある自治体に3万円の寄付をした場合、2万8000円が戻ってくるというものです。つまり2000円の負担で3万円寄付できるという制度なんですね。そこまではいいのですが、見返りに自治体から、1万円分のハムやらメロンやらが送られてくる。これがおかしい。結局、2000円払って、自治体から贈り物を貰おうという人が寄付するようになっているわけです。

 

こんな不健全なことをやっていたら、本当の寄付文化は根付きませんよ。今の政府はふるさと納税を増やしていくつもりのようですが、そんな余裕があるなら、NPOの寄付金税制を、ふるさと納税なみに良くしてほしい。ぼくは、ふるさと納税はやめてしまって、NPOに対する税額控除と同じレベルに戻すべきだと思っています。そういった観点からも、政府の寄付に対する姿勢は間違っていると思います。

 

 

ともにがんばりましょう

 

駒崎 ありがとうございます。最後に、吉田先生お願いいたします。

 

吉田 みなさん、こんばんは。社民党の吉田です。社会党そして社民党では、辻元さんがNPOの問題を取り組んでいらしたのですが、担当がいなくなったものですから、私、党首になったのですが、そのまま引き続いております。

 

大企業の法人税実効税率が35%くらいですが、それを29%くらいに下げようとしている。だいたい1%で5000億円くらいですから、3兆円の財源を別のところから生み出さないといけない。わたしは法人税を下げても、内部留保を増やすだけだと思っていますから、基本的に引き下げには反対ですし、その上、代替財源としてNPOを狙い撃ちするのは大きな問題だと思っています。

 

さきほど岸本さんからもお話がありましたが、これは自民党がやりたいというよりは、財務省がやりたいのではないかと思っています。その証拠に「ローカルアベノミクス」の資料をみますと、「NPOの力を活用」という文言が入っているんですね。だからこそ、与党野党の力を合わせて、今の状況を跳ね返していきたい。

 

昨年度に内閣府が行った調査で、NPOの皆さんの要望事項がまとめられていますが、1番目が法人への資金援助、2番目が公共施設と活動場所の低廉・無償提供、3番目が法人に対する税制優遇処置の拡充があげられておりました。こうした政策をもっと充実させていかなければいけないと思っています。この議連で、超党派で、今の状況を跳ね返していきたい。ともにがんばりましょう。

 

 

 

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