「親子は血が繋がっていてあたりまえ」という思い込みをなくしていく――日本と諸外国の養子縁組

日本では普及が進んでいない特別養子縁組制度。毎年、3000人もの子どもたちが施設に預けられているが、その中で、養子となり家庭の中で養護を受けられるのは400〜500人に留まる。一方、アメリカやヨーロッパでは養子を希望するカップルの数が多く、他国の子どもを迎える「国際養子」の増加や、斡旋の待機時期の長期化も進んでいるという。海外で養子縁組に関するフィールドワークを行っている、埼玉医科大学医学部産科・婦人科教授の石原理氏にお話を伺った。(聞き手・構成/大谷佳名)

 

 

養子縁組は当たり前の選択肢

 

――石原さんは普段は不妊治療専門の産科婦人科医をされていますが、スウェーデンやイギリスなどの国々に渡って、生殖医療を利用する人や、養子を迎える不妊症のカップルにインタビューもされています。インタビューの中で、日本と比較して印象的だったお話などありましたら教えてください。

 

海外の不妊症カップルに直接お話をうかがうと、日本と同じように、ご自分のこどもを持ちたい、家族を持ちたいという強い希望があると感じます。そして日本と同じように、体外受精などの不妊治療を受けられています。

 

ただ、早い時期から、たとえば不妊治療を受けはじめる前から、養子をとることも目的のための方法のひとつとして、視野に入れているカップルが多いのだと思います。

 

その理由として一番大きな要素は、まず、周辺に養子をとっているカップルがたくさん存在するということではないでしょうか。養子をとることが必ずしも特別ではなく、家族を持つための、一つの選択肢になっているという印象を受けます。

 

私たちがストックホルムでインタビューしたあるカップルは、体外受精などの不妊治療で希望がかなえられず、二人の養子をとられた方でしたが、男性自身がフィンランドからきた養子で、奥様は、我が家では私だけが養子ではないので、マイノリティだと笑っておられました。

 

また、不妊治療を提供する側を見ても、海外の体外受精クリニックには、医学的治療と並んで、養子についてのパンフレットなどが置かれているところがほとんどです。

 

 

(参照)諸外国における養子縁組の状況

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出典:里親及び特別養子縁組の現状について(厚生労働省)

 

 

「国際養子」の増加、待機期間の長期化

 

――欧米では、養子縁組を希望する養親の数に対して養子の数が少なくなり、待機時期の長期化が進んでいる国もあるそうですが、どのような社会の変化が関係しているのでしょうか。

 

以前は養子に出されるこどもたちの多くは国内の養子で、若い未婚女性が自ら子育てをできないために、やむなくこどもを手放すという理由によるものでした。けれども、ピルなど有効な避妊法が普及したこと、特に北欧では、必ずしも法律婚にこだわらないカップルが増えたこと、若い未婚女性が自分のこどもを自ら育てるためのさまざまな社会的支援が充実したことなどにより、未婚女性が心ならずもこどもを手放すということは、事実上なくなりました。

 

なにしろ、北欧諸国では、すべての生まれるこどもたちのうち、50〜70%を超えるこどもたちが未婚女性からうまれているのです。その結果、多くの国で、国内で養子にだされるこどもが、事実上無くなりました。そして、養子のほとんどは外国からやってくる国際養子になっているのです。

 

さらに、以前は不本意ながら養子を多数海外に送り出してきた韓国や中国などの国々でも、事情が変わってきました。それぞれの国内における対策が進み、国外へ養子を出す国が少なくなり、養子受け入れ国における国際養子をとるための待機期間が年々長期化し、数も減少してきている状況にあります。北欧諸国では、国際養子の斡旋に国が関与しておりますが、それこそ斡旋団体の数も減少しはじめています。【次ページにつづく】

 

 

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