2025.03.02
2025年3月12日(水)開催
【トーク】政治は、陰謀によって動くのか?――秘密政治の系譜を考える
大竹弘二 ホスト:橋本努
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- 開催日時
- 2025年3月12日(水)20:00~21:30
- 講師
- 大竹弘二
- ホスト
- 橋本努
- 場所
- ZOOM【後日、アーカイブ配信もいたします】
- 料金
- 1500円(税込)
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私たちの民主政治は、すべての情報が公開されていることを原則としています。しかし実際には隠された情報も多く、裏で誰かが政治を動かしているのではないか、という陰謀説も出てきます。現代のネット社会では、アクセスしやすい情報が拡散する一方で、真実が埋もれてしまうこともしばしばあります。では私たちは、どのようにすれば民主的でよい社会を作ることができるのでしょうか。あるいはまた、私たちの民主政治には、そもそも情報の流通や意思決定に構造的限界があるのでしょうか。
シノドス・トークラウンジでは、この問題を考えるうえで、重要な政治思想の書を取り上げます。大竹弘二著『公開性の起源 秘密政治の系譜学』(太田出版、2018年)です。本書は、第1次トランプ政権(2017-2021)のときに話題となりました。16世紀から現代にいたる政治思想を縦横無尽に論じています。フーコー、ルーマン、アガンベン、シュミットといった思想家たちの議論を我がものとして、きわめて高い知性と感受性をもって、政治の「裏」を読みとく方法を示しています。議論は壮大です。
私たちの歴史は、「裏」の政治で動かされているとして、では、なぜ政治は「裏」で動かされるのか。それは社会の構造的な問題なのだから、その構造を明らかにしよう、というのが本書の企てです。権力が集中すると、およそ権力者は孤立して無力になります。権力者は、全能の神ではありません。その裏で、陰謀者たちが政治を動かす余地が生まれます。
この陰謀者たちの暗躍を、できるだけ抑えようというのが近代民主主義の希望ですが、ではどうやって抑えるのか。問題を技術的に解決しようとすると、パラドキシカルなことに、そこには企〔たくら〕みの余地が生まれます。例えば、行政機構を補うために、スパイ活動が必要になったりします。たんなる技術的な思考では、解決できません。
本書を読んで、私は個人的には、フランツ・カフカがきわめて有能な、保険行政のエリートであったという事実に惹かれました。「行政権力」と「法の支配」のせめぎあいを、カフカは身をもって経験していたのですね。カフカが描く不条理な世界は、「社会的なるもの」が台頭する当時の社会を反映してもいたのです。シノドス・トークラウンジでは、著者の大竹弘二先生をお招きして、公開性と陰謀の政治の現在・過去・未来を議論します。皆様、どうぞよろしくご参加ください。
プロフィール
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大竹弘二
南山大学国際教養学部教員、専門は現代ドイツ政治理論・政治思想史。主著に『正戦と内戦――カール・シュミットの国際秩序思想』(以文社、2009年)、『公開性の根源――秘密政治の系譜学』(太田出版、2018年)。共著に大竹弘二・國分功一郎『統治新論――民主主義のマネジメント』(太田出版、2015年)など。訳書にアレクサンダー・ガルシア・デュットマン『思惟の記憶――ハイデガーとアドルノについての試論』(月曜社、2009年)、ユルゲン・ハーバーマス『真理と正当化』(共訳、法政大学出版局、2016年)など。