シノドス・トークラウンジ

2025.09.24

2025年10月15日(水)開催

なぜトランプ政権は「次世代への投資」を敵視するのか?

畠山勝太 比較教育行財政 / 国際教育開発 ホスト:橋本努

開催日時
2025年10月15日(水)20:00~21:30
講師
畠山勝太
ホスト
橋本努
場所
ZOOM【後日、アーカイブ配信もいたします】
料金
2500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

トランプ政権は大学を敵視し、その中でも特にハーバード大学を中心とする名門大学が、研究助成のカット・留学生に対するビザの発行・大学認証システムを用いた脅し、など様々な攻撃に晒されています。しかし、トランプ政権の教育に対する攻撃は名門大学に留まらず、教育庁、公立学校と教育全般多岐に渡っています。日本の文脈に引き付けて言えば、これは新しいリベラルが重視する「次世代への投資」への攻撃だと言えます。なぜトランプ政権は「次世代への投資」を敵視するのでしょうか?また、現在のアメリカを反面教師として、日本の新しいリベラルは何を学ぶことが出来るでしょうか?

シノドス・トークラウンジでは、この問題を考えるうえで、重要な米国の教育政策の書を取り上げます。Dana Mitra著『Educational Change and the Political Process』(Routledge, 2018年)です。本書は、米国の教育システムがどのようになっているのか、そしてそれはどのようにして成立したのか、そしてどのようなアクターがどのような教育政策を推進しているのか、を解説しています。

日本は第二次大戦後に米国教育使節団を受け入れ、日米は近しい教育システムを持つ時期もありましたが、早い段階で大きく異なる教育システムとなっていきました。建前はさて置き、本音レベルでは日本は民主主義や社会を維持するための教育と言うよりは、個人の経済・社会階層移動に応えるためのものになっていきました。これに対し、米国は21世紀に入るまで民主主義を維持する仕組みとしての教育を重視してきました。

しかし21世紀に入り、クリントン政権・ブッシュJr.政権・オバマ政権と政権交代が行われる中でも、19世紀に作られた民主主義のためという社会を重視した教育システムを引きずったまま、教育に経済という個人を重視した目的を担わせようとしてきました。ここのズレにこそ、トランプ政権が教育を攻撃する理由が潜んでいるようです。

では、日本の新しいリベラルが重視する「次世代への投資」は、日本社会の次世代への投資なのでしょうか?それともそれは、我が子という個人の次世代への投資を社会として重視して欲しいというものなのでしょうか?ここをはっきりさせずに誤魔化したまま新しいリベラルたちが「次世代への投資」を進めていくのであれば、恐らくそれはトランプ政権が敵視する「次世代への投資」へと堕ちていくことでしょう。

新しいリベラルが「次世代への投資」を実現するためには、米国を反面教師として学ぶための本書の知識がとても役立ちます。

プロフィール

畠山勝太比較教育行財政 / 国際教育開発

1985年、岐阜県生まれ。都留文科大学国際教育学科准教授・特定非営利活動法人サルタック理事(ネパール)・一般社団法人モザンビークの新しい教育を支援する会理事。東京大学教育学部卒、神戸大学国際協力研究科(経済学修士)及びミシガン州立大学教育大学院修了、Ph.D. in Education Policy。世界銀行本部、国連児童基金(ジンバブエ事務所・本部・マラウイ事務所)、内閣府PKO事務局を経て現職。主な論文では、途上国の障害児教育、児童労働、幼児教育、教育の民営化などのテーマを扱っている。

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