2026.08.07
なぜ「文法」を勉強しても、英語が話せるようにならないのか?
英語を話していて、
Yesterday, I go to the office.
と言ってしまった。
あとで指摘されると、
「あ、went ですね」
とすぐに分かる。
あるいは、
He work in Tokyo.
と言ってしまう。
でも、
「He だから works ですよ」
と言われれば、そんなことは知っている。
文法問題なら、まず間違えない。
それなのに、実際に英語を話すと間違える。
こうなると、
「まだ文法が身についていないんだ」
と考えて、もう一度文法を勉強しようとする人がいます。
でも、本当に文法を知らないのでしょうか。
問題集では正解できる。
間違いを指摘されれば、すぐに正しい形が分かる。
だとすれば、足りないのは文法知識ではありません。
文法を「知っていること」と、話しながらその文法を使えることは、別なのです。
会話では、文法だけを考えているわけではない
文法問題なら、
Yesterday, I ( go / went ) to the office.
を見て、
「昨日だから過去形だ」
と考えればいい。
考えるべきことは、最初から絞られています。
でも、実際の会話は違います。
何を話すのかを考える。
必要な単語を選ぶ。
文法を処理する。
発音する。
さらに、話しながら次に何を言うのかも考える。
相手がいれば、相手の話も聞かなければなりません。
これらのことを、ほとんど同時にやっています。
人間が一度に使える頭のリソースには限りがあります。
まだ英語を話すことに慣れていない人は、
「何を話せばいいのか」
を考えるだけでも、その多くを使ってしまいます。
そこへ、
「過去形になっているか」
「三単現の s はついているか」
「冠詞は必要か」
「前置詞はこれでいいか」
までチェックしようとすれば、当然、頭がいっぱいになります。
だから、
知っている文法なのに、話していると使えない。
ということが起こるのです。
正しく話そうとするほど、話せなくなる
ここで、多くの日本人学習者が陥る罠があります。
英語を話すなら、できるだけ正しく話さなければならない。
そう考えて、
「これは過去だから……」
「ここは三単現だから……」
「この名詞には a が必要かな……」
と、一つひとつ確認しながら話そうとする。
すると、
I … went … to …
と、なかなか先へ進めない。
あるいは、正しい英文が頭の中で完成するまで、話し始められない。
もちろん、正しい英語を話せることは大切です。
問題は、その順番です。
まだ英語を話すだけで頭がいっぱいの段階で、正確さまで同時に求めれば、発話そのものが止まってしまいます。
そして、発話が止まれば、「英語を話す」という処理そのものが、いつまでも楽になりません。
正しく話そうとすることが、かえって正しく話せるようになることを妨げてしまう。
そんな逆転が起こります。
最初は、間違いながら話すしかない
では、どうすればいいのでしょうか。
最初の段階では、
間違ってもいいから、まず話す。
これが必要です。
たとえば、
Yesterday, I go to a restaurant with my wife.
と言ってしまった。
go は間違っています。
でも、相手には十分伝わります。
この段階では、
「Yesterday だから went にしなければ」
と途中で止まるよりも、そのまま話を前へ進める。
The food was good.
We had pasta.
と続ける。
もちろん、ずっと go のままでいいという話ではありません。
正確に話せるようになるためにも、まず不完全な英語で話す段階を通らなければならない。
ここが重要です。
止まらずに、自分の言いたいことを、英語で話し続ける。
まずは、この処理そのものに慣れる必要があります。
日本語で一文でも、英語で一文にする必要はない
もう一つ、話し始めたばかりの段階で大切なことがあります。
たとえば、
「昨日は仕事が忙しくて帰るのが遅くなったので、家では何もせずにすぐ寝ました。」
と言いたいとします。
これを日本語の形のまま、一つの英文にしようとすると大変です。
「仕事が忙しかった」はどう言うのか。
「帰るのが遅くなった」はどうつなぐのか。
「〜ので」はどうするのか。
一文を完成させようとしているうちに、話せなくなってしまいます。
でも、会話では一文にする必要はありません。
I was busy at work yesterday.
まず、これだけ言う。
I got home late.
次に、これを言う。
So I just went to bed.
これで十分です。
日本語では一文だった内容を、英語でも一文で再現する必要はありません。
自分がいま使える英語にほどいて、一つずつ話せばいい。
文が短くなれば、一度に処理しなければならないことも減ります。
最初の段階では、複雑な英文を正確につくることよりも、こうして簡単な英語を一つずつ出せることの方が重要です。
話せるようになると、頭に「余白」ができる
最初は、
Yesterday … I … go …
と、次の英語を出すだけで精一杯だった。
でも、英語を話す経験を重ねていくと、
I went to …
I talked to …
I was busy …
といった英語が、以前ほど考えなくても出るようになります。
発話をつくるために必要な頭の負荷が、少しずつ小さくなっていく。
すると、そのぶんだけ頭に余白が生まれます。
この余白が、正確さを育てるために必要です。
それまでは、次の英語を出すだけで精一杯でした。
ところが余裕ができると、
自分の英語を、話しながら聞けるようになります。
たとえば、
Yesterday, I go—
と言ったところで、
「あ、過去だ」
と気づいて、
went to the office.
と直す。
あるいは、
He work—works in Tokyo.
と修正する。
文法知識は、以前から持っていました。
だから、変わったのは、知識の量ではありません。
すでに持っていた文法知識に、話しながら注意を向けられるようになったのです。
そして、こうした修正を繰り返していくうちに、
Yesterday, I go—went …
と直していたものが、
やがて最初から、
Yesterday, I went …
と出るようになっていきます。
こうして、知っていた文法が、少しずつ「話しながら使える文法」になっていきます。
正しく話せるようになるために、まず間違いながら話す
文法を勉強することには意味があります。
文法を知らなければ、自分の間違いに気づくこともできません。
でも、文法を知っているだけでは、その知識を会話の中で自由に使えるようにはなりません。
必要なのは、上達の順番です。
まず、不完全でも英語を話す。
簡単な英語で、話を前へ進める。
そうすることで、英語をつくる処理そのものが少しずつ楽になる。
すると、自分の英語に注意を向ける余裕が生まれる。
そこで間違いに気づき、修正する。
そして、正しい形も少しずつ自然に出るようになっていく。
つまり、
正しく話せるようになるためには、まず間違いながら話せるようにならなければならない。
これは、「間違いを恐れずに話しましょう」という精神論ではありません。
正確さをコントロールできるだけの余裕を、まず話す力によってつくる。
そのために必要な段階なのです。
シノドス英会話では、英語を話せない原因を、単純に「文法力が足りない」とは考えません。
実際に英語を話してもらいながら、
文法を考えすぎて発話が止まっていないか。
一文を正しくつくろうとして、話を前へ進められなくなっていないか。
英語をつくることが、どこまで楽になっているか。
話しながら、自分の英語に注意を向ける余裕があるか。
そうした「文法知識が、実際の発話の中でどう働いているか」を見ていきます。
もし、
「文法はかなり勉強した。問題も解ける。でも、話すと間違える。正しく話そうとすると言葉が出てこない」
のであれば、必要なのは、もう一度文法書を最初からやり直すことではありません。
シノドス英会話の現状診断セッションでは、あなたが英語を話すときにどこで止まっているのかを分析し、いまのあなたには、流暢さと正確さのどちらを、どう鍛える必要があるのかを具体的に見ていきます。
そこから、一人ひとりに必要なトレーニングを設計します。
