2025.12.07

「単語帳」と「フレーズ集」を捨てろ。なぜ、暗記が得意なエリートほど、会話でフリーズするのか。

高学歴エリートの「沈黙」

奇妙な現象があります。
TOEICで900点を取り、難解な英字新聞を読みこなし、ビジネスの専門用語にも精通しているエリートが、いざネイティブとの雑談や込み入った議論になると、借りてきた猫のように押し黙ってしまう。

一方で、中学英語くらいの知識しかないのに、なぜか言いたいことをスラスラと伝え、商談をまとめてしまう人がいる。

この差は一体、どこから生まれるのでしょうか。
多くの人はこう考えます。
「もっと難しい単語を覚えなきゃ」
「気の利いたビジネスフレーズを暗記しなきゃ」

断言します。
その努力は完全に逆効果です。
あなたが話せないのは、知識が足りないからではありません。
むしろ、「単語やフレーズを暗記して乗り切ろうとする」その思考癖が、あなたの口を重くしているのです。

今回は、日本人の英語学習を阻害する「データベース信仰」の罠と、本当に必要な「運用能力」についてお話しします。

1.「知識の肥満」が、思考の動きを鈍らせる

日本の受験教育の勝者であるあなたには、一つの成功体験があります。
「英単語=対訳で覚えるもの」という成功体験です。

・implement = 実施する
・postpone = 延期する
・consensus = 合意

あなたは、こうした「硬い単語(ビッグワード)」を大量にインプットしてきました。
しかし、会話の瞬発力が求められる場面では、この膨大なデータベースが逆に足かせになります。

言いたいことが浮かんだ瞬間、あなたの脳はデータベース検索をはじめます。
「『実施する』ってなんて言うんだっけ…あ、implementだ。でも使い方は? 文法は?」

この検索プロセスにコンマ数秒でもかかれば、会話のリズムは崩れます。
さらに悪いことに、特定の単語が出てこないと、「その単語以外では表現できない」と思い込み、フリーズしてしまう。

これは、高級な家具(単語)を大量に買い込んだものの、部屋(構文)が狭すぎて身動きが取れなくなっている状態、いわば「知識の肥満」です。

2.「フレーズ暗記」が生む、パッチワークの悲劇

もう一つの罠が、「ビジネス英会話フレーズ集」の丸暗記です。

・I would like to propose that…(提案したいのですが…)
・Let’s agree to disagree.(見解の相違ということで…)

こうした「決まり文句」を覚えれば、確かにその一瞬だけは流暢に聞こえます。
しかし、会話は生き物です。
相手があなたの想定した台本(スクリプト)通りに返してくるとは限りません。

フレーズで覚えている人は、少しでも文脈が変わったり、変化球の質問が来たりすると、とたんに対応できなくなります。
さっきまで流暢だったのに、急に「あ、あー…」と口ごもる。

これは、自分の言葉で織り上げた布地ではなく、他人の布地をツギハギした「パッチワークの英語」だからです。
その不自然な落差(ギャップ)こそが、ビジネスにおける信頼を損なう原因になります。

3.ネイティブの脳内は「中学英語」でできている

では、本当に英語が話せる人の脳内はどうなっているのでしょうか。
じつは、彼らの会話の8割以上は、中学1年生で習うごく少数の「基本動詞」だけで構成されています。

get, take, have, make, do, put, go, come …

彼らは、難しい単語や定型フレーズを思い出しているわけではありません。
このシンプルな基本動詞を、レゴブロックのように自在に組み合わせて、あらゆる複雑な事象を表現しているのです。

・「計画を実施する(implement)」
➡ put the plan into action

・「会議を延期する(postpone)」
➡ put off the meeting

・「良好な関係を築く(establish a good relationship)」
➡ get along with

見ての通り、すべて中学レベルの動詞です。
しかし、これらを使いこなすことの方が、難しい単語を覚えたり、分厚いフレーズ集を暗記するよりも、はるかに高度で、実用的な「知性」なのです。

4.「専門用語」に逃げるな。「解像度」を上げろ

難しい単語や定型句に頼ることは、ある種の「知的怠慢」でもあります。
なぜなら、既存のラベル(単語・フレーズ)に依存することで、「その事象の本質は何か」を自分の頭で考えるプロセスを放棄してしまうからです。

シノドス英会話が提唱するのは、「言い換え(Paraphrasing)」の技術です。

難しい専門用語が出てこなくても、 「それって、要するにどういうことだ?」 と思考の解像度を上げ、手持ちのシンプルな言葉(基本動詞)で再構築する。

この回路さえあれば、今後一生、新しい単語帳やフレーズ集を買わなくても、あなたはあらゆることを英語で表現できます。

5.「家具」を買う前に、「家」を建て直せ

あなたはもう十分に、知識を持っています。
これ以上、新しい家具(単語)や装飾品(フレーズ)を買い込む必要はありません。
いま必要なのは、その家具を配置するための「家(構文と運用能力)」を建て直すことです。

暗記(Memory)から、運用(Operation)へ。
パッチワークから、自家薬籠中の物へ。

もしあなたが、「これだけ勉強しているのに話せない」と嘆いているなら、それは努力が足りないからではありません。
「データベースを増やす」という方向性が間違っているからです。

その「知識の肥満」を解消し、シンプルで強靭な「英語の筋肉」を手に入れたい方は、「現状診断セッション」にお越しください。
あなたの知性は、もっと軽やかに、もっと自由に語れるはずです。

英語を学んできたのに話せない。

問題は知識量ではありません。
あなたの脳が「英語で思考を組み立てる回路」を持っていないだけです。

「文法や単語は知っているのに、言葉が出てこない」
「訳しながら話そうとして、途中で止まってしまう」
それは、頭の中で日本語を英語に変換しているからです。 これは「翻訳回路」であって、「英語の思考回路」ではありません。

実際の会話では、日本語の台本など存在しません。
思考を直接、英語の語順で組み立てる——
この回路がなければ、いくら知識があっても話せないのです。

シノドス英会話は、6ヶ月の個別コーチングで、 「翻訳回路」から「思考回路」へ、あなたの脳を根本から変えます。

・現状診断セッション(60分・10,000円)で、あなたの英語を診断します。