2026.10.30

「オンライン英会話」をつづけても上達しない理由

オンライン英会話のレッスンで、こんなふうに直されたことはないでしょうか。

「この文は、現在完了です。」
「ここ、冠詞が抜けています。」
「ここは、もっと自然な言い方があります。」

あるテーマについて、5文、6文と話す。
そのあとに返ってくるのは、一つひとつの文への指摘です。
文法は正しいか。英語として自然か。
レッスンの時間の大半は、こうした一文の手直しに使われています。

そうして直してもらった英語で、仕事の場で話してみる。
文法の間違いは、前より減っている。
それなのに、相手の反応が薄い。
言いたいことが伝わった、という手ごたえがない。

なぜでしょうか。

理由は、言いたいことは、一つひとつの文ではなく、いくつもの文を組み立てた「話」によって伝わるからです。
一文をどれだけ正しくしても、話がきちんと組み立てられていなければ、言いたいことは伝わりません。

必要なのは、文をつないで、ひとまとまりの話にする力です。

話す力は、ひとつではない

「話す力」というと、ひとつの力のように聞こえます。
しかし、言語学では、これをいくつかの力に分けて考えます。

応用言語学者のマイケル・カナルとメリル・スウェインは、1980年代のはじめに、外国語でコミュニケーションをとる力を、つぎの4つに分けて示しました。

ひとつ目は、単語や文法を正しく使う力。
ふたつ目は、相手や場面に応じて、言葉遣いを選ぶ力。
みっつ目は、いくつもの文をつなげて、ひとまとまりの意味のある話に組み立てる力。
よっつ目は、言葉につまったときに、言い換えなどの工夫で乗り切る力です。

多くの英会話レッスンでは、このうちのひとつ目の力に、ほとんどの時間が使われています。
しかし、言いたいことを話として伝えるために必要なのは、みっつ目の力です。

文をどうつなげ、どう組み立て、その結果として何を伝えるのか。
会話でいちばん大事なのは、ここです。

ところが、話の組み立て方を教えてくれるレッスンは、ほとんどありません。

相手は、一文の正しさを聞いていない

では、聞いている相手は、あなたの英語をどのように聞いているのでしょうか。

一番わかりやすいのは、外国の人が日本語を話すのを聞くときのことを、思い出してみることです。
日本語がおかしくても、いちいち文法をチェックしたりはしませんよね。
何を言いたいのかを、理解しようとするはずです。

英語でも同じです。
多少、時制がずれていても、前置詞を間違えていても、相手は文脈と話の流れから、言いたいことを補って理解しようとしてくれます。

相手が知りたいのは、文法が正しいかどうかではありません。
この人が何を言おうとしているのか、です。

そうであれば、話す側も、力の入れどころを変えたほうがいい。
一文の正しさではなく、話全体で何を伝えるのかを考えることに、力を使うべきなのです。

勝負する場所を間違えない

身も蓋もないことを言います。

かりに、文法も発音も完璧な、ネイティブ並みの英語を話せるようになったとします。
しかし、それで手に入るのは、「ネイティブのように話せる」ということだけです。

それで、仕事の評価が上がるわけではありません。

世界で仕事をしている人たちは、それぞれの国のアクセントを残したまま英語を話しています。
文法も、必ずしも完璧ではありません。
それでも議論を動かし、評価されています。

フィンランドのアアルト大学の研究チームは、国際的に事業を展開する企業で働く人たちを対象に、仕事で使う英語について調べました。
アンケートには、31の母語をもつ約1,000人が答えています。

そこで分かったのは、文法の正しさは、それほど重視されていないということでした。
大切だと考えられていたのは、明確に、簡潔に伝えること。
そして、自分の仕事の分野で、何を、誰に、どう伝えるべきかを知っていることでした。

差がつくのは、英語の正しさではありません。
話している中身、つまり提案や意見の価値です。

それなのに、多くの人は、文法や表現を磨くことに時間をかけています。

勝負する場所を間違えているのです。

話には型がある

提案や意見は、ひとまとまりの話に組み立ててはじめて、相手に伝わります。

そして、この組み立てる力は、練習すれば身につきます。
話には型があるからです。

まず、自分の経験を話すときの型です。

たとえば、出張から戻ったところで、同僚から、

How was your trip to Singapore?

と聞かれたとします。

I had a meeting with our biggest client.(やったこと)
Their sales team showed me their new factory.(詳細)
It was really useful, because now I understand what they need.(感想)

やったこと、詳細、感想。
この順に文を並べるだけで、ひとつの話になります。

もし、最初の一文だけで終わっていたら、どうでしょうか。
文法は正しくても、相手には「客先と会議をした」ということしか伝わりません。
詳細と感想がつづいてはじめて、どんな出張だったのかが伝わるわけです。

意見を話すときには、別の型があります。

たとえば、会議で、

Should we keep remote work?

と聞かれたとします。

I think we should keep it.(結論)
Most of us can focus better at home.(理由)
Since we started working from home, my team has finished every project on time.(具体例)
So I don’t see any reason to stop it.(結論に戻る)

結論、理由、具体例、そしてもう一度結論。
理由と具体例がつづくから、「リモートワークをつづけるべきだ」という意見に説得力が出てきます。

どの文も、簡単な英語です。
それでも、この順番どおりに並べれば、筋の通った話になります。

簡単な文をつないで、自分の経験や考えを、ひとつの話として伝える。
英会話でいちばん大切なのは、これです。

シノドス英会話では、実際に英語で話してもらいながら、

一文一文ではなく、話全体として何が伝わっているのか。
どこで話がとぎれ、何が足りていないのか。
どんな順番で組み立てれば、言いたいことが伝わるのか。

そうしたことを、ひとつずつ見ていきます。

英会話のレッスンをつづけている。
文法の間違いも減ってきた。

それでも、

「英語で話しても、言いたいことが伝わった手ごたえがない」
「一文ずつは言えるのに、話がつづかない」

と感じているのであれば、一度、実際にあなたが英語を話しているところを見せてください。

シノドス英会話の現状診断セッションでは、あなたの話がどこで伝わらなくなっているのかを分析します。

そして、自分の経験や考えをひとつの話として伝えるために、何をどう練習すればいいのかを具体的に提案します。