東日本大震災――いま、もう一度確認したいこと/目を向けたいこと

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2011年3月11日から2年が経過した現在でも、東日本大震災の被害は現在進行形にあり、被災地の多くでは普段の復旧・復興のための努力が続けられています。このような状況の中、私たちは何を考え、何に目を向ける必要があるのでしょうか。

 

今回、私が書かせていただく内容は、新しい事実や問題を切り口鮮やかに示すものではありません。むしろ、かねてより繰り返し言われ続けてきた事柄を改めて確認する、そういった行為が主なものになります。

 

しかし、震災発生から2年が経過した今、基本的とも思える事柄を再度確認することには意味があり、また今後を考える上でもやはり必要なのではないでしょうか。しばしの間、お付き合いをいただければ幸いです。

 

 

3.11の被害の概要、そして被災した地域はどのような場所だったのか?

 

東日本大震災と続く福島第一原子力発電所事故がどのような被害をもたらしてしまったのでしょうか。ここではまず、とりわけ大きな被害と影響を受けてしまった宮城県・岩手県・福島県の状況に絞り、その概要を確認したいと思います(*1)。

 

(*1)数字はそれぞれ県・並び復興庁から以下の日付で発表されたものに基づきます。宮城県-2013年4月10日、岩手県-2013年3月31日、福島県-2013年4月22日、復興庁-2013年4月12日。また死者数には関連死を含んでいます。また無論のこと、東日本大震災は宮城・岩手・福島の3県に限らず、青森県や茨城県にも深い爪痕を残し、また全国的・世界的に様々な社会的・経済的・政治的影響を与えた出来事だったことを強調しておきます。

 

表1:東北三県における人的被害・建物被害概要

表1:東北三県における人的被害・建物被害概要

 

 

宮城・岩手・福島の東北三県だけでも、18000人以上の方が亡くなられ、数多くの行方不明者と避難者を出した甚大かつ深刻な被害が生じた災害でした。これらの人的被害また家屋の倒壊は、地震、そして多くは津波による被害でした(*2)。

 

内閣府が発行する平成23年度防災白書によれば、92.4%の方が津波によって命を落としています(内閣府 2011 http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/pdf/H23_zenbun.pdf)。津波によって破壊された家、道路、街並み。そういった光景が東日本の沿岸部数百kmに渡って続いている(写真1)、想像を超えた広域災害が起きたのでした。

 

(*2)また津波によってさらわれ、未だ行方の分からない方が数多くいるという点も特徴です(例えば1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では6434人もの方が亡くなられましたが、現在も行方不明の方は3名となっています)。未だこれだけの多くの方の行方が分かっていないという事は強調しておきたいと思います。

 

 

写真1:震災後約1か月後の福島県南相馬市沿岸部の光景(2011年4月16日撮影)

写真1:震災後約1か月後の福島県南相馬市沿岸部の光景(2011年4月16日撮影)

 

 

また例えば交通・ライフライン・農林水産等に関わる各県の被害総額は現在までに、宮城県ではおよそ9兆1828億円(平成25年3月11日現在 http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/202741.pdf)と計算されています(*3)。更には、このような被害額という形で表現されにくい被害、被災者の方の抱えるストレス・苦悩、就学・就職への影響など課題山積の状況が今なお続いています。

 

(*3)2011年6月24日付で内閣府が発表した資料では、全国での被害総額はおよそ16兆9千億円と推計されています。

 

では、このような大きな被害を受けてしまった地域はどのような場所だったのでしょうか。3.11の災害は、どのような地域を襲った災害だったのでしょうか。非常にあらっぽいものになってしまいますが、いくつかの基本的な数字を押さえておきたいと思います。次表2をご覧ください(*4)。

 

(*4)この表2は、中村征樹(編)『ポスト3.11の科学と政治』(ナカニシヤ書店)掲載の拙稿から抜粋したものになります。尚、このデータは2012年2月24日までに宮城県・岩手県・福島県・総務省・復興庁から公表されたデータに基づいています。

 

 

表2:東北三表2:東北三県37自治体データ一覧県37自治体データ一覧(クリックで拡大)

表2:東北三表2:東北三県37自治体データ一覧県37自治体データ一覧(クリックで拡大)

表2:東北三表2:東北三県37自治体データ一覧県37自治体データ一覧(クリックで拡大)

表2:東北三表2:東北三県37自治体データ一覧県37自治体データ一覧(クリックで拡大)

 

 

この表から見える傾向がいくつかあります。その一つは、今回の災害が襲った場所が主として第一次産業の地域であったこと、そして同時に相対的に貧困な地域であったことです。またこれらの地域では、高齢者が人口に占める割合が高い傾向にありました。この事実を見るとき、今回の災害では亡くなられた方のおよそ65%が高齢者の方だったことを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか(内閣府 2011)。

 

今回の災害は、とりわけ東北地方の沿岸地域を襲ったものであり、このような高齢化や社会構造に伴う課題という背景を持った地域を襲ったものだったということを改めて認識する必要があるのではないかと思います。そしてこれらの問題は、都市と地方の格差の問題と合わせて、日本社会全体が抱える根源的な課題につながっています。

 

また、こういった数字を見るだけでは見えにくい/見えてこないような影響がさまざまにあったことにも注意が必要だと思います。一つだけ例を挙げたいと思います。朝日新聞で連載されている「プロメテウスの罠」の2012年5月25日付の記事(http://digital.asahi.com/articles/TKY201205240436.html?id1=2&id2=cabcafcf)では、南相馬市の病院での検死を担当した医師の話として、足が不自由だった方が、津波は免れたものの、原子力発電所事故の影響で隔離されたために避難もできずに餓えで亡くなられた事が綴られています。

 

地震・津波・原子力発電所事故の被害の中で起きた、このような悲劇の一つ一つは、死者○○人といった表現の中では見えてきません。しかしながら、3.11の全体像と課題群を考える上で、その一つ一つの出来事に出来る限り目を向けていく、拾い上げていく、そういった営みがやはり重要になるのではないでしょうか。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

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