2022.07.23
福島第一原発の処理水・海洋放出の安全性が認められる
2022年7月22日、原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所からのALPS処理水(以下処理水)の海洋放出計画を認可しました。処理水は、原発事故で発生した汚染水について、トリチウム(三重水素)以外の放射性物質を規制基準未満に浄化処理した水のことです。
福島県、大熊町、双葉町の了解を得られれば、東京電力は今後、処理水放出設備の工事を本格的に始める予定です。政府の方針では、来年春頃に放出を開始することになっています。
原子力規制委員会が認可した計画では、浄化処理した処理水に海水を加えて「100倍以上に希釈」し、「トリチウム濃度が1リットル当たり1500ベクレル未満」にします。日本のトリチウムの規制基準は「1リットル当たり6万ベクレル未満」ですので、1500ベクレル/Lは、国の排出規制基準の40分の1ということになります。またこの基準は、世界保健機関(WHO)の飲料水の規準(1万ベクレル/リットル)の1/7ということでもあります。
トリチウム以外の放射性物質については、規制基準を下回るまで確実に浄化処理が行われます。一般に放射性物質については、存在そのものではなく、人体や環境に影響を与えない水準(=規制基準)以下であるということが重要とされています。
また計画によれば、規制基準を超える処理水が放出されないように、複数のタンクを連結して中の処理水を十分に攪拌し、万一異常が発生した際に放出を止められるよう、電動と空気作動の緊急遮断弁を備えます。
処理水が海洋放出された場合、1年間に受ける放射線の影響は0.0000018~0.0000207ミリシーベルトと推計されています。1年間に自然界から受ける放射線の影響は約2.1ミリシーベルトですので、その10万分の1程度の値です。これは誤差(自然に起きるブレ幅)よりもはるかに小さく、当然人体や環境に何らかの影響が確認されることはありません。
更田豊志委員長は臨時会合後に開かれた記者会見で次のように説明しました。「廃炉作業を進める上で、処理水の海洋放出は避けては通れない道だと考えています。基準が守られる限りにおいて、人の健康や環境、地域の産品に影響及ぼすことはありえません」
参考リンク
「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の実施計画 (ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)の変更認可」(原子力規制委員会)
https://www.nsr.go.jp/data/000398639.pdf
「ALPS処理水の海洋放出の影響」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/pdf/alps_02.pdf#page=3
原子力規制委員会委員長定例会見(2022年07月22日)
https://www.youtube.com/watch?v=3dCy2jjtNEg