確定的影響としきい値

放射線は人の健康に影響を及ぼすことがあります。放射線を浴びる量(放射線被ばく量)によって、その影響は「確定的影響」と「確率的影響」に分けられます。ここでは、比較的多くの放射線を被ばくして起こりうる確定的影響について解説します。 

 

確定的影響とは、全身や体の一部に一度にたくさんの放射線被曝をしたために、体の組織が直接ダメージを受けることです。ある量以上の放射線を浴びると現れること(逆にある量以下では現れないこと)、また、被曝線量が多くなるほど症状が大きく出るなどの特徴があります。

 

確定的影響では、皮膚のやけどや紅斑、脱毛、出血や白血球の減少(造血機能の低下)などの組織反応が翌日~数ヶ月の間に起こるほか、数年後に白内障を起こすこともあります。

 

確定的影響は、一度にたくさん被曝すれば起こりますが、ある一定の量以下であれば起こることはありません。被曝した人たちのうちの1%以上にこれらの症状が起こった場合、その量を「しきい値」(発症に必要な最小限の放射線量)と言います。 

 

たとえば、確定的影響のうちでも比較的低い線量で起こりうる「男性の一時的不妊」のしきい値は150~200mSv以上です。この線量を生殖腺が吸収すると、1%以上の男性が、一時的に不妊状態になり得ます。ただし、生殖腺の細胞は代謝が活発であるため、数ヶ月~2年ほど(線量による)で回復します。

 

一方で、3500~6000mSvの放射線を生殖腺に急に吸収すると、1%以上の男性が永久不妊になります。同じ3000~5000mSv以上の放射線でも、これを全身に一度に浴びると、造血機能や消化管に障害を負い、もし救命医療措置をしなければ、浴びた人の半数以上が死んでしまうと言われています。放射線を浴びるときに、全身か体の一部かによって、その影響は異なります。

 

いずれにせよ、福島第一原発事故による放射線で、一般住民で確定的影響を起こすような被曝をした人はいません。初期の作業員が、作業中に汚染水の水たまりに踏み込み、やけどを負ったことがありましたが、それ以外の確定的影響を起こした作業従事者もいません。(2018.5.25更新)

 

 

 

 

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